世界は少女を(5)
最近、祖父に顔面を踏まれる夢を見ました。
私たちが蟻の子を踏み潰すように
神様も人の命を握りつぶすのだろうか
私たちが大切にしてきたものを飽きて捨ててしまうように
神様も大切にしてきた人間の命を捨てるのだろうか
神様の子供が人間なんだっけ
あれ…違うか、神様にとって人間は忠実なる僕だっけ
でも、神様は人間を愛してくれてるよね
信じたら、信じ続けたら
救ってくれるんだよね
あれ、でもオカシイな
どうして、神様は助けてくれないんだろう
どうして、有神論者だった母はあんな死に方をしたのだろう
どうして、私は幸せになるために前を向いたのに
どうして、幸せが遠のいていくのだろう
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華宮桜視点
「ーーー私は
真実が知りたい。」
俯きかてけいた顔を上げ、前を向く。
何も、信じられない状況の中で
何を信じたら良いのか分からない暗闇の中で
孤独に襲われながらでもいい
何度も裏切られてもいい
だって
「何も知らないまま、終わらせたくない。」
神様に愛されているとか、正直実感がないし、だから何なのって思う。それどころか、まだ信じていない。信じたくない。
「お彼岸太夫の事を知りたい。」
全てを狂わすと言われ続けた
唯一、疫病神の隣に居続けた
お義父さんと黒乃が愛した
私が、殺そうとした
かわいそうな女の人
「いや、勝手にしろよ。」
「へ?」
「ふふ、わたしたちはただ、あなたにひつようだとおもったじょうほうをあたえただけですよ。」
「え、え?けど……なんか滅多な事が起こりうる予兆とか何とか言ってたような……。」
「いや、別に何かして欲しいとかじゃねぇよ。それに…「あなたは、みずからのみちをきりひらけると…わたくしたちはしんじていました。」」
「わたくし、たち……?」
つまり、亜嵐さんも私を信じてくれたということで……
見下ろすと、亜嵐さんはバツが悪そうに顔を逸らした。けど、耳が真っ赤になっていて、ちょっと可愛いなと思った。
「あなたは、これからしりたくないげんじつを、みたくもないしんじつをまのあたりにするでしょう。」
天鏡さんはそう言いながら、身に付けていた金色の首飾りを浮かせ、私の手元に落とした。そしてオデコとオデコをくっつけた。冷たくも温かくもない。存在してないような危うさに背筋が冷たくなる。
「これはおまもり、くろののじゅつをむこうかしてくれるでしょう。」
「え!?あ、ありがたいですけど、私が貰っても…」
「煩いこと言うんじゃねぇよ、単細胞生物。早く受け取って帰れや。」
「連れてきたのそっちだよね!?」
「お前、本当に五月蝿え奴だな。送るからさっさと乗れや。」
「どこに!?」
「ふふふ、ほんとうになかがよいのですね。」
そんな言葉を背に、私はよく分からないまま竜巻に乗せられた。
行きも思ったんだけど、この竜巻酔いそうなんだよね。
「き、気持ち悪……。」
「おい、吐くなよ単細胞。」
「グルグル気持ち悪……、うぷっ。」
「わたくしにうでがあれば、さすれるのですが……。」
天鏡さんはそう言いながら、スッパリと切れたような両腕を見る。
両腕だけじゃない、天鏡さんは両脚も無かった。それどころか、目玉も、頭の脳味噌も、身体の中の臓物も無い。
天鏡さんは、空っぽだった。
「……ぶきみですか?」
私が凝視している事に気付いたのか、それともずっと前から天鏡さんを見る私の目が震えていた事に気付いてたのかは分からない。
けれど、天鏡さんの目玉を入れるための窪みが、ジッと此方を見つめてくる。
「わたくしじしんもそうおもいます。ですが……これでよいのです。」
天鏡さんは優雅に微笑む。
「わたくしは、ひとのこがいとおしい。」
次回は生徒会メンバー出せたらいいなーという願望