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たくされるもの 英雄と黒姫のロンド  作者: 永蓬 かずま
一章:託される英雄の意思
9/21

異変への対応

村の外から慌てて走ってきた人影は、だんだんこちらのほうへと近づいてきており、途中でこちらの存在に気づいたのか、こちらのほうへと駆け寄ってくる。

駆け寄ってきた人は男性で自分よりたぶん年上だろうか、きっとこの村に住む男性で、同じ村に住むタクルを見つけて駆け寄ってきたのだろう。

タクルも知り合いなのか駆け寄ってきた男性のほうへ行き、何事かと事情を聞き始める。


「そんなに慌てていったいどうしたんですか、ジースさん?」


「ああ、タクル大変なんだ聞いてくれ!」


そういうとジースという男性は事情を早口になりながらも説明し始める、説明してる最中に身振り手振りで大げさに表現しており、彼が相当慌てているのがうかがえる。

彼が語りだした内容はこうだ。


ジースが早朝に森のほうへ狩りへ出かけた、そしていつもどおりに狩りを続けていると、大き目の動物の影を見かけたので、彼はイノシシかなにかかと思い気配を殺して近寄った。

そしてジースが目にしたのは、彼が想像していたイノシシなんかではなくウルフルという魔物だった。

ジースは狩りのために武装しているとはいえ冒険者ではないので、ウルフルみたいなさほど強くない魔物でも、一人で相手をするのは危険なのだ。

そもそもジースが狩りをしていたのは、村からそんなに離れていないところであり、普通ならそのあたりに魔物が現れるなんて事はないそうだ。

それにウルフルは群れで行動することが知られる魔物のようで、確認したのは一匹だけだが、まだどこかに潜んでいる可能性もある。

このままウルフルの群れが村のほうまでやってくる可能性も否定できず、慌てて村へと帰ってきたというわけだ。


「ねえ、そのウルフルってもしかすると」


ナピィが言うとおりもしかすると昨日自分とナピィが出くわしたやつかもしれない、そうでない可能性もあるが、その場合はウルフルが複数森の中をうろついているということだ。


「そんな近場のところに魔物が!?」


「ああ、このままほっておくことはできないし・・・・とりあえず村長のところに行って相談してこようと思うんだ」


「あの・・僕も一緒に行きます」


「ああ、自分も詳しい話を聞きたい」

そういって自分も同行することにした、自分が逃がしたウルフルなら、逃がしたぶんくらいは自分でなんとかしないといけない。


「お前たちもか?」


「あ、ジースさん。リンさんはこう見えても冒険者さんなんですよ!」


「なんだって!? それは心強い、ぜひ一緒に来てくれ!」


そういってジースは自分の肩をたたいて歓迎してくる、うーん少し不安になってきたな。

冒険者として期待されすぎてる気がする。

そうしてタクルとジースの二人に連れられ、この村の村長の家へと向かう。



タクルとジースと一緒に村長に事情を説明しに向かった。

村長の家につくと、ジースは家の中へとずんずん入っていく、タクルと自分の二人はそれに続いてついていく。

ジースは村長の私室の扉をドンドンとたたいてノックすると、返事を待たずに中へと入っていく。

しかたがないので自分とタクルの二人も続いて部屋の中へと入る。

「村長、大変なんだ!」


「なんじゃ騒々しい、ジースに・・タクルまで・・・・おや?」

そういって椅子に腰掛けて大量の紙を机にひろげている初老の男性が迎えてくる、この男性が村長だろう。

紙を机に広げているのはこの村での村長としての仕事だろうか、その紙から目を離し自分のほうをじろりと見てきた。

それはきっと自分がこの村の人間ではないからだろう。


「そんなのんきに構えてる場合じゃないんですってば、近くの森に魔物が現れたんですよ!」


「ッム!? ジース、今おぬしなんといった? わしの聞き間違いだとよいのだが」


「だ・か・ら、魔物が出えたんですってば!」


そういってジースは村長に事情を位置から話していった、自分とタクルはすでにその話を聞いていたので、大人しく話し終わるまでまっている。

ナピィは退屈なのかその辺をうろうろと飛び回っていた、何かイタズラとかしなければいいが。

そうして待っていると、人とおり話が終わったようだ。


「フム・・・・ジース、おぬし本当に魔物をみたのか? 見間違いではなかろうか」


「何を馬鹿なこと言っているんですか! はっきりこの目でみましたよ、間違いない」


「とはいってものお、そんな村に近い場所で魔物が出たなんて事は過去に一度も聞いたことがない」

「ジース、おぬしの証言だけでは正直判断しかねるのだ」


「んなこといったてよぉー、じゃあどうしろって言うんだ」


「そうじゃの・・悪いがジースとタクルの二人には、もう一度その場所へと向かって調査をしてきてもらえないか」

「それで魔物が近くをうろついてる確証が得られたら、わしもこの村の村長としてこの件に対してしっかりと対応しよう」


「ぬぐぅ・・・・」


「タクルもそれでよいな?」


「は、はい。かまいません」


最初はなぜ村長は危険かもしれないのに、この件に対してすぐに対応しないのかと疑問に思ったが、よく考えてみれば、村長の判断がこの村の長として当然だとなんとく理解した。

考えてもみてほしい、もし仮にジースの見間違いだとしよう。

その場合は無駄に村に人々に不安与えるだけだろう、その上数日は様子見で外出を控える羽目になり生活にすくなからず支障もでる。

だがもし、ジースのことが本当なのにすぐに対応しなければ、村の人が危険な目にあうかもしれない。

村長はこの二つを加味してその結果、妥協案としてこんな決断をしたのだ。

「あのー、それには自分も同行してもいいでしょうか?」

当然これには自分も同行するつもりだ、自分が戦えるかは微妙だが、いないよりはましだろう。

それに自分は回復魔法を使えた、もし誰かが怪我をした時は役に立つだろう。


「おぬしがか? フム・・・・」


「村長、俺からもぜひお願いする。彼は冒険者だそうで、一緒に来てくれるなら心強い」


「なんと、そこの彼がか・・・・よかろう」


ジースも自分の同行に賛成してくれた、タクルもウンウンとうなずいている。

彼らの後押しもあり、自分も調査に同行することになった。

そんな時、頬に違和感を感じるので横を流しみるとナピィがつんつんとつついていた。


「魔法を使うのはいいけど、精霊魔法だってのはばれないように気をつけたほうがいいよ」


ナピィがそんなアドバイスをくれた、たしかに精霊魔法は普通人間は使えないそうだし、面倒なことにならないように少し気にかけよう。

ただ、もし誰かが傷ついたときは迷わず使うだろうけど。

ん?そういえばナピィはなぜ自分が魔法を使うつもりだと思ったんだ、もしかして妖精のナピィは自分の思考を読めるのだろうか?

もしそうだとすればナピィに取り付かれているようで少し怖い、まあ実際のところは、自分が魔法を使えるぐらいしか現時点でとりえがないからだろうけど。



話が大体まとまり、一度各自準備をしてから、今朝タクルが鍛錬していた場所に集合ということになった。

早速準備するために各自部屋から出ようとしたところ、部屋の扉が勝手に開いた。

どうやら中に誰か入ってきたようだ、その人物は....なんと驚いたことに今朝であったレイカだった。


「まってください、おじいさま!」


おじいさま? 今おじい様といったのか、村長のことを。

だとするとレイカは村長の孫娘ということになる、もしかして彼女の高圧的な態度はこれが理由なのか....?


「レイカ!? おまえ、もしかして今の話を・・・・」


「ええ、聞かせていただきました。その上で提案があります」


「なんとなくお前の言いたいことはわかるが・・いってみろ」


「私もその調査に同行します」


タクルとジースは「ええ!?」と驚いている、村長のほうはレイカが何を言い出すのかなんとなくわかっていたのだろう、驚いていない。


「タクルやジースさんだけでは安心できません、その上冒険者もどきなんて・・・・」


そういってレイカがこちらを睨んでくる、たしかに自分は冒険者ではないのだからそういわれると何も言い返せない。

ナピィはレイカに対して威嚇のように目の前でふよふよと飛んで何かをやっている、まあレイカにはみえていないのだが。


「駄目じゃ・・・・といってもお前はきかんのだろう?」


「ええ、もちろんです」


それを聞いて村長はため息をつく、こんなじゃじゃ馬が孫だと苦労するだろう。

レイカは村長を納得?させると、自分たちにさっさと準備してくるようにいって、部屋からおいたてる。


その後自分とタクルとジースの三人が部屋から出て行った後。


「それではおじいさま、いってまいります」


そういってレイカも部屋を出て行こうとする、その背中に村長が一言。


「・・・・気をつけていってくるのじゃぞ」


「はい、おじいさま」


そう答えたレイカの顔は、いつものむすっとした顔とは違っていた。


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