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貴女を知る旅(3)



主人公があまり出ない作品って凄いよね←







修道院昭道視点





小鳥の囀りが聞こえる。




優しい陽射しに包まれ、俺は瞼を開く。





周りには生い茂る草花に若々しい木々、風が吹くたびに大地が生きている錯覚に見舞われる。





「此処は………。」





いや、コレは一体何なのだろう。妖樹が見せる幻覚?それとも夢?まさか……本当にタイムスリップしたとでもいうのか。





「これ……見せてるんスよ、イインチョ。」



「咒……。」



「妖樹が見てきたモノを、…長く此の世に存在したモノにしか出来ないのか芸当ッス。」





その言葉に俺は九十九神の上司的な何かかと、安直な考えに至った。





「イインチョ……あれ?他の奴らは何処っス?」



「いるだろう?お前の足元に。」



「え?」




俺の虚言を間に受けた咒は思わずその場から退ける。





「冗談だ。」



「もー、イインチョ。超焦ったッスよ〜。」



「彼奴らは……恐らくだが、別の時代へと飛ばされたんだろう。」



「別の?」



「仮にこの時代が1番古い妖樹の記憶だとしたら、彼奴らはその後の時代に飛ばされたと、俺は考えるが……」



「んー、けど…その可能性が高そうっスね。」





咒は少し大きい樹を撫り、眼を閉じる。





「再現が精密すぎて、不気味っス。こんな古い記憶なのに…。」



「そもそも、この樹は俺たちに何を見せようと…」と咒が言った瞬間に




林を掻き分け、此方へと向かう音が聞こえた。




それは、ボロボロの着物を纏うように着た女だった。




「此処まで来れば………!!」





女は俺たちを擦り抜け、林の奥へ奥へと進む。すり抜けた事に感動した咒は「これが身体離脱……!」とほざく。


女は息を荒げ、膝を球体関節人形のように曲げる。





「やっと、やっと……!」



「何から逃げてきたんスかねぇ…あ、可愛い。」



「帯が前に結んである……遊女だな。

ここら辺の時代では醜女の部類だろう。」





時代によって顔の良し悪しは変わっていく。俺たちが今どの時代を見ているのかは分からんが、少なくとも目が大きく二重で小顔は平成からの美人顔だ。昔の美人顔は能面の若女顔である。




「けど、そんな子がどうして?」



「知らん、だが……








ーーー追手が来たようだな。」





茂みから突如現れた人影ば女の背後に回る。日差しが反射し、顔はよく見えないが、堅いの良さからして男だ。





「あちゃー、捕まっちゃった。」



「追手というよりも…村人か?」





男が女を背後から捕えると同時に、茂みから次々と村人の男たちが姿を現わす。





女は口にボロ雑巾のようなものを詰められ、手脚を縛られ、挙げ句の果てには大きな布に包まれ、男たちに連れ去られる。





「うわー、あれ絶対ろくでもないことされるっスよ。」



「見れば分かる。」



「女を村人が集って捕えるとか……ねえっスわー。」



「だが、あの女が此の道を通ると確信していたかのように隠れてたな。」





俺たち女が連れ去られた方角を見据えているとら小さな足音が聞こえた。




小さな足音は徐々に此方へ近付き、そして止まる。





「女の子?」





少し痩せ細った手脚に、長い黒髪、ボロボロの布切れを縫い合わせたような着物にすり減り過ぎた草履、顔は前髪でよく見えない。





「また、はじまる。」





少女は呟く。





「……どうして。」





少女は呟く。





生ぬるい風が春を告げる。





「………え?」





それは咒から溢れた音だった。

だが、咒が驚くのも無理はない。










「杏……ちゃん?」





その少女はあまりにも、咲良田杏に似ていた。






次回はまたお狂ちゃん視点に戻ります



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