イケメン無口野郎ですけど何か?
夕食を食べ終わった僕らは部屋でくつろいでいた。
ハル「いや〜ご飯美味しかったね〜!」
鳴「豪華だったわね。」
ハル「あーいうの食べると旅行に来たって感じがするよね〜」
鳴「そうね。あーいった感じのご飯は滅多に食べられないわけだし。」
ハル「冷君もそう感じた?」
僕は今テレビを見ている。
だから今の星乃さんの質問にも聞こえないふりをする。
別にテレビに夢中になっているわけではないが、これも女の子と関わりを持たないためにやっている。
無駄な会話はしない。
自分からは話しかけない。
この1ヶ月でやって来たことを旅行先であろうと徹底する。
ハル「ちょっと冷君〜、聞こえてる〜?」
鳴「ダメね。テレビに夢中になってるわ。」
ハル「そんなにテレビ面白いの〜?」
鳴「全然聞こえてないわね。ハル、今なら悪口言い放題よ。」
宮本さん、全部聞こえてるんだわ。
どうぞ、悪口遠慮なく言ってくれ。
その方が君達との距離を離せられる気がする。
ハル「え〜、悪口〜?」
鳴「何でもいいのよ。例えばイケメン無口野郎とか。」
いや、それ悪口じゃないだろ。
イケメンって言ってるし。
ハル「ん〜、でも冷君の悪いところってなんかある〜?」
え、無いのかよ。
僕ってそんなに良い人に見えるのか?
でも星乃さん僕のこと好きだから、僕が何してもプラスの方向に捉えるのかもしれない。
鳴「私はまだまだあるわ。」
ハル「マジで〜!?鳴、すごいね〜!」
いや何褒めてんだよ。
人の悪口の数が多ければすごいとか無いだろ。
ハル「それだけ鳴は冷君のこと見てるんだね〜」
鳴「まあ、私の斜め前の席だし、嫌でも目に入るわ。」
嫌でもって…
ってか宮本さんも僕のこと好きだからきっといつも好きで見てるだろ。
あ、それか僕のこともう好きじゃないとか?
それだとありがたいんだけど。
ハル「ってか折角3人で旅行来たんだから何かしようよ〜」
鳴「そうね。」
ハル「冷君いつまでテレビ見てるの〜!」
さぁ。
君達二人が寝るまでとか?
僕は折角の旅行か何か知らないけど別に特別なことをする気はない。
本当なら僕一人の部屋で鍵閉めてゆっくりしてるのに。
ハル「冷君ってば〜!」
鳴「テレビ消したらどうかしら。」
ハル「そうだね〜!えい!」
テレビを消された。
リコモンは僕が持っていたが、テレビについてる電源ボタンを押された。
だが、僕はまだ諦めない。
このリモコンでまたテレビをつける。
ハル「ちょっと冷君!テレビ終わりだって〜」
冷「なぜですか?」
ハル「だって、折角旅行に来たのに冷君ずっとテレビ見てるんだもん〜、3人で何かしようよ〜」
冷「何かって何するんですか?」
ハル「それは…」
鳴「枕投げよっ!」
痛っ!
宮本さんの方を向いた瞬間に僕の顔面に枕が飛んで来た。
ハル「え〜枕投げ〜!?ってか冷君大丈夫?」
冷「大丈夫です…」
まさかいきなり枕を投げてくるとは…
どうする。
ここはやり返すべきか?
でもやり返したところで僕にメリットは無いしむしろもっと仲良くなってしまう危険性がある。
棄権するか。
そのためにはいつものように理由が必要。
僕は言い訳のレパートリーが少ない。
さっきも温泉に入る前に言い訳してが、見事に見抜かれた。
どうする。
枕投げをしない理由。
お!
珍しく素晴らしい言い訳が頭に浮かんだ。
完全な嘘の言い訳だが、僕の話し方一つでこの二人を信じ込ませることが出来る。
鳴「さあ、もう一発行くわよ。」
冷「すみません。僕、枕投げ出来ないんです。」
ハル「え?出来ない?」
鳴「あなたそれどういう意味?」
冷「実は中学3年の時の修学旅行で友達と枕投げをして遊んでいたんですが、僕が投げた枕が運悪く友達の頭に当たって、それでその友達は首を変に捻ってしまったんです。」
ハル「そうなんだ…」
冷「幸いにも軽傷で済んだんですが、それ以来僕は枕投げ嫌いになったというか…もうしたくなくなったというか…」
ハル「そんなことがあったんだ〜」
鳴「分かったわ。なら枕投げはやめましょう。怪我するかもしれないわけだし。」
冷「すみません。」
ハル「全然大丈夫だよ〜、あたしたち冷君にそんなことあったなんて知らなかったし。」
鳴「そうね。私も急に枕投げてごめんなさい。」
冷「全然大丈夫ですよ。」
見事に大成功。
やったねー。
ありもしない過去を二人は疑いもせずに信じてくれた。
まあ、同中は渚しかいないわけだしバレることはないだろう。
ハル「なんか変な空気になっちゃったね。」
それは僕のせい。
そりゃあ、あんなこと言ったら変な空気になるだろう。
でも別に僕はこの空気が嫌いではない。
日々女の子と話すことを避けている僕からしたらこの話づらい雰囲気はちょうど良い。
モテない男子はここで何か面白いことを言ったり、自分が何とかしようという気持ちになるのだろう。
無駄な努力だ。
この状況でモテない男子に出来る唯一のことはその場から潔く立ち去ることだ。
それで全て解決する。
モテない男子はそもそも自分が変な空気を出していることに気づいていない。
だから何をしても空気を変えることは出来ない。
でも僕はイケメンでモテる。
だから僕が話せば一瞬で空気は変わる。
けど僕はこの空気が好都合だから何もしない。
鳴「そうね。枕投げ以外で他に出来ることはないかしら。」
ハル「う〜ん?」
沈黙が続く。
何もしないなら僕はテレビを見たいんだが…
鳴「あ、分かったわ。」
ハル「鳴、見つかった〜?」
鳴「恋話よ。」
ハル「え?」
は?
恋話?
鳴「3人で恋話よ。」
いやいや、それは成立しないだろ。
だって二人とも僕のことが好きなわけだし。
「恋話=僕に告白」になってしまう。
大体恋話って普通異性同士で一緒にするもんじゃないだろ。
ハル「鳴、恋話はちょっと…」
鳴「分かってるわ。だから私たちは隣の部屋に行ってするから冷君はここで自由にしてて良いわ。」
冷「そうですか。」
まさかの展開!
あの宮本さんが僕に自由時間を与えてくれるとは!
これは嬉しい。
せっかく3人で何かしよう的なことを言ってたけど、これで良いんだな?
本当に良いんだよね?
自由きたああああ!!!
鳴「ハル行くわよ。」
ハル「あ、うん。」
そうして二人は隣の部屋に行った。
あーもう最高。
やっぱり一人でいると落ち着く。
何も警戒しなくて良いし、あーもうほんと最高だ。
これでテレビを見る理由もなくなったし、今のうちに寝る用意をしておこう。
そして星乃さんが帰ってきた瞬間に僕は寝る。
まあもちろん眠くなったらすぐ寝るけど。
それから2時間僕は部屋でくつろいだ。
星乃さんは中々帰って来ず、僕は眠くなったので寝た。
ーーー次の日ーーー
ん?
あれもう朝か…?
いやまだ暗いな…
ん?
あれ?
「…鳴…だから〜…」
星乃さんの声…?
すごい近くから聞こえ…
え…
隣に星乃さん!?!?!?!?!?