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世界は少女を(6)



桜が咲いてきましたねー。










華宮桜視点






「……で?俺は何処に送れば良いんだ?」



「へ?」





天鏡さんの元から大分離れただろう場所で、突如放たれたコトバは恐怖そのものだった。




何処にって、高級ホテルに送ってくれるんじゃなかったの?え、元の場所に送ってはくれないの?

という目で亜嵐くんをジッと見つめるが、真面目に分からないらしい。段々と不機嫌になっていくのが分かる。





大分前から察していたが、亜嵐さんは鈍い、全体的に鈍い。





「えーと、元いた場所に…。」



「何処だよ。」



「え、住所とか分からないよ私。」



「あ?俺だってんな事言われても分かんねぇよ。単細胞」






「俺はタクシーじゃねぇんだよ。あ”?」とドスの効いた声で私を嚇す七歳前後の姿をしたお方にお手上げ状態です、助けて下さい天鏡さん。





「あ、あの……私を迎えに来れたんだから、帰りだっていけるんじゃ?」



「分かる訳ねぇだろ、てめぇの気配辿って来たんだから。」



「じゃあ私の気配の痕跡を辿れば……」



「出来る訳ねぇだろーが、俺は犬じゃねぇんだよ。 単細胞が…」



「……もしかして、詰んでる?」



「もしかしなくても詰んでんな。」





その言葉に段々と自分の顔の血が下に下に行くのが分かった。下を見てもここが何処か分からないし、上を見ても透き通った青い空が見えるだけだ。





「あ、あのですね、何処に降ろせます?」



「日本。」



「アバウトすぎる!」



「あー、だったら日本の真ん中らへん。」



「絞っているようで絞ってない!」



「あ"?じゃあ何処なら良いんだよ?言っとくが俺は日本で知ってる場所なんぞ‥…ん?」





ドスの効いた声が突如、幼い子供の声に戻った。





「なんだ、あれ。」



「?」





そう言って亜嵐さんは何か日本の真ん中らへんだろうなという所で止まった。





「妖樹の山が歪んで見える。」



「……妖樹?」



「長生きし過ぎた樹、と言いたいが………神木になりえなかった樹と言うべきか。」






「とりあえず、単細胞では伝わらんだろうな。」と真顔で言うと、車の急ブレーキみたいにキキッと音がしそうな勢いで止まった。舌を噛んだ。痛い。





亜嵐さんは下をジッと見つめる。私も下を見たが、とりあえず山の上だなとしか言いようがない。





「……おい、あれお前の仲間じゃねぇのか?」



「ごめんなさい、私は亜嵐さんみたいに視力良くないんです。」



「見ようとすんじゃねぇ、あれだ、あれ。心の目で見ろ。」



「適当に言ってません?」



「とりあえず目閉じてみろ、見えてこねぇか?」



「すごい、真っ黒!」





確実に瞼の裏しか見えていないが、亜嵐さんはその解答で良かったらしい。





「歪んだ山の中に黒い斑点みたいなのが見える。」



「すいません、私が見えているのは瞼の裏なんです。」



「仲間もいる事だし、彼処で降ろすか。」



「え?」





まさかの事に表情筋がぴくぴく痙攣している事が分かる。だが、私の事など御構い無しに亜嵐さんは急直下する。





「ちょっ、待って下さい!人の話を、てか何で皆が山に!?」





もっと言うなら何で皆の事を知っているんだろう。

私の疑問を他所に亜嵐さんと私は既に山の中にいた。





「っ!?…皆!!」





山特有の薄暗さのせいで目の前の光景が見えなかったが、下弦の月が辺りを優しく光で包む。





けれど、見えたのは生徒会の皆と風紀委員会の2人が大きな妖樹の根に捕らわれている姿だった。





「こんな………酷い!」



「おい待て単細胞、早まるんじゃねぇよ。」





私が駆けつけようとしたら、亜嵐さんは裾を引っ張り逆とおせんぼのような事をする。

あ、今ビリって言った。ビリって聞こえた。服の終末の音が聞こえた。





「妖樹は馬鹿じゃねぇ、何か意味があるはずだ。」



「意味って……」



「全くもってその通りだよねぇ。」








色っぽい、けれども何処か恐ろしい低い低い声が木霊した。慌てて振り返ると、何処かの雑誌で見たような顔があった。








「妖樹は、あの子の過去を見せているんだろうねぇ。」



「あの子…?」






あの子って、誰だろう。けれども、何となく予想は出来た。







「妖樹は、この子らがあの子を救うモノだと確信した。でなければ……


























ーーー禁忌を犯す筈がない。」










次回は副会長の暴走、書記の胃痛


お楽しみに←




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