貴女を知る旅(5)
特に書くことがないです←
修道院昭道視点
「あの子、闇落ち済みっスね。」
「目を見れば直ぐに分かるだろうが、あと黙れ。」
「それにしても、あの化物はなんなんスかねー?」
「……分からんが、俺たち陰陽師が束になっても勝てないだろうな。あと黙れと言ってる。」
「なら呪術師ならイケるっスかねー。」
「呪術師が呪い殺せるのは人間だけだろうが、だ・ま・れ。」
「えー!んなこ「黙れと言ってるだろうが!!!」へぷしっ!」
空気を読まず話しかけてくる咒にキレてしまったが俺は絶対に悪くない。
まず此奴と無駄な話をしていたら会話が聴けない。大事なことだからもう一度言う。
まず此奴と無駄な話をしていたら会話が聴けない。
だが咒は相変わらず呪術師としても人間としてもポンコツな感覚のせいで化物になんの恐怖も持っていない。もう苛立ちを超えて心配になる。
少女と化物へ目を向けるが会話に進展はなく、化物はニタニタ笑い、少女は目以外は笑っていた。只々、それが怖かった。
「もう、いいの。」
時間が止まったような感覚に目眩と吐き気を催しながら、やっと進みそうな会話に耳を傾ける。
「ただ、川のせせらぎのように生きて、濁った海へと死んでいくだけ。」
「…へェ。己の行末ハ自覚済ミってコとか。」
「…命を断てば、楽になるけど、どこかで期待してるの。…心のどこかで、待ってるの。」
少女の死んだ目が、その言葉を呟いた時だけ明かりを灯した。憧憬を瞳に宿した目は、とても綺麗に思えた。
「ところで、あなたはだぁれ?」
この化物に出会えってから大分時が経っているのだが……まあ、いい。
「キヒヒヒヒヒ、誰?だぁレ?……誰ダと思うンだァ?」
「……分からない、けど
ーーーおんなじ気がする。」
そう言いながら、人差し指を化物に向ける少女、その人差し指を化物がへし折ったりしないかヒヤヒヤする。
「……俺と、同ジぃ……?」
「……ん、全部どうでも良いって顔、してる。」
「……キヒヒヒヒヒ、ひひひひひひひひひ!!」
低めの金切り声のような不快さに眉を寄せつつも、咒の口元を手で……防げなかった。目を横に向ければ咒の姿は見当たらず、ただ若い木々が佇んでいるだけだった。
「っ!あの馬鹿……!!」
「何処へ行った!?」と思う前に咒は林の中からひょっこりと姿を現した。
「咒、お前一体何処に「イインチョ、ヤバイっす。」最初からヤバイだろうが!!」
「違うっス!あの化物は、四大古妖の……!!」
「俺ぁ、忌諱、忌諱ダ。疫病神ダの鬼蜘蛛だノ色々言わレてる。」
咒が言う前に化物は己の名を口にした。
「……四大、古妖、……疫、病神?」
「……やっぱり。」
「なら、杏ちゃんBは
ーーーお彼岸、太夫?」
「……イインチョ?」
「…ああ、ああ、やっぱりそうだ。やっぱりそうだったんだ。全部全部繋がった。やっぱり咲良田杏はお彼岸太夫だったんだ。お彼岸太夫は咲良田杏だったんだ。あの時俺を助けてくれたのもあの時俺を救ってくれたのもあの時俺を匿ってくれたのも全部全部全部咲良田杏だったんだ。」
「イインチョ。」
「早く戻らなければ、早く戻ってお彼岸太夫を
ーーーお、彼岸……太夫、を?」
「イインチョ!」
「そ、うだ、そうだ。殺さなければ、殺さなければいけない。殺して、…殺して、どうするん、だ?」
「イインチョ!…イインチョ!!っ、しっかりするっス!!」
「殺、して…殺して、……黒、乃に、黒乃にーーー」
「っ、元に戻れよ、くそが!!」
大きな衝撃と共に、脳天が割れそうなほどの痛みに踞る。頭を触れば赤黒い血がべっとりと付着した。
「咒…!!何をする……!!」
「こうでもしなかったら元に戻りそうじゃなかったんスよ!!」
「だからって石で殴る奴がいるか!!」
咒の両手にあった石には血が付いていた、俺を殴った鈍器ですよと主張するかのように。
…此奴は俺を殺そうとしているのだ、そうに違いない。
「……イインチョ、あんた、もしかして
ーーーお彼岸太夫に、狂った人間なんスか?」
次回は新キャラという名の四大古妖の最後のお方が出ます