出会い
できる限り、最低でも一日一回は投稿する予定です。
最初のうちは書き溜めた分があるので一日に数回投稿します。
人には大なり小なり目的や目標、さらに言うのならば夢があるだろう。
自分はこうしたい、自分はああなりたい。
そう胸に秘めながら人はたとえどんなに遠回りでもその夢に向かって進んでいく、その途中で見える世界は色鮮やかなものに見えるだろう。
だが、たとえば。自分の目指すべき道しるべがなかったらどうだろうか?
どこにいけばいいのかもわからず、どこへ進んでいるのかもわからない。
それどころか本当に自分は進んでいるのか?
後ろへ下がっているのではなかろうか、それどころか進んですらいないのではなかろうか。
そんな状態で見る世界は、色を失った色あせたものになっているだろう。
もうこうなってしまえば、自分の立っている足元ですらおぼつかない。
だからこそ人は手を伸ばす、自分を支えてくれる[何か]を求めて・・・・。
ふと目を覚ますと自分は木の幹に背をあずけて寝ていた、そしてなぜそんなところで寝ていたのか思い出せない。
周りを見渡すと一面緑一色に染まっており、いかにも森の中という感じだ。
立ち上がり自分の身体を確認する、持ち物はこれといって特になく手ぶらだ。
しかし、どうしたことだろう。自分のことのはずなのに何も思い出せない、ここはどこだろうか?
そもそも自分誰だったか?
頭を悩ませるが答えは一向に出てこない、本当に何も思い出せないのだ。
「困ったな・・・・」
そう独り言をもらさずにはいられない。
とりあえずあたりを探索してみよう、もしかしたら誰か人に会えるかもしれない。
自分では何も思い出せない以上、誰かほかの人にきくしかあるまい。
まあ、人に出会えたからといってこの状況が打開できるとは限らないが。
そもそも誰かに出会えたとして、なんと説明したらよいだろうか?
自分は何も思い出せない記憶喪失なんです、そう正直に伝えればいいだろうか。
いいや、これでは完全に頭のおかしなやつと思われてしまうかもしれない。
はじめはそれとなく色々聞くしかないだろう、もし人と出会えたのならばだが・・・・
そうと決まれば早速行動開始である、いくあてがあるわけではないがとりあえず前へ進む。
道らしい道もなく草木が生い茂る森の中を進んでいく、回りは草木の葉で覆われ地面は木の根などででこぼこでとても歩きずらい。
そんな中でも前へ前へと進んでいく、目の前に広がるのは生い茂る木々、ただそれだけ。
どれだけ進んでも見える光景は変わらずに、自分が本当に進んでいるのかすら怪しくなってきた。
進んでるつもりが、同じところをぐるぐる回っているのではないか? と錯覚しはじめてくる。
次第に疲れもたまりおなかも減ってきた、こんな足場の悪いところを進んでいるのだから当然だろう。
さすがにちょっとふらついてきたので少し休憩することにした自分は、木の根に座りこむ。
歩きっぱなしだったので、座るだけでも疲れが取れていくようなきがする。
目を閉じ耳を澄ませ聞こえてくるのは、風に揺れる草木の揺れる音。
聞いていると心がやすらかになっていく、これも自然の立派な癒し効果だ。
そうして心と身体を癒していると、さっきまでとは違う雑音が聞こえ始めた。
方向は3時の方向だろうか、この森に住む動物かもしれないが、もしかしたら人の可能性もある。
まだ身体はだるいが、今の状況に進展があるかもしれない。
そう考えるだけで少し力がわいてきた、さっそく音のした方向へ向かっていく。
ある程度進んでいくと、犬のうなり声のような音が聞こえてきた。
何も見つからない現状を打破できたうれしさと、人ではなかったかなしさの半々といったところだろうか。
一応気配を殺し、慎重に近づいてみる。
近づいてみてみると、うなっていたのは犬というよりは身体の大きな狼のようなやつだった。
そいつは一体何に対してうなっているのかと思い、目を凝らしてみて見ると・・・・
狼もどきの視線の先には、宙に浮き光り輝くものがあった。
なんだろうと思い、もっとよく見るために前へと近づく。
あの光るものがなにか知りたい、その思いが自分の足元に落ちていた木の枝の存在を消していた。
「パキッ」と音を立ててから、しまったと我に返るが時すでに遅し。
その小さな音を逃さず聞き取った狼もどきがこちらへ振り向く。
マズイ、完全にこちらにきづいた。しかも、こちらに対してうなり声を上げあきらかに威嚇してきている。
どうみても友好的ではなさそうだ、どうする逃げるか?
相手は狼もどき、どう考えても自分よりも早いだろう。
その上歩きづらい地面である、これではどう考えても追いつかれる。
そんなことを考えて後ろへとじりじりと後ずさっていると、それを好機ととったのか狼もどきが走り出し飛び掛ってきた。
やばいと思い慌てて後ろに下がろうとするが地面に足をとられつまずいてしまう、そこへ狼もどきがとびかかり自分の左腕へとかみついた。
「ッタアアア!!」
あまりの痛みに声にならない叫びがあがり、地面に倒れこむ。
このままでは腕を噛み千切られてしまう、痛みをこらえながらあいている右腕で狼もどきを殴るが、きいていないのか噛んでいる腕を放そうとしない。
「このやろう!」
腕がだめなら足だ、そう考え右足で膝蹴りを狼もどきの腹へとたたきこむ。
するとさすがにきいたのか「ギャン!」と声をあげ口をあけ噛んでいた左腕を離してくれた、そのまま足でさらに蹴りを叩き込もうとするが狼は華麗に後ろへ飛び退きかわした。
狼もどきが離れたので自分はすかさず立ち上がる、噛まれた腕からは血が滴りかなり痛む。
痛みに顔をゆがめながらも狼もどきからは目を離さずにらみつける。
そうしてにらみ合いを続けた後、狼もどきは興味をなくしたのかその場から離れていった。
正直、狼もどきがいなくなってくれて心底安心した。
あのまま続けていれば間違いなく自分は噛み殺されていただろう、そう考えるだけでもぞっとする。
そう安心すると、今度は腕の傷の痛みが襲い掛かってきた。
さっきまでは気にしている余裕がなかったが、腕の傷は結構深そうだ。
このまま放置していたらさすがにやばそうだ、出血だけでもなんとかしないと。
そう考えているとさっきまで狼もどきに追われていた光る物が近寄ってきた....。