最初の2時間
岬「みなさん、おはようございます。今日は昨日にも言った通り1時間目に自己紹介、2時間目に委員決めをやって行きたいと思います。」
さあまずは自己紹介か。昨日考えた対策通りにいけば大丈夫だろう。
岬「では早速自己紹介を一人ずつやって行きたいと思います。自己紹介には名前、出身中学校、入ろうと思っている部活動、今年の目標を入れてください。その他にも言いたいことがあれば遠慮なくどうぞ。」
部活動?今年の目標?
面倒くさいなぁ。
何で言わないといけないんだよ。
部活は今のところサッカー部って考えてるけど、目標だと?
「モテないようにすること」って言いたいが、それだと変に注目を浴びてしまいしそうだ。
どうするよ。
成績を上げるとか?
別に頭が悪いわけではないし。
部活頑張るとか?
キャプテンやエースには絶対なりたくないし。
ほんとどうするよ。
岬「自己紹介は10分後に行います。」
ショウタ「なあ、冷。今年の目標何にするの?」
冷「今考えてる。」
ショウタ「俺はやっぱり彼女を作るとかかな〜!」
だろうね。
実にこいつらしい。
冷「そう。」
ショウタ「冷はいいよなー。イケメンだからそんな目標立てなくてもすぐ彼女出来そうだし。」
知ってるわ。
だから困ってるんだよ。
冷「だから彼女作る気は無いって。」
ショウタ「何でよ〜。青春しないのか〜?」
冷「興味ない。」
何回言えばわかるんだ、こいつ。
「青春=女遊び」になってしまう僕なんだよ。
そして死へと繋がる。
ショウタ「ところで、冷は部活どうするんだ?」
冷「たぶんサッカー部。」
ショウタ「おお!サッカー部か〜!そんな感じするよ〜!イケメンエース的な?」
やめろ。正直そうなってしまいそうで怖いんだよ。
冷「僕そんなにサッカー上手くないからエースは無理だね。」
ショウタ「またまた〜。ってか聞いた話によるとここのサッカー部弱小らしいよ?」
知ってる。
ここ数年の大会成績を見れば分かる。
毎年1回戦敗退。まさに弱小。
でも僕としては好都合。
弱小ということはどうせ練習日も少ないだろし、そこまで本気で部活に取り組む必要がない。
まさに理想。
そもそも部活に入る理由は前にも言った通り、ハーレム主人公にありがちな設定の「変な部活に入る」もしくは「帰宅部」を避けるためだ。
だからサッカー部が弱小でも問題はない。
冷「弱小でも別にいいよ。」
ショウタ「いいのか〜い!!!」
だから朝からうるさい。
ってか目標どうするよ。
適当に遅刻しないとかでいっか。
岬「では10分経ったので、廊下側の席から順に自己紹介お願いしま〜す。」
廊下側ってことは僕はほとんど最後か。
「相沢優子です。東如月中からやってきました。部活はバスケ部に入ろうと思ってます。今年の目標はバスケ部のレギュラーになることです。よろしくお願いします!」
自己紹介が始まった。
みんなちゃんとやってるよ。
友達たくさん作りたい感じが伝わってくる。きっと高校デビューのやつも多い。
別にみんなそれぞれ自由だし。僕には関係ない。
ってか、おいおい宮本さんよ。
何スマホいじってるんだよ。
他人の自己紹介すら興味ないってか?ほんとこの人冷たすぎだろ。
僕でさえ自己紹介ぐらいはちゃんと聞くよ。
そして自己紹介は続いていき…
お、次は隣の星乃さんだ。
「星乃ハルです。気軽にハルって呼んでください。出身中学校は時和中で、部活はテニス部に入ろうと思ってます。今年の目標は毎日楽しく過ごすことです!よろしくお願いします!」
元気だな。
本当に中学の頃はぼっちだったのか?
まさか僕との距離を近づけるための嘘?
だとしたらやっぱ女って怖えよ。
まあ、本当にぼっちだったんなら入学前にかなり努力したんだな。
そして次は今までずっとスマホをいじってたマイエンジェルの宮本さんか。
「宮本鳴です。栞咲中出身です。部活は特に入ろうと思ってません。今年の目標は毎日楽しく過ごすことです。」
いや最後、星乃さんの目標をそのままパクってるじゃねえか。
しかも全然楽しそうじゃねえし。
絶対楽しく過ごす気ないだろ。
先生いいのかよこれ。
岬「じゃあ次の人どうぞ。」
いいのかよ…
この先生案外適当だなおい。
「みなさん、こんにちは!松風昌太です!ショウタって呼んでください!横咲中出身です!部活はまだ決めてませんが、絶対部活には入ろうと思ってます!今年の目標はクラスのみんなと仲良くなることです!それと彼女も募集してます!女子のみなさん、いつでも声掛けてください!よろしくお願いします!」
全然面白くないのになんかウケてる。
ってかこいつの後とか超やりづらいわ。
みんなからの視線。
特に女子からの視線が熱い。
え…
あの宮本さんがめっちゃこっち見てるし。さっきまでスマホいじってたじゃねえかよ。
ツイッターかLINEかゲームか?何やってたかは知らねえけど、ちゃんと最後まで続けろよ。
何、僕の時だけ休んでんだよ。
星乃さんは体ごとこっち向けてんじゃねえよ。
首だけでいいんだよ。ってか別に見なくていいよこっち。
「えっと…三上冷です。久木中出身です。部活はサッカー部に入ろうと考えてます。目標は遅刻しないことです。よろしくお願いします。」
ただの拍手のみ。
でもかすかに聞こえる女子からのヒソヒソ話。
どうせ「かっこいいね」とか「あの人イケメンだね」なんだろうけど。
宮本さん、僕の自己紹介が終わった瞬間にスマホいじりだすって…
すげえ徹底してるなおい。
まあ、厄介だった自己紹介はこれで終わった。
チャイムが鳴って5分休み。
次は委員決め。
そういえば委員って学級委員だけだよな?
まさか他にもくだらない委員会があるのか?
とりあえず学級委員だけにはなりたくない。
前の席のこいつはどう思ってるんだ?
っていないし!
おいおい、これじゃ昨日考えた対策が出来ねえじゃねえかよ。
トイレか?
折角こっちから話しかけてやろうと思ってるのに何でいないんだよ!
おいおい、早く帰ってこいよ。
2時間目始まってしまうだろうが。
まさか大便か?
家でしてこいや。
朝一で大便すると身体に良いってどこかで聞いたことあるぞ。本当かどうかは知らんけど。
ほんと遅い。
ほら、先生来ちゃったじゃねえか。
ダメだこりゃ。
言うタイミング逃した。
折角立てた対策があいつのせいで水に流れるなんて、(トイレだけに)。
ショウタ「ギリギリセーフ!」
アウトだわ。
冷「どこ行ってたの?」
ショウタ「トイレ!」
やっぱり。
冷「大便?」
ショウタ「いや、髪型セットしなおしてたら時間かかったわ〜」
はぁ?
何、髪なんかセットしちゃってんの?
モテるためか?
女子からの視線をゲットするためか?
もしかしてモテない男子ってみんなこういう無駄な努力をしてるのか?
髪型がセットされてても所詮顔なんだよ。顔。
ってかもう僕に来る女子からの視線、どうにかしてこいつに向けたい。
こいつが望んでて僕が望んでないものが、何で僕に来てこいつには来ないんだよ。
これが世の中の仕組みってやつか。
岬「ではまず学級委員を男女一人ずつ決めていきたいと思います。立候補の方は挙手をお願いします。」
「はい!」
え?
星乃さん?
すげえな。学級委員なんてやりたいのか。
ってかますます「本当にこの子はぼっちだったのか」疑惑が出て来るんだが…
岬「お!女子は星乃さん。男子は誰か立候補いませんか?」
誰か立候補してやれよ。
可愛い星乃さんと一緒に学級委員だぞ?
モテない男子ならこういうシチュエーション望んでるんじゃないのか?
どうなんだ、さっきまで髪型セットしてた君は?
ショウタ「ねえ冷。俺、立候補しよっかな〜?」
ナイス判断だ。
そしてここで僕がこいつの背中を押してやると。
冷「すれば?ショウタなら向いてそうだし。」
初めてこいつの名前を呼んだ。
案外普通だな。
ショウタ「じゃあ、しよっかな〜。ハルと一緒だ…し…」
「はい!立候補します!」
あ、
岬「お!斉藤君!」
ショウタが手を挙げる前に斉藤君が手を挙げた。
どうすんだ?
折角ショウタの背中を押してやったのに。
冷「どうするの?」
ショウタ「いや斉藤君に譲るよ。彼のほうが責任感ありそうだし。」
メガネかけてるからそう見えるだけだ。
実際は星乃さん目当ての立候補で隙あれば付き合おうなんて思ってる変態かもしれない。
結局、昨日立てた対策が役に立つことはなかった。
こういう時もある。
対策案を実行しなかったってことは僕にとっての平和的結末だったってことになる。
岬「3時間目からは通常授業となります。それと放課後には部活動見学があります。」
そして3時間目と4時間目は何事もなく終わり、昼休みに入ったのだが…
「一緒にお昼食べるわよ。」
は?