世界は少女を
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華宮桜視点
例えば、此処に2つのリンゴがあります。
青色のリンゴと、赤色のリンゴです。
青色のリンゴは、とてもまずそうです。
赤色のリンゴは、とてもおいしそうです。
ーーー本当に?
ーーーーー
「つーかーれーたーーー!!」
ふかふかのベッドに埋もれながら、くぐもった叫びを出した。私のストレス発散法の1つだ。けどこの方法は響かないし、ホテルの他のお客さんの騒音にもならない。
あ、けど高級ホテルは防音壁なのかな?
ベッドの上でのたうち回るようにゴロゴロゴロゴロする。
パーティーなんて初めてだった。お義父さんに頼まれたから行ってみたものの、慣れないドレスにヒール、笑顔の裏で何を考えているか分からない偉い人達、妖達、お義父さんも途中まで一緒にいたのに、いつの間にか何処かへ行ってしまった。
爪先が痛い、小指らへんが特に痛い。お腹も未だにドレスの締め付け痕が残っている。
「……お義父さん、何処に行ったんだろ。」
お義父さん……血の繋がっていない、けれど私を愛してくれるお義父さん。
ああ、だけど、違う。
ーーーそうじゃない
『此処は、とある女を監禁するための部屋なんですよ。』
『中は、見ない方がいいです。見たら反吐が出ますよ。首輪に手錠に性玩具、奇妙な薬に、後は着物や帯、簪が大量に飾ってあります。まるでーーー』
「まるで、……なんだろう。」
黒乃の言う通りなら、お義父さんの1番は……その女の人なんだろう。
その女の人は、一体誰なんだろう。
『貴方が一番罪深き存在だと思った者を、
ーーー殺しなさい。』
心の奥にドロドロとした何かが溜まっていく。その溜まった何かが私の傷だらけの心臓に膿を残していくんだ。
嫌、嫌だ、こんな気持ちになりたくない。気持ち悪い。
鞄の中に入っている聖銃
怖い、怖くてしょうがない
私はいつか、引き金を引くのだろうか。
引かなきゃいけない、のだろうか。
鞄のボタンをを外し、真っ黒なレースのハンカチに包まれた真っ白な聖銃を手に持つ。
引き金に人差し指を掛け、銃口を見る。
銃口は暗く、ここから弾が出てくるのだと思ったら…手が震えた。
『貴方が一番罪深き存在だと思った者を、
ーーー殺しなさい。』
黒乃の言葉が脳内に響き渡る。
……本当に、罪深いのは
ーーー私、なんじゃないの?
今、この聖銃の引き金を引けば
それで、全て解決なんじゃないの?
不思議と、手の震えは収まり、引き金を引く力が強くなった。
………カチ
ーーーー
ーーーー
ーーーーあれ?
「偽善者女。」
突如聞こえた幼い声に私は飛び起きる。
私以外誰もいない筈の部屋から、いや、私の隣に、男の子が座っていた。
「っ!?」
男の子は凛々しい顔立ちをしていた。けれど、それ以外は七歳前後の唯の少年だ。
「その聖銃に弾なんざねぇよ、クソ女。」
「く、クソって…!!」
「聖銃に弾なんざねぇよ、弾なんて制限はな。それは…てめぇが本当に殺したい相手しか殺さねぇよ。てめぇが今引き金引いて生きてんのは、殺したい相手が別にいるんじゃねーの?キチガイ女。」
「……そんなの。」
いない、と言えば…嘘になる。だって、さっきまで私はーーー
「少なくとも、さっきてめぇが引き金引いたのは逃避衝動からだろ、それじゃあ聖銃は答えねぇよ。聖銃は無慈悲だからな。可哀想な女。」
「貴方は……」
誰?と言う前に、少年は立ち上がった。その仕草は少し子供っぽい。
「ほら、さっさと行くぞ、天鏡が待っている、のろま女。」
「え、あ、ちょ…!?」
少年の手は温かく、振りほどけない。力が強い……!!
「待って待って待って!!てんきょうって誰!?」
私の声をガン無視して少年は歩く。
気付けば部屋のドアの前だ。
少年は少し背伸びをしてドアを開ける。
目の前に広がっていたのはーーー
次回はイインチョ視点ですね、はい。