久しぶりのバレーボール
エンカウンターの後はまたつまらない研修が続き、そして夕方になり、僕らは南沢町立体育館に移動するためにバスに乗り込んだ。
ショウタは体調が良くなり、そのおかげで僕は窓側に座ることが出来た。
ショウタ「冷、本当に席窓側でいいのか?」
冷「うん。外を眺めていたいし。」
ショウタ「そうか。」
鳴「ちょっと、何であなたが窓側に座ってるのよ。早く松風君と代わりなさい。」
残念だったな宮本さん。
これで話しかけられても聞こえないふりをしていればいい。
ハル「いいじゃん鳴、どうせ15分ぐらいで着くんだし。」
鳴「明日の帰りは絶対に通路側に座ってもらうわ。だから松風君、何がなんでも窓側を奪いなさい。」
ショウタ「宮本ちゃんが俺に命令!?いや〜嬉しいな〜」
ショウタ何喜んでるのよ。
今まで無視され続けてきたから話しかけられて嬉しいのか?
まあショウタにこの席を譲る気はないけど。
そして15分が経ち、南沢町立体育館に着いた。
「では、これより、班対抗バレーボール大会を行いたいと思います。」
あ、バレーボールなのか。
体育館だからバスケだと思っていた。
バレーボールとか中学の体育の授業以来だな。
得意ではないけど別に苦手でもない。
しかし、僕は活躍する気は全くない。
活躍してかっこいい姿を見せてしまうと確実にまた新たに他の女子を惚れさせてしまう。
ただでさえ、女子の視線を独り占めする僕だ。
わざとミスをするのは班の人に迷惑だから、ここは極力ミスなしで地味なプレーで行こう。
スパイクとかブロックとかは絶対やってはいけない。
とにかく頑張らないスタイルで行く。
「各班しっかりと対戦表を確認して、試合時間に遅れないようにしてください。それでは精一杯楽しみましょう!」
まずは僕の班の人を見つけないと。
どうせみんな高校デビュー高松のところに集まってるんだろうけど。
ハル「冷君!みんなのこと見つけた?」
冷「いやまだです。」
ハル「冷君ってバレーボール得意?」
冷「いや全然。」
ハル「そうなの?なんか得意な感じするけどな〜」
それは僕がイケメンだからそう感じるだけだ。
高松「お!星乃さんと三上君!こっちこっち!」
やっぱり高校デビュー高松のところにみんな集まってたか。
ほんと人集めるの好きだな。
ハル「あたしたち最初どことやるの?」
高松「えーっと、ちょっと待って今対戦表確認する!」
高校デビュー高松からすごいやる気を感じる。
絶対これを女子へのアピールの場にする気だろ。
僕としては是非アピールしてもらって、女子からの視線をそっちに向けたいけど。
まあ、こいつには無理だな。
高松「最初はCコートで6組の1班!しかも5分後に試合だって!」
6組か。
まあ当然知り合いはいない。
高松「早く行こうぜえ!」
どんだけ張り切ってるんだよ。
そんなに女子の前でアピールしたいのか?
それともバレーボール得意とか?
でもこいつバスケ部だよな。
慶太「冷ってバレーボール得意?」
冷「お、慶太。いや全然。中学の体育の授業でやったぐらいだし。」
慶太「僕と同じだね。」
冷「慶太もか。」
慶太「僕サッカー以外全くスポーツ出来ないんだ〜」
冷「そうなのか。」
高校デビュー高松はすごい頑張るだろうけど、僕らはそうではない。
女子はどれぐらいのレベルか分からないけど、あまり期待できない。
こりゃあ僕らの班は終わったな。
「では、これより2組1班対6組1班の試合行います。試合は25ポイントの1セット制です。」
いよいよ第一試合。
やはり僕がいるせいか2組の女子のギャラリーが多い気がする。
高松「よっしゃ行くぞー!」
まあ精々頑張るがいい高校デビュー高松。
試合が始まった。
普通に負けると思っていたが、案外そうでもなかった。
というのも、高校デビュー高松が意外に上手かった。
それと相沢さんも中々上手い。
相沢さんも確かバスケ部だったはず。
バスケ部のやつってバレーも出来るのか?
この二人のおかげで目立たずに終わるかと思っていたのだが…
高松「三上君!今だ!打て!」
え!?
まさかの高校デビュー高松に完璧なトスを上げられた。
ジャンプしてスパイクすれば完璧なプレー。
しかし、そんなことしたら目立ってしまう…
やばい、どうするよ。
バン
高松「三上君ナイス!」
あ…
体が自動的に反応してしまった…
しかも見事なスパイク。
ギャラリーはどよめいている。
すごい視線と歓声。
またやってしまった…
ハル「冷君すごいじゃん!」
冷「どうも…」
ハル「本当はバレーボール得意なんじゃないの〜?」
冷「今のはたまたま出来ただけです。」
ハル「またまた〜」
あそこでスパイクせずにただボールを叩いとけばよかった…
おのれ高校デビュー高松…余計なことしやがって。
何で僕にトスなんてあげたんだよ。
相沢さんで良かっただろ。
そして試合は25対18でまさかの勝利。
おいおい、勝ち進んで決勝に行くとかやめてくれよ。
高松「みんな次も頑張ろうな〜!」
ハル「お〜!」
星乃さんまで気合入っちゃったよ。
ちょっと喉乾いたから水飲んでくるか。
冷「ちょっと水飲んでくるわ。」
高松「了解!」
どうすれば次の試合でスパイクを打たずに済むか考えよう。
今度またトスを上げられたらスパイクせずにただ当てるだけにしよう。
っていうか僕がトスを上げる方に回ればいいのでは?
そしたら目立たない。
ポジションはローテーションではないから好きな場所にいられる。
次の試合はネットの前あたりに立ってみるか。
「あんたやるじゃない。」
ん?
あ、渚。