まだ席に着いただけ
ドアは開いてる。よし。影を消して極力誰にも気づかれずに入ろう。なんだこの緊張感。ただ教室に入るだけじゃないか。僕が入った瞬間に静まるとかやめてくれよ。よし入ろう!
入った。
余計なことは考えるな、無事に席に座ることだけを考えるんだ。窓側の席だ。大丈夫。焦るな。
着席。
まずは一安心。あとは先生が来るまで外を眺めていよう。景色は学校の外で校庭ではない。よくある「校庭で体育をしている気になる女の子を授業中に見入ってしまって、その子も僕に気づいて、そこから始まる恋」みたいな展開にはならずに済みそうだ。もしくは逆に「女子のみんなが僕が体育をしているときに僕に夢中になってしまう」的な状況も回避できそうだ。席に着いたはいいが、先生来るの遅いな。お、前の席の人がきた。茶髪で背は俺と同じぐらいでいかにもこれから俺と仲良くなりそうな設定だな。ってかこの学校は髪を染めてもいいのか。僕は昔から黒髪で染めたことなんてないし染める気もない。染めなくても十分モテたし。
「チーッス。俺は松風昌太、ショウタって呼んでくれ、よろしく!」
早速話しかけて来たか。でも女子ではないし、初日から連む相手が出来るとこれから先楽かも。ここはごく普通に、
冷「こんにちは、僕は三上冷。よろしく」
ショウタ「じゃあ冷って呼ぶわ!1年間よろしくな!」
こいつ朝からそして初日からテンションが高い。さては高校デビューか?でも仕方ないか、設定的に。僕みたいなクールキャラが存在するとどうしてもそいつの友達候補にあがるのが明るいバカキャラ。少なくとも同じクールで無口キャラは出てこない。無口同士だったら友達になるどころか話が進まないし展開なんてありゃしない。別にこいつも悪そうな奴じゃないし良い友達になれるかも。みんなまずは席が近い人から仲良くなって行くのが現状。
冷「こちらこそよろしく。」
ショウタ「ところで冷はどこの中学から来たの?」
来ました、質問ターイム!高校生活の一週間目は大体お互いのことを知ろうと色んな質問が飛び交う。もちろん僕は春休みに色んな対策を考えた。でも男子からの質問だ。そこまで恐れる必要はない。
冷「久木中。」
ショウタ「久木って、結構遠いところから来てるんだなぁ。ちなみに俺は横咲中でここら電車で30分くらいかなぁ。ここの高校に同中は3人ぐらいしかいないんだよね。」
こいつも僕と似たような感じなのか。
冷「そうか。」
ショウタ)「なぁ冷。さっきから気になってるんだけどお前の斜め後ろの女の子可愛くない?」
いきなり女子の話かぁ。男子だから仕方ないけど、僕はまだ外の景色とお前しか見てないんだよ。でも可愛い女の子だって?振り返りたい!けどなんか怖い。その子と目があってお互い気にかけるみたいなことになったらどうしよう。ここはさりげなく一瞬だけ振り返ろう。
冷「え、どの子?」
ショウタ「ほら、そこにいる大人しそうな子。」
可愛いいい!!!白髪ロングで背は小さく、まるで天使じゃないか!これは僕の妹にも負けない可愛さだ!ってダメだ。僕は恋をしないって決めたんだ。女子とも接しない。僕は女の子が大好きだが一人と付き合ってしまうと必ず浮気をしてしまう。そうなると殺される。ハーレム状態も結局誰かを選ばないといけない。だから僕はずっと眺めていたい。でもやっぱりあの子可愛いなぁ。名前なんだろう。ちょっとデート行きたいなぁ。妹も高校生になったらあんな感じになるのかなぁ。可愛いなぁ。
ショウタ「お前いつまであの子見てるんだ?」
しまった…ついつい見入ってしまった。
冷「いや、何でもない。」
ショウタ「そうか。あの子ほんと可愛いよな。俺頑張ってあの子と仲良くなるわ!」
初日からはりきってんなぁ。でもあいつが仲良くなったら自然と僕も仲良くなって、それで僕とあの子がいい感じになってそのままゴール!?って何考えてるんだ!女子とは関わらない!そう決めたんだ!でもあの子ほんと可愛すぎる。
冷「がんばれー」
ショウタ「おう!お、先生来たぞ。」
冷「あ、ほんとだ、え?」
先生が教室に入って来た。嘘だろ。先生超可愛いんですけどー。大卒一年目か?すごい若いしとにかく可愛い。茶髪ロングで胸もかなりある。これは予想外だ。女子に対する話し方や振る舞い方は何回も頭の中で練習をしてきた。でも先生については全く考えてなかった。こんな可愛い先生が世の中にいるなんて。アニメで「生徒と先生の叶わぬ恋」的な話は何個か見たが、こんな話はありえないと思ってそこまで気にしてなかった。先生との恋愛はありか?先生も仕事上周りには言えないだろうし、スリルある付き合いになって面白そう。これは迷うなぁ。
「みなさん、こんにちは。今日から1年2組の担任を務めます岬結衣です。教科は国語です。教師2年目でまだまだ未熟ですが、精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いします。」