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たくされるもの 英雄と黒姫のロンド  作者: 永蓬 かずま
一章:託される英雄の意思
7/21

第一村人発見その名もタクル

あれからしょうもない話をしながら二人で森の中をすすんでいた。

すると正面のほうに人影がみえてくる、誰かいるのだろうか。


「だれ!?」


そこにいたのは十代前半くらいの少年だった。

少年とはいったが、目の前の少年は中性的な外見であり、服装次第では少女にみえなくもない。

やっと普通の人にであえたようだ。

「すみません、道にまよってしまって・・・・」


「道にですか? もしかしてあなたは冒険者の方ですか!」


冒険者とはなんだっただろうか?


「魔物を倒して生計を立てている人たちのことだよ、さっき説明したでしょ」


ナピィがささやいて教えてくれた、なるほど冒険者か。

魔物を倒すために森の中に入って迷いました、この設定でいこう。

ちなみにナピィはほかの人には見えていない、ナピィに話しかけているところを見られなければ一緒にいても平気だ。

例え見られても自分が独り言を言っているだけにしか見えない、いやまあ、変人に見られても困るのだけど。

「はい、そうなんです。森の中に入ったらうっかり迷ってしまって」


「そうでしたか、でしたら僕の住んでいる村まで案内しましょうか?」


「すみませんがぜひお願いします」


「いいんですよ、自分もちょうど薬草を取り終えたところで帰りますし」


そういう少年の手には薬草らしき草がはいったカゴが握られている、この辺では薬草が取れるみたいだ。

外はもう日が暮れてきている、夜になる前に人里に戻ることができて一安心。


「ねっ、幸運が訪れたでしょ!」


何かナピィがいっているが気にしないことにする。

そうして少年タクルに出会い、彼の住む村へと行くことになった。




タクルにつれられタクルの住む村[トータス村]にやってきた自分とナピィ。

ナピィは物珍しそうに自分の頭のうえからキョロキョロと見回している、自分もそれに釣られて見渡してみる。

見た感じだがあまり大きな家はなく、みな平屋で同じような家が立ち並んでいる。

どちらかというと田舎の農村って感じのようだ、だが森の中にいるよりはずっと進歩した生活だろう。


「とりあえず今日はもう遅いですし僕の家に泊まりますか?」


「いや、いきなり行っても大丈夫なのか? そもそも親御さんだっているだろうし」


「大丈夫ですよ、家には自分しかいませんし」


「あ・・すまない・・・・」

少しうかつだった、タクルには聞いてほしくないことだったかもしれない。

すぐさまに自分は頭を下げる、頭の上に乗っていたナピィがずり落ちて文句を言ってくるがきにしない。


「いえ、気にしないでください」


そういってタクルまで頭を下げてくる、そこには両者頭を下げあやまるという不思議な光景ができあがっていた。

これにはお互い顔をあげて苦笑い。

「そ・・そうか、じゃあお世話になろうかな」


こうしてタクルの家に招かれ、家の中にある4人がけのテーブルにとりあえず座り一休みすることになった。

家の中は意外と綺麗に整頓されており、その中でも壁には武器らしきものが飾られているのが気になった。

小型のナイフと斧がクロスするように飾られている。

それをじっと見ているのにタクルが気づく。


「僕の両親は冒険者なんです」


「そうなのか、じゃあタクルも冒険者に?」

タクルの腰には剣のようなものがあり、きっとそれがタクルつかっている武器だろう。


「えっ! 僕ですか、僕なんかだめだめですよ」


そういってタクルは慌てて否定してくる。


「僕は大して強くもないですし、それに弱虫だし・・・・」


そういうと顔下げてしまう。

タクルが強いかどうかはともかく、自分は弱虫ではないとは思う。

実際みずしらずの自分を家に泊めてくれたのだから、普通なら自分みたいなどこの馬の骨とも知れないやつを家に上げてとめたりはしないだろう。

タクルがそうしたのはきっと彼が優しいからだ、そして見ず知らずの人でも助ける勇気がある。

「タクルは弱虫なんかじゃないと思うよ」


「え、その。ありがとう」


よかった、少しは元気になってくれたようだ。

ところで、さっきからナピィの姿が見えないのだが....

そう思って辺りを見回すと、ナピィは近くの本棚の前を飛んでいた。

本が気になるのだろうか、自分もその本棚のほうをみてみる。

タクルもつられて本棚のほうへ顔をむける、すると何かを思い出したように立ち上がる。


「あ、そろそろ夕食の準備をしますね」


「なにか手伝おうか?」


「いえ、自分ひとりで大丈夫です。その間そこの棚の本は自由に読んでいていいので」


そういってタクルは奥の部屋へと言ってしまった、置いていかれてしまい特にすることもないので本棚のほうへと向かう。

本の背表紙をさらっと流し見る、親が冒険者というだけあって本の大半はその関係の本のようだ。

そうしていると一つ気になる本が見つかった、おかれている本の中でも少し綺麗にみえる。

手にとって見ると本のタイトルは[英雄伝記]と書かれている、物語ものの読み物だろうか。


「何か面白い本みつかった?」


そういってナピィがよって来る、時間もあるしタクルが戻ってくるまで読んでみることにしよう。

そうして本を手に戻る、ナピィも「私も読む」とついてくる。

どうやら記憶をなくしていても言語だけは覚えているようだ、もし言語も忘れていたら苦労したかもしれないな。

そうして[英雄伝記]を開いて読み始める。

内容を噛み砕いて説明するとこんな内容だ。


遠い昔、この世界は穢れに大地に大半を侵食されていた。

その世界には魔物たちがあふれ、人々は窮地へと追い込まれていった。

だがそんな世界に一人の人間が現れた、その人は赤い刃と青い刃をもつ二本の剣を持ち、全身黒い服装。

その人間は世界中の穢れを浄化してまわり、穢れた大地を人々の手へと取り戻していく、そしていつしか世界中の穢れは消え、人々は救われた。

世界中の穢れを浄化したその人間は人々に称えられ、いつしか英雄とあがめられるようになる。

その英雄は世界を救うと忽然と姿を消し、その英雄がその後どうなったのか誰も知らない。


以上が[英雄伝記]に書かれた物語の簡単な概要だ、読み物としては結構面白く感じる。

そうして読書にふけっているとタクルが戻って来る、夕食の準備ができたようだ。

戻ってきたタクルは自分が英雄伝記を手にとっているのを見ると、うれしそうに話し出す。


「あ、その本どうでした?」


「なかなか面白かったよ」

「うんうん」

タクルには聞こえないがナピィもうなずいている。


「そっか、ちょっとうれしいな」

「実はその本は僕のお気に入りなんです」


「そっか、タクルもきっと立派な冒険者になるさ」


「ええ!?、そんなことはないですよ」


「いいや、なるさ。心はもうすでに立派な冒険者だ」

そういってタクルを褒めちぎる、とくに他意はなく自分の素直な感想だ。

ぜひタクルには冒険者になってほしい、きっと優しい素敵な冒険者になることだろう。

そんな冒険者がいればこの世界も英雄伝記の世界のように救われていくと思う、そういう意味ではタクルは立派な英雄の卵かもしれない。


その後タクルと一緒に夕食を食べた、一方ナピィはというと....。

タクルには姿は見えていないし、かといってナピィの分も頼むのは不自然。

その結果ナピィは自分の分の食事をタクルの目を盗みながら、しっかりと食べていった。

おかげさまで自分の分が減り少し物足りなく感じる、まあいたしかたのないことなので我慢だ。

食事中にタクルと話し合った結果、今晩はタクルの家に泊まることになった。

本当にタクルは良い子である、良い子過ぎて心配いなるほどに。

自分としては非常にありがたいかぎりなのだが....タクルの優しさに漬け込んでいるみたいで少し罪悪感を感じてしまう。


夕食後タクルに使っていいと案内された部屋に入る、部屋は大きくなくベットや机や棚などがおいてある。


「やったー!ベットだー」


そういってナピィが元気にベットへと突撃していく、そして布団の中にもぐりこみはしゃぎだす。

自分はナピィの姿が見えるからいいものの、ナピィの姿が見えないほかの人から見るとちょっとしたホラーシーンだろう。

はしゃいでいるナピィをほっといて机のほうへと向かい、机の前の椅子へと座る。

そうして机の上に目を向けると、そこには一枚の絵が置かれていた。

「これは・・・・」

その絵をみてみる、その絵は小さい子供が書いたような絵だ。

絵には三人の人がかかれており小さい人が二人の間にいる、両脇の二人は手に細い何かを持っているようにも見える。


「わー、もしかしてタクル君の描いた絵かなあ」


いつの間にかナピィが近寄ってきており、一緒に絵を覗き込んでいる。

もしこの絵がタクルの描いた絵なのならば、きっと真ん中の小さいのがタクルだろう。

そして両端の人は両親だろうか、もしかして手に持っているのは武器か何かだろうか、タクルの両親は冒険者だといっていたし。


「それにしてもへたくそだね」


ナピィが何か失礼なことを言っている、もしこの絵がタクルの書いたものだとしても今よりもかなり幼いときだろう。

へたくそで当たり前なのだ、大事なのはうまいかどうかではなく気持ちだ。

「ならナピィはうまいのか?」


「もちろんだよ、ほらこんな感じに」


ナピィが宙に向かって何かを書いているようなそぶりをしだした、正直そぶりだけではうまいのかどうかもわからない。

「へたくそだなー」

よくわからないので適当に言っておく。


「ッム!」


ナピィからは返事の変わりに、頬へとび蹴りが帰ってきた、大して痛くはない。

ナピィをいじるのも面白いが、これ以上人様の書いた絵をじろじろ見るのも悪いので、椅子から立ち上がりベットへと向かう。

後ろからはナピィの講義の声が聞こえてくるが無視を決め込む、さすがに今日は色々あって疲れた。

眠いのだ、おやすみ。

「おやすみー」

そういって自分はベットへともぐりこみ目を閉じる、疲れていることもあってかすぐに意識は遠のいていった。


「こらー! まだ話は終わってないんだよ!」


そういいながらナピィも布団にもぐりこんできた、そこからはもう記憶はない。


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