球技大会を観ながら
体育館の中にバレーボールコートが2面用意されていて、僕らのクラスは入口側での試合。
僕とショウタは入口付近の壁に寄りかかって座った。
試合が始まると思っていた以上に歓声が上がり盛り上がっている。
ショウタはたまに声を出して応援していたが、僕はただ座りながら相手クラスに可愛い子がいないかチェックしていた。
まあ可愛い子を見つけたところで何も意味はないけど。
ショウタ「やっぱあれだな〜、女子がスポーツしているところも良いよな〜」
冷「普通でしょ。」
ショウタ「いやいやいや〜、普段は見せない一面、最高じゃないか〜。特に俺らのクラスにはハルや宮本ちゃんみたいな可愛い子が何人かいるし〜」
冷「そうか。」
ショウタ「それで冷はまだ彼女作らないのか〜?」
冷「作らない。」
ショウタ「折角イケメンなのに勿体無いよな〜」
冷「そういうショウタは作らないの?」
ショウタ「まあ欲しいけど、俺は冷みたくカッコ良くないしモテないからね〜」
冷「カッコ良くなくても彼女いる人はいるでしょ。」
ショウタ「いや〜そうなんだけどさ〜。でも好きな人が出来ないっていうか出来てもすぐ諦めちゃうんだよ〜」
冷「そうなのか。でもその割に宮本さんにはしつこく話しかけるよね。あんなに無視されてるのに。」
ショウタ「あれは良いんだよ。そういうノリっていうかさ。僕は別に宮本ちゃんのこと異性としては好きじゃないし。」
冷「そうなんだ。じゃあ今は好きな人はいないの?」
ショウタ「残念ながらいないね。だから本当は冷に彼女作れなんて言える立場じゃないだ〜」
冷「そっか。」
じゃあ言うなよ。
でもまあショウタはよく喋るし明るいからそのうちショウタのことを好きな人が出て来てもおかしくないか。
ショウタ「ハル頑張れ〜!」
冷「ちゃんと応援するんだな。」
ショウタ「もちろん!俺は冷と違ってクールキャラじゃないし。」
冷「クールキャラねぇ。」
ショウタ「優子ナイスサーブ!」
冷「ってかショウタってクラスの人全員と話したことあるの?」
ショウタ「うん、たぶんね〜。もしかして冷はないの?」
冷「あるわけ。未だに半分以上名前分からないし。」
ショウタ「え?マジで!?それはやばいでしょ〜」
冷「やばくない。別にそれで困ったことは何もないし。」
ショウタ「いやそれでもさ〜。じゃあ逆に冷は誰と話したことあるの?」
冷「男子はショウタと慶太と高松と学級委員の斉藤君ぐらいで、女子は星乃さんと宮本さんと上野さんぐらいかな。」
ショウタ「え?それだけ!?少なっ!」
冷「十分でしょ。」
ショウタ「まあでも友達は量じゃないからね〜」
冷「そういうこと。」
ショウタ「それじゃあ冷も女子に声かければ?頑張れーって。」
冷「え?何で?」
じゃあの意味が分からないんだけど。
どういう話の展開よ。
ショウタ「例えばハルとかに言うと絶対喜ぶよ〜」
冷「やらない。」
ショウタ「一回ぐらいやれよ〜、絶対喜ぶって。」
冷「それでもやらない。」
自ら応援するとか相手を惚れさせてしまうに決まってるだろうが。
ショウタ「仕方ないな〜」
ん?
ショウタ「ゆっきー頑張れ〜!って冷が言ってたよ〜!」
はあああああ!?
冷「おいショウタ!何勝手に言ってんの!?」
ショウタ「良いじゃん良いじゃん。」
何でショウタはいつもこう勝手な行動するかなぁ。
これで上野さんに勘違いされたらどうするんだよ。
しかも何で上野さん?星乃さんじゃねえのかよ。
頼むから聞こえていないでくれ。
誤解とかほんと面…
あ…
上野さんと目が合ってしまった…
やっぱり聞こえてたのか。
しかもなぜか慌てて目をそらしてしまった僕。
これで上野さんに僕が照れて目をそらしたって勘違いされたら厄介。
上野さん僕に惚れてるだろうし。
ショウタ「あれ?ゆっきー照れてる?こりゃあもしかして冷のこと好きなんじゃない?な?冷?」
冷「何でニヤニヤしてるんだよ。」
ショウタ「いやだってね〜」
冷「何だよ。」
ショウタ「いややっぱり何でもないわ〜」
まあ気になるけど聞くだけ無駄な気がする。
どうせショウタの考えることだし。
それにしてもあんな風に上野さんと目が合うと恋の始まりという感じだな、漫画の世界では。
ストーリー的にはこの後からお互い意識し始めてそしてどちらが告白してゴール。
そんな誰もが憧れそうな展開を僕がすれば必ずバットエンドになる。
まあ僕はそんな漫画的ストーリーに乗る気は一切ないけど。
女子のバレーボールが終わり、いよいよ次がサッカー。
対策通りやれば大丈夫だろう。
あ、高校デビュー高松にあのネタのこと言わないと。
ちなみに女子のバレーボールは負けて1回戦敗退。
トーナメント方式らしく負けたら終わりらしい。
良いなぁ。