宿泊研修がやっと終わった
今日は宿泊研修最終日。
とは言ってもただバスに乗って帰るだけだ。
僕はいつも通り携帯の目覚ましで起きる。
斉藤君は深く眠りについているのか僕の携帯の目覚ましが鳴っても起きない。
もしかして僕が起こさないといけないやつか?
昨日は僕の目覚ましで起きた斉藤君。
このまま起きないのならこいつの耳元でわざと目覚ましを鳴らしてみるか。
コンコン(ドアの音)
ショウタ「お〜い!冷!開けてくれ〜」
ショウタの声だ。
朝から一体何の用だ?
僕まだ寝起きなんだけど。
仕方なくドアを開けてやった。
ショウタ「おはよう冷!」
冷「おはよう。」
ショウタ「いや〜、イケメンは寝起きでもやっぱりイケメンだね〜!」
冷「どうも。」
朝から何なんだ?
随分ご機嫌なようだけど。
それとイケメンはどんな時でもイケメンだ。
ショウタ「あれ?斉藤君はまだ寝てるの?」
冷「うん。」
ショウタ「じゃあ俺が叩き起こすわ〜」
冷「え…」
ショウタ「おい!学級委員!いつまで寝てんだコラァ!起きろやぼけえ!!!」
ショウタのおかげで斉藤君は起きた。
僕が起こす手間が省けたからショウタを部屋に入れた意味は一応あったな。
冷「で、ショウタは何しに来たの?」
ショウタ「おいおい、冷はこれからどうするんだ?」
冷「どうするって何を?」
ショウタ「ハルとのこれからについてに決まってるだろ〜」
冷「いや別にこれからも何もないでしょ。」
ショウタ「いやいや〜。二人で抱き合ったんだから何もないわけないでしょ〜」
冷「いや抱き合ってない。抱きつかれただけだ。」
ショウタ「同じだろ〜そんなの〜」
いや同じじゃない。
同じにされてたまるか。
何度も言うが僕は立ってただけだ。
抱き返してすらいない。
何度も言わせるな。
ショウタ「でも、これからちょっと気まずいよな〜」
冷「僕は全然。」
星乃さんは気まずいかもしれないが、僕は全く。
気まずいという感情になることはつまり相手を気にかけているということになる。
僕の場合星乃さんに恋愛感情はないし興味もない。可愛いとは思うが。あと胸も大きい。揉みたい。
ショウタ「しかも君たち同じ班だし学校でも隣の席だろ?」
冷「まあそうだね。」
ショウタ「こりゃあ付き合うしかねえな!」
何でだよ。
仮に付き合ってもどうせ僕が浮気して星乃さんかその浮気相手に殺されるだけだ。
冷「何回も言うけど僕に付き合う気はないって。」
ショウタ「ほんと冷は勿体ないよな〜。モテない男子の気持ちも考えてくれよ〜」
それを考えるだけで無駄だし考えたところで何も得られない。
ショウタ「早く用意して朝食食べに行こうぜ〜!」
冷「あ、うん。」
そして僕はショウタと斉藤君と慶太と大ホールに向かった。
大ホールに着くと班の人はもう既に朝食を食べ始めていた。
もちろん星乃さんも。
ハル「二人とも、お、おっはー!」
いつも通り元気で明るい星乃さん。
けどちょっと顔が赤い。
まあ冷静に考えると昨日の出来事は恥ずかしいよな。
片思いしてる男の子が目の前で急に倒れて、無事ホテルに戻って来たときに思わず泣きながら抱きついてしまう。
しかもその男の子と同じ班で学校の席も隣。
こりゃあ星乃さんにとっては気まずいだろうなぁ。
まあ僕はそんなことないからいつも通りに振る舞えばいい。
無理に気を使う必要はない。
高松「三上君、もう大丈夫?」
冷「うん。もう平気。」
高松「良かった〜!俺らマジで心配したんだからな〜!」
冷「どうも。」
本当か?高校デビュー高松。
班の女子に「俺めっちゃ心配してた優しいやつ」アピールしてるだけに見えるけど。
ってか男子はみんな僕が抱きつかれたこと知ってるけど女子はどうなんだろう?
宮本さんがショウタみたいにみんなに言うとは思えない。
もちろん星乃さんからも言うわけがない。
だとすると、女子のみんなが知るには男子の誰かから聞いた場合ってことになるな。
まあ高校デビュー高松とかその周りの友達なら女子に言うかもな。
僕は別にそういう噂が広まっても構わない。
僕と星乃さんが付き合ってると勘違いしてくれれば、僕に近づく女子も減るだろう。
朝食を食べ終わった後は部屋に戻り、部屋の片付けと荷物の整理をした。
2泊だけだったのに色々あった気がする。
部屋を後にした僕らはバスに乗り込んだ。
そして僕はショウタより早くバスに乗ることを心がけて乗り、無事窓側の席を確保した。
ショウタ「あれ、冷窓側で良いの?」
冷「うん。」
ショウタ「でも昨日宮本ちゃんが…」
鳴「ちょっとあなた、何そっちの席座ってんのよ。」
冷「景色が見たいからです。」
鳴「は?そんなのいつでも見れるでしょ。」
いつでも見れるって…
ここ南沢だからたぶんいつでも見れないと思うんだけど…
ショウタ「どうする冷?」
何を言われようとも僕はこの席を譲る気はない。
通路側になれば宮本さんや星乃さんと喋ることになり厄介だ。
ここは昨日の出来事を利用するか。
冷「ごめん。僕まだちょっと体調が良くないので。」
ショウタ「あれ?冷?まだ具合悪いの?」
鳴「何あなた嘘ついてるのよ。」
冷「嘘じゃないです。」
嘘だけど。
ショウタ「じゃあ仕方ないな。窓側で寝てろよ。」
ショウタが素直でバカで良かった。
鳴「はぁ?絶対仮病でしょ。そんなに私たちのことが嫌なの?」
出た。宮本さんお得意の「私が嫌のなの?」質問。
もう面倒だから無視しとこ。
鳴「もういいわ。ほんとあなた何なのよ。」
ショウタ「おい、冷。冷って宮本ちゃんにも好かれてるんだな。」
冷「分かんない。」
分かってるけど。
ショウタ「いいよな〜、あんな可愛い子二人に好かれてて。どっちかくれよ〜」
冷「いやあげるとかないだろ。」
ショウタ「まあそうだよな〜」
モテない男子って女の子をモノとして扱ってるのか?
斉藤君も譲ってくれとか言って来たけど。
僕は望み通りバスで音楽を聴きながら外を眺めることが出来た。
何度か宮本さんに声かけられたが全部聞こえないふりでやり過ごした。
そうしながらバスは学校に到着。
このまま家に帰ってゆっくり出来ると思ってたのだが…
鳴「明日は振替休日だからあなたの家に行くわ。」
はい?