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全てはメモ帳から始まった

「あれ、着替える時に忘れたんだと思ってたんだけど……」


 探しているのは趣味で書いている小説の思いついたアイデアやネタ、他色々を書き込んでいるメモ帳。昨日家に帰ってしばらくしてメモ帳がないことに気がつき、バイト前までは確かにあったから、忘れたとすればここしか思いつかない。

 バイト先の喫茶店で使っているロッカー周辺を探しても見つからない。


「ここじゃないってことは帰り道かな」


 あのメモ帳は誰かに見られたくはない。僕の妄想が詰まったもので、誰かに見られようものなら恥ずかしさで死ねるかもしれない程だ。


 しかし、もし誰かに拾われて中を読まれるのであれば、赤の他人出会って欲しい。

 知り合いに読まれていたらと考えるだけで恐ろしい。





「ありがとうございました」


 会計を済まし、店を出て行く女性を見送り、一息つく。

 昼頃で忙しかった流れが落ち着き、溜まった洗い物を消化していく。

 

「そういえば、ユウキ君。さっき渡そうと思っていたんだけど、忙しかったから。はい、このメモ帳ってユウキ君のだよね」


 そう言ってポケットから見覚えのあるメモ帳を取り出したのは、同じ大学の一つ先輩の雪さん。同じ喫茶店でバイトしている同僚でもある。


「あ、ありがとうございます。中は…見ました?」

「ううん、見てないよ。僕がそんなことするように見える?」


 あ……、終わった。

 一番見られたくない人に見られてしまった。人を弄るのが好きで、何かあるたびに僕を弄ってくる人だ。

 雪さんは自分の事を「僕」なんて言ったりはしない。


「片付け終わったらユウキ君も上がりだよね? よかったら僕の家に寄って行かない?」


 人をからかう時の雪さんには、抗ってはいけない。されるがままというのが一番被害小さくできる。抗えば抗うほど被害が大きくなっていくのは何度も経験している。

 

 それを知っている僕が断るわけがなく、雪さんの家に寄ることになった。



 バイト終わり、雪さんと並んで歩く。

 雪さんの身長は平均程度らしいのだが、僕はその雪さんよりも少し低い。

 こうして並んで歩くと身長差がはっきり出てしまい、悲しくなる。

 思えば小学校の時から身長順に並ぶと前の方だった。

 高校時代牛乳を飲み続けても効果はなく、ちびのまま。


 女の人は自分よりも背が高い人がいいらしいし、はぁ……。


 隣を歩いている雪さんに気づかれないように見る。

 髪は染めておらず、綺麗な黒髪を肩辺りでバッサリと切っている。

 目、鼻、口は絶妙なバランスではっきりいって可愛い。

 スタイルでは胸以外は周りの女性が羨む程。胸は僕の知り合いの女性の中でも慎ましいけど、そこがまたいいんだと思う。

 性格も基本的に人を弄るのが好きなどSだけど、困ってる時は助けてくれるし頼れるいい先輩だ。


「ユウキ君、女の子同士の恋愛ってどう思う?」

「ゲホッゲホッ、いきなりどうしたんですか、雪さん」


 僕のメモ帳には小説のネタの他にも一人称が「僕」のキャラの良さについてだったり、女の子同士の恋愛、百合について書かれている。

 つまりはそういうこと。

 

 流石に他の人に言いふらしたりはしないだろうけれど、このネタで一週間くらいはからかわれるだろう。

 それに密かに思いを寄せてる雪さんに見られたのは本当に最悪だ。


 考えてみて欲しい、気になっている女の人に自分の妄想内容がバレた時のことを。


「別にいいんじゃないですか?」

「好きか嫌いで言うなら?」

「……好きです」


 どうせ雪さんにはバレているんだ、もう、隠さなくてもいいや。


「そうなんだ、うんわかった。ふふっ」


「今から自分の家に帰ってもいいですか?」


 僕の問に対して帰ってくる言葉はわかりきってはいるものの、言わずにはいられなかった。


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