梓は脇役であり仲裁役
私の名前は川崎梓。
旧姓「鶴見梓」。
宮ちゃんとは中学の同級生。
厳密に言うと、中1から中2までの2年間だけ。
中3の時、突然あの子が転校していった。
まあ2ヶ月後ぐらいに親の都合で私も市外に転校していったのだけれど、まさか同じ高校に入学するとは…全く想像してもいなかった。
中学の時の私はよく人と人の間にいた。いわゆる誰とでもそれなりに仲良くて嫌われてない人。
双方からそれぞれ相手の悪口を聞かされて反応に困るあれ。
クラスにそういう役目を担ってしまってる人がいると思うけど私がそれ。
けどそれは友情とかの話で、恋愛になると私は蚊帳の外だった。
宮ちゃんとは違う。
入学した頃、同じクラスだったけど、たぶん関わることはないなと思っていた。
でも席が近いこともあって徐々に話すようになり、気付いたら誰よりも宮ちゃんと一緒にいた。
モテまくってた宮ちゃんだったけど、決して天狗にはならず、むしろ純粋に学校生活を楽しんでる感じがして、余計可愛く見えた。
女子の私からしても可愛いんだから、そりゃあ男子にモテるに決まってる。
週3回は告白されてたし、宮ちゃんと仲良いせいか、普段話さない男子から宮ちゃんのことで相談を受けたりもした。
あの子は少しテキトーな部分があって、その時の気分で告白をOKしたり、男子を勘違いさせるようなことを言う。
たぶん自覚なしでそういうことやってるから悪気はないのだと思うけど、段々心配になって嫌な予感がしてきてた。
まあその嫌な予感が的中したわけで、クラス内の恋愛が宮ちゃんを中心に、宮ちゃんのせいで崩壊していった。
ー放課後ー
梓「宮ちゃん今日一緒に帰ろ〜!」
鳴「ごめん鶴ちゃん!今日は桜木君とカラオケ行く予定なの!」
梓「え〜また男子と遊ぶの〜」
鳴「こないだ誘われたの!」
梓「はいはい。えっ…ってか桜木君?彼氏の大森君じゃないの?」
鳴「あー大森君はこないだ振ったよ〜」
梓「また振ったの!?」
鳴「だって全然楽しくないんだも〜ん。」
梓「じゃあ何で告白OKしたの…」
鳴「何となく?大森君ってクラスの人気者だから楽しいと思ったんだけど〜」
梓「あんたね…」
鳴「ん〜?」
梓「これで2年になって何人目?いい加減そういう遊びみたいなのやめなよ。」
鳴「ん〜私そういう恋愛とかよく分かんない!」
梓「え…」
鳴「あ、桜木君もう校門のところにいるって!じゃあ行くね!鶴ちゃんまたね!」
梓「はいはい…またね〜」
恋愛分かんない言ってるけど、あの子が一番恋愛してるんだけどなぁ…
ー数時間後ー
ん?電話?
あ、志穂か。
梓「もしもし、志穂どうしたの〜?」
志穂「ねえ梓大変だよ!!!」
梓「どうしたの急に?」
志穂「めっちゃ修羅場だよ今!」
梓「修羅場?何が?」
志穂「京香だよ!」
梓「京香?」
志穂「うん!!!」
梓「京香が修羅場ってどういうこと?」
志穂「京香の彼氏が浮気してたの!!」
梓「え?浮気?」
志穂「そうそう!今カラオケに来てるんだけどさ!京香の彼氏が女の子といるの!!」
梓「あーそれは大変だね〜」
志穂「でしょ!?だから助けに来て!」
梓「え?何で私?」
志穂「だってそういうの上手いでしょ!」
梓「いやいや、別に好きで皆の仲裁役やってるわけじゃないから笑」
志穂「それでも来てほしい!」
梓「え〜…ってか京香の彼氏って誰だっけ?」
志穂「桜木だよ!」
梓「あ〜桜木か〜…」
梓「・・・」
梓「えっ!?桜木!?!?」
志穂「うん桜木。知ってるでしょ?」
梓「えっ待って待って…」
志穂「ん?」
梓「カラオケにいるんだっけ!?」
志穂「そうそう!」
あーもー絶対宮ちゃんじゃん…
何してるのほんと…
志穂「駅前のカラオケだからすぐ来れるでしょ!?」
梓「分かった、行くからとりあえず喧嘩とかはしないでね。」
志穂「了解!ありがとう梓!」
ほんとあの子ったら…