夜襲に踊る第二闘争 -Ⅰ
――――――――第二闘争の幕内で、詭謀の渦が廻りだす。
Time series “???”
――――上記の内容がその詳細となる。従事していた長期任務の労いもできず幕無しに次へ、というのはこちらとしても本意ではないのだが、既にある通り事は急を要する。
これも君に対する信頼の裏返しだということにどうか理解を示してほしい。
そうそう、この埋め合わせ、と言ってはなんだが任務完遂の暁には慰労の意味も込めてしばらくの休暇を与えることをここで約束しておこう。
それでは。期待しているよ、■■■。健闘を祈る――――。
まるで、0と1からなる意味不明な数列を眺めているかのように無感情な瞳で女――――文面では■■■、と呼ばれていたか―――は淡く発光する画面に羅列された文字を追う。
本意ではない、信頼の裏返し、慰労――――総じて、白々しい。
彼女と「上」との連絡は必ずこうした文面上で行われるが、未だかつてここまで鼻につく筆致だった伝達が果たしてあっただろうか。
直談判の形式でなかったことは幸いだ。こんな鼻に付く内容を面と向かって言い放たれた日には厭悪の表情を抑えられる自信がない。
普段は普段で簡潔かつ直接的すぎるきらいがあり、あれはあれで不満がないでもなかったが、下手な巧言などない方がこちらとしても割り切れたのだ。
今回に限ってやたらと嫌味ったらしい理由はアレか、当初の期待と要した時間を裏切り、先の任務内容、というより対象から碌な成果が得られなかったことに対する当て擦りということか。存外に卑小なようで結構なことだ。
「――――――――――――、」
ため息でわだかまっていた鬱憤を吐き出し、女は画面を閉じた。
嘆いていても仕方がない。上への不満など今更だ。
唐突な任務の切り上げと移行、率直に言って驚いたが内容が内容だけに致し方ない。
いつも通りに心を殺し、冷たい炎を内で滾らす鬼となって、機械のように任務を果たそう。それこそ私の真実だ。
未練はない。あってはならない。
諦観にも似た決意、あるいは別の意を固め、鬼は――――■■■は、新月の闇夜へ溶けていった。
時間がだいぶ開いてしまいました。待ってくれていた方には申し訳なかったです。
今回から第二章もとい第二闘争、開始となります。
内容的に本当は第0話という位置づけにしたかったのですがローマ数字にゼロを表す文字はないことを今更知って”Ⅰ”というナンバリングにした次第です。浅学でした……。
本筋である兄妹のお話は次からとなりますが、楽しんでいただければ幸いです。
誤字脱字、違和感のある表現やもちろん感想等々、なにかあればご指摘もらえると助かります。