クジ引きと高校デビュー高松
「先生!宿泊研修って何ですか?」
クラスの誰かが聞いた。
確かに僕も何をするかあまりよく分からない。
岬「主な活動は、如月高校の学業システムの説明、高校生活の規則や注意事項の説明、校歌の練習、それとレクや班対抗スポーツ大会です。日時は来週の月曜日から水曜日。場所は南沢です。」
南沢って、ここからバスから3時間ぐらいじゃん。
何でわざわざそんな遠いところまで行かないといけないんだよ。
全部学校でやればいいだろ。
岬「それで今日は部屋と班を決めいきたいと思います。」
部屋は絶対男子同士だろう。
ならば問題はない。
だが班は?
男女混合か?
岬「部屋は二人部屋で、もちろん男女別々です。」
「えーーーー、女子と一緒じゃないんですか〜?」
いや当たり前だろ。
何言ってんだよ、モテない高校デビューの君。
少しは女子の気持ちを考えたことあるのか?
僕みたいにモテるイケメンと一緒の部屋なら女子は喜ぶだろう。
けど君みたいな頑張ってモテようとしてる大してかっこよくもない人と一緒の部屋が女子にとってどれだけ気持ち悪いことか。
何をしでかすか分からないし、絶対欲望を抑えきれずに襲うやつがいる。
岬「高松君、男女二人きりには出来ませんよ〜、みんな高校生ですし。」
こいつ高松って言うのか。
高校デビュー高松。
覚えやすいからこの名前で頭に登録しておこう。
高松「先生冗談ですよ〜、僕もそれぐらいのこと分かってますって〜」
こういうタイプのやつは嫌いだ。
一見ショウタと似てるが、こいつの方が痛々しい。
ショウタはただ明るいだけで、おそらくみんなの前で笑いを取りに行ったり目立とうとしたりはしないはず。
だが、この高校デビュー高松は完全に笑いを取りに行っている。
クラスのみんなは一応笑ってはいるが、みんな愛想笑いだろう。
こいつと同じ部屋はごめんだ。
岬「部屋と班は全てクジで決めていきます。では、廊下側の人から順に引いていってください。最初は部屋決めです。」
2泊あるんだ。
頼むからうるさくない人と同じにしてくれ。
希望としては慶太だな。大人しいしサッカーの話も出来る。
まあ、別にショウタでも良いけど。
岬「では窓側の人どうぞ。」
僕らの番だ。
まあ所詮クジ。運だ。
結果が悪くても誰を責めることも出来ない。
ショウタ「冷、何番?」
冷「4番。」
ショウタ「マジか〜、俺5番だよ〜、惜しかったな〜。」
冷「そうだね。」
とりあえずショウタとは違う部屋だ。
4番を持ってるやつは誰だ?
みんな騒がしいなぁ。
誰が持ってるか分からねえ。
岬「では、廊下側の人から順に番号を言ってください。」
さあ4番は誰だ?
岬「じゃあ次、斉藤君。」
斉藤「4番です。」
お!出た!
斉藤君?
確か学級委員のメガネの子か。
まあ大人しそうな感じだし大丈夫か。
とりあえず、高校デビュー高松じゃなくてよかった。
岬「じゃあ次、畑尾君。」
慶太「5番です。」
ショウタ「おい冷、俺あいつと一緒だわ!」
ショウタと慶太が一緒の部屋か。
なんか面白い二人だ。
ショウタはとにかくよく話すし、慶太は落ち着いていておそらく聞き上手なはずだ。
どういう感じになるか見てみたい。
これはあいつらの部屋に行く価値は少しあるな。
女子も僕らと同じようにクジを引き、奇跡的に星乃さんと宮本さんが同じ部屋になった。
岬「次は班を決めていきまーす。一班男女3人ずつの計6人。全部で6班あります。」
これも部屋と同様うるさくない人と一緒で頼む。
希望として男子は慶太と誰か一人。別にショウタでもいい。
女子は、誰とも同じになりたくないけどそれは無理だから、誰か僕に関心のない人。
と言ってもそんな女子はいない。みんな僕に関心があるはず。
彼氏持ちの女の子なら大丈夫と思ったけど、僕みたいなイケメンと一緒にいると絶対彼氏のことなんか忘れて僕に夢中になってしまう。
星乃さんと宮本さんは一緒になりたくない。
ただ単にこれ以上仲良くなっては危険だから。
あとブスとは一緒になりたくない。
ブスからの好意とか吐き気がする。
一番良いのは3人とも僕をイケメンとは思っているが好意がなくて可愛い子。
そんな子このクラスにいるのかは知らないけど。
さっきと同じようにクジを引いて僕は1班だった。
ショウタ「冷、何班!?」
冷「1班。」
ショウタ「また一緒じゃないのか〜、何でだよ〜。」
冷「ショウタ何班?」
ショウタ「俺4班だよ〜、ハルと宮本ちゃんは何班?」
ハル「あたし1班!」
あ、星乃さんと一緒だ。
仕方ないか。
ショウタ「お!冷と一緒じゃん!」
ハル「冷君本当!?」
冷「うん。」
ハル「やったーーー!冷君よろしくね!」
すごい喜んでる。
絶対僕のこと好きだなこれ。
ハル「鳴は何班?」
鳴「4班よ。」
ショウタ「宮本ちゃん4班!?俺と一緒じゃん!」
鳴「最悪だわ。」
まさかのショウタと宮本さんが一緒の班。
これは笑える。
ショウタは嬉しそうだけど、宮本さんの表情よ。目が死んでる。
最悪って言われてるし。
これは面白いことになりそう。
クラス内はみんな誰と一緒の班になったか確認し合って盛り上がっている。
その中でも高校デビュー高松の声はよく響いている。
高松「俺1班〜!誰か1班の人いな〜い!?」
え?
1班?
高松「1班引いた人いないの〜?まさかの俺一人だけとか〜!?マジで〜!?」
あ、最悪だ。