だから抱き合ってない
部屋には誰もいなかった。
おそらく斉藤君はまた高校デビュー高松のところにいるのだろう。
自由時間は後10分しか残っていない。
何もすることないから寝る準備して寝ようと思ったが、さっきまで倒れて眠ていたせいかあまり眠くない。
どうしよう。
テレビでも見てみるか。
最近テレビ見てないし、何か面白いバラエティ番組とかやってないかなぁ。
斉藤「お!コールド〜!戻ってたのか〜!」
あ、斉藤君が帰ってきた。
冷「うん。さっき帰ってきた。」
斉藤「もう具合大丈夫なの?」
冷「うん。」
斉藤「そうか!それは良かった!」
冷「ありがとう。」
斉藤「ところで三上君!」
冷「何?」
いい加減、呼び名どっちかで統一しろよ。
斉藤「星乃さんと抱き合ったって本当!?」
え、待って、何でこいつ知ってんだ!?
ってか抱き合ったではなく、抱きつかれただけなんだけど。
冷「まあ。何で知ってるの?」
斉藤「男子のグループLINE見てないの?松風君が言ってたよ。」
冷「見てない。」
そういえば携帯は一日中部屋に放置してた。
まさかまた通知三桁とかじゃないだろうな?
ちょっと今開いてみるか。
LINE通知420件。
いやいや待て待て
また三桁かよ。
しかも個別で「大丈夫?」ってたくさん来てるし。
これまた全部返さないといけないのかよ。
斉藤「それでコールドはもう星乃さんとそういう関係なの?」
冷「いや全然。」
斉藤「本当に?だって抱き合ったんでしょ?」
冷「いや抱き合ってはいない。」
何で抱き合ったってことになってるんだ?
ショウタまさかデタラメ言ってんのか?
ちょっと男子のグループLINE見てみるか。
松風昌太:冷戻って来たよ!
高松幸助:マジで?三上君大丈夫だった?
松風昌太:うん。大丈夫だって。
富樫瑛斗:お〜!
高松幸助:良かった〜!
内藤笑:とりあえず一安心。
斉藤隆弥:良かったな〜!
松風昌太:それとみんなに大スクープ!
高松幸助:え?なになに?
斉藤隆弥:大スクープだと!?
富樫瑛斗:気になる笑
瀬波卓朗:俺も気になるw
松風昌太:なんと!星乃さんと冷がまさかの再会のハグ!!!
高松幸助:ハグ?
斉藤隆弥:嘘!?
富樫瑛斗:マジで!?
瀬波卓朗:まって、ハグって何?w
松風昌太:二人が抱き合ったってこと!!!
瀬波卓朗:マジかよw
高松幸助:それは大スクープだな!
富樫瑛斗:やべえ笑
おいおいおいおいおいおいおい
はああああああああああああああ!?!?
おいショウタ!
抱き合ってはねえよ!!!
星乃さんから抱きついて来ただけで僕はただ立ってただけだわ!
そもそも大スクープって何だよ!
ってかこのLINEの感じからするとみんな僕と星乃さんが付き合ってるって勘違いするだろ。
斉藤「コールドは星乃さんと付き合ってるってこと?」
冷「いや、付き合ってない。」
斉藤「じゃあ何で抱き合ったの?」
冷「いやだから抱き合ったわけじゃなくて、抱きつかれた。」
斉藤「抱きつかれた?」
冷「そう。ホテルに戻ったらロビーにショウタや星乃さんがいて、何かわかんないけど星乃さんが泣きながら僕に抱きついて来たってこと。」
何でわざわざ僕がこいつに詳細伝えないといけないんだよ。
斉藤「なるほど〜。じゃあ星乃さんがコールドに片思いしてるってことなのかな〜?」
冷「どうだろうね。」
何度も言うが、本当は分かっている。
斉藤「コールドいいな〜。実は僕、星乃さんのこと好きなんだよね〜」
冷「そうなんだ。」
やっぱりこいつは星乃さんのことが好きだったか。
つまり学級委員になったのも星乃さん狙い。
こりゃあもしかしたら宮本さんの嫌な予感が当たるかもしれない。
斉藤「実は学級委員になったのも星乃さんと仲良くなれるかな〜なんて思って。」
まさか僕が聞く前にカミングアウトしてくるとは。
普通こういうことはあまり人には言わないだろう。
もしかして僕はもうこいつに信用されてるのか?
だとしたら早すぎだろ。
斉藤「あ、このことは他の人には言わないでね。」
冷「分かった。」
言わないでと言われた以上宮本さんにも言えない。
別に僕は宮本さん側でも斉藤君側でもない。中立を保っている。
どちらかの側に立ってしまうと争いの原因になってしまう可能性があるからだ。
争いは面倒だし僕は誰とも争う気はない。
恋愛でも僕は他の男と「女の子の取合い」みたいなことはしたことがない。
争うも何も僕は何もしなくても自然と女の子は僕に寄ってくる。
今ではそれがとてつもなく厄介ではあるが。
斉藤「コールドは星乃さんのこと好きなの?」
冷「いや別に。」
斉藤「そう!じゃあ僕に星乃さん譲ってくれる?」
冷「譲るも何も僕のじゃないし、そもそも誰を選ぶかは星乃さん次第でしょ。」
斉藤「まあ確かにそうだね〜」
譲ってくれとか正直こいつは意味がわからない。
こいつは星乃さんと上手く行けると思ってるのか?
まず顔からしてないだろ。
仮に星乃さんが内面で選ぶ人だとしてもこいつの内面は気持ち悪い。
かなりの変態。
まあそのうちこいつが告白して振られるだろうな。
その後、斉藤君は消灯時間通りに寝たが、僕は中々寝ることができなかった。
眠くなるまでの間をLINEの返信を頑張った。
一人一人に「大丈夫、ありがとう。」と送る。
この作業の繰り返し。
それと一応男子のグループでも抱き合ったのではなく抱きつかれたと訂正を入れておいた。
そんな作業をして僕はようやく寝ることができた。
そういえば、星乃さんって結構胸あるんだな。
抱きつかれた時に気づいたけど、思っていたより大きい気がする。
あーおっぱい。