毛利右馬頭元就
珠光よ!
大祝鶴姫の話になったけど、知ってる人どれくらいいるのかしらね?
まあ、ググってというのはいつもの事よ
ただ、今回の旅行、ググるとあれって思うかもしれないから説明するわね
この時、大内家は瀬戸内に勢力を伸ばそうとしていたわ
だから、瀬戸内を勢力圏にしていた所とぶつかるのは無理もないことよね?
その瀬戸内を支配していたのが有名な村上水軍
水軍っていうのは端的言えば海賊なのだけど、ちょっと語弊を生じそうな説明よね
どちらかというと海の用心棒とか運び屋というのがいいかしらね
まあ、用心棒もとい傭兵みたいなものだから略奪することもあったわ
敵対する勢力の船とかね
この村上水軍が属しているのが伊予に勢力を持っていた河野家よ
有名な人は特にでてこないから、まあその程度なのかもしれないけれど……
話がそれたわね、で今回問題の大祝家は瀬戸内にある大三島の大山祇神社の大宮司
まあ、大宮司と言いながら大三島の水軍衆の頭目も兼ねていたという方がいいのかもしれないわね
だから正史では大内家が瀬戸内を侵攻してきたときに大内家と戦うことになるわ
まあ、この世界では私が『瀬戸内は諦めて尼子を攻めよう』って言ったからお父さんもこの前、河野家に使者を出して瀬戸内の通行に関しての取り決めをしてたわ
え?どういう取り決めなのか?
今回はいつものおまけが長くなるけどいい?
いい? わかったわ。
瀬戸内の水軍衆にとっては実は大内家と敵対するのはあまり得策ではないの
何故か、それは堺と博多の関係が重要ね
この二つの巨大な貿易都市間の交通は陸路よりも海路の方が早いし多くの物資を運べるわ
で、問題になるのが関門海峡よ
この当時大内家は関門海峡の両方の土地を支配しているわ
そこを封鎖されるようなことがあったら博多商人と堺商人の護衛及び水先案内人を務めていた村上水軍にとっては大きな痛手になるの
最悪、瀬戸内航路が使えないとなると日本海まわりで若狭の国から畿内へ流通するだろうし
まあ、敵対する理由がなくなればお互いの落としどころを探るのはあまり難しくないわ
だって、お父さんには『土地は一切要求したらだめ』って言ったから
むしろ『島一つあげで、有利な条件引き出したら?』って言ったら
周防大島を河野家(村上水軍)に渡したのよ!
周防大島の水軍衆はその本拠地を移したわ、本貫地がなくなったから安芸の国に3万石用意したらしいけど……どこから領地を、え? 愛人の所領?!
よくOK出したわね……あー、そのまま愛人の直属にしたのね。
その上、取り決めも意味がわからないんだけど……(内容的な意味ね)
1.大内家に対して、村上水軍は大内家からの要請があった場合、援軍として参戦する(報酬有)
2.関門海峡の通行の際、赤間と下関での交易については制限を設けない
3.上記の代わりに大内家の船団が瀬戸内を通行する際は無償で護衛となる
(私が大三島に行きたいって言った後だけど)
4.大三島に大内家と河野家の御用商人のための街の建設を始める
なんかこんな感じになったらしいわ
ちなみに商船に対してはなにも取り決めがないから、別に村上水軍の収入源を奪ったことにならないのよね
うん、実質村上水軍が大内家の味方になったということよ
そういうことで、私が大三島に行くことに関してお父さんは反対もしなかったし、大山祇神社の巫女を私の侍女にっていう話が出て来たわけ
こういう私もよくわかっていないから、何言ってんのこいつっていう人は
『大内家と大祝家が戦う理由がなくなった』っていう認識でOKよ!
うわ、すごく長くなったけど……
今からが本題よ!
==============================
<吉田郡山城>
「はじめまして、じゅこうともうします。うまのとうさまはじめまして。」
というわけで、私は今毛利元就と対面しているの
「遠路はるばるお越し頂き、恐悦至極です。珠光姫、北の方様」
「うむ、夫からの申し出、快諾してくれたようじゃ、感謝いたす」
「いえ、大宰大弐様の申し出とあらば引き受けるのが道理ですので」
「そう畏まるでない、妾達は物見遊山で訪れただけじゃ」
そうそう、天下の名将に敬られるなんてむずがゆいだけよ!
「では、お言葉に甘えて。そちらの姫が珠光姫ですな、話は隆元よりきいている」
「ふつう、かくすものじゃないの?」
「いや、どうせ姫も分かっておるだろう?」
「まあそうなのだけど」
「まあよい、既に儂と話をしている時点で隠すつもりもなさそうだ」
「かくすりてんがないもの」
「珠光、妾はちょっと外すぞ」
「え! どうしてははうえ!」
「妾がいては邪魔じゃろ。 故に少輔太郎殿と少し散策をしてくるのじゃ」
「あ……うん」
「姫、なに取って喰うなんてせんぞ儂は」
いや、毛利元就そういうことじゃないの!
って母上もういなくなってる!
==============================
<城下>
「うむ、ここの茶菓子は美味じゃ」
「そうでしょう! 貞子様!」
ここには妾と少輔太郎と奴の弟達がついてきておる
「あ、兄上、先ほどの姫は……」
えっとこやつが徳寿丸じゃな
「む? 珠光殿のことか?」
「ええ、父上とまともに話していました、あの年の姫が……」
「なんじゃ聞いておらぬのか?」
「徳寿丸! 親父が言っておったではないか! 大内の姫が神通力を持ってると!」
そしてこやつが少輔次郎か、うむ少しばかり気が早い
「少輔次郎! それは!」
「ははは、二人とも気にするな、貞子様はそのようなことを気にはしない! それに書を送ることに関しては大内の御屋形様も了承の上だ」
「「え?」」
この三兄弟、均衡がとれておるな、うむ実にいい
大内の味方ならな
「そのあたりにしておくのじゃ、後に右馬頭殿から話があるじゃろ」
==============================
<吉田郡山城>
「我らは水軍衆を持っていない、何故此度の行脚に我らを?」
「もとなりどの、りゆうはかんたんです、ちちうえはあきのさはいをもうりにとかんがえているからです」
「……しかし、沿海部は小早川が……まさか」
「とうしゅがいなければようしをとるのがせんごくのならい、さてどこからようしをとるのか?」
「……御屋形様は安芸を手放すのか? いや、手放さざるを得ないとすれば……尼子? 大森か」
「そうです、さくねん、あまごにうばわれたおおもりぎんざんです」
「しかし、珠光様、確かに大森銀山を奪還するためには兵は分散させるわけにはいかないが、恒久的に安芸の差配となると」
「きゅうしゅう」
「……なるほど、博多か」
「そうです」
「ふむ……」
「ちちうえはすべてのりょうこくのへいをどういんするといっています。 しかし、そのまえに……」
「わかっておる、銀山城だな?」
「ええ」
「尼子が介入してくるのか?」
「おそらく、そうなるかと」
「分かった、重々注意しておこう」
(しかし、珠光姫がここまでの者とは……戦略を考え直さねば)