残された少女は動く(2)
秋が1番忙しい季節だと思うのは作者だけでしょうか。秋は読書の秋ですね。読書の秋にしたいですね(白目)
生徒会と風紀委員長、風紀副委員長が学園から姿を消して早3日が経った。
学園は噂話と混乱と親衛隊の暴動で混沌としている。
警備員はおろか先生方にも収集が付かなくなった今、唯一の救いは風紀委員会がしっかりと活動を強化している事だ。
……華宮桜は未だに帰ってきていない。
不自然な程、未だ帰ってきていない。
こんな状況であるにも関わらず、私の監視は続いている。私に構う暇があるなら直ぐ隣の教室で起きている親衛隊の暴動をどうにかすればいいのに。
「隣の教室、騒がしいね…。」
奈菜子は心配そうに隣の教室を見て呟く。
「…親衛隊の暴動です。」
私の隣に立ち、無表情…表情筋が死亡している青年は、私の監視を雪乃静から代わった風紀委員だ。
顔は整っているのだが乙女ゲームには見た事がないので通行人Aならぬ風紀委員Dであろうその青年は、死んだ人間が目を見開いているような恐ろしい顔で呪詛を振り撒く。
「あの牝共、たかが3日委員長達がいなくなっただけで、やれ教室を荒らすわやれ授業をボイコットするわ挙げ句の果てには校長室を占拠しようとするわで滅茶苦茶なんですよ。あれですかね、恋は盲目って奴ですかね。馬を用意すればいいでしょうか?威勢の良い馬を50頭くらい学園内に放てば我に返りますかね。」
「風紀さん、それ学園内の人間全てが永遠の眠りにつきます。」
語尾に付けるべきハテナマークが消滅しているせいでより恐怖が煽り立つ。
「……正直なところ、俺もあの暴動を止めに行きたい、貴方を監視する意味が分かりません。」
そう言いながら、切れ長の目を更に細くし私を見る。
「けれど、委員長の命は絶対です。」
「そ、その委員長さんは居なくなっちゃったのに?」
奈菜子は無自覚に火事場に灯油をぶち撒ける。
「…何か、理由がある筈です。そうでなければ、あの生真面目で誰よりも人思いの委員長が、この学園を見捨てる筈は……」
「見捨てる……?」
その言葉に疑問を持った奈菜子だが、直ぐに別のものに思考を移したようだ。
「あ、理事長!!」
窓の向こうに黒妖学園の理事長、濡螺がいた。
「理事長って、…えっと、何かのパーティーに行ってたんだっけ?」
「いいえ、パーティーには行っておりませんよ。理事長は確か…」
「ほほ、少し仕事に出掛けていたのよ。」
もう少し正面から出てこれなかったのか、はたまた驚かせたかっただけなのか。
「ほほほ、久しいのぅ、愛しい生徒達よ。」
「……理事長、先生。」
愛しい生徒達なんて言いながら、私しか見ない理事長ことぬらりひょんは、腰砕けになるような声で囁きかける。
「満足したかの?」
その言葉を理解するのに酷く時間が掛かった。
「理事長、知っているかもしれませんが……」
「知っているのぅ、学園の要となる生徒達が行方知れず…じゃろう?」
ぬらりひょんは笑みを浮かべてはいたが、だからどうした…と言うかのように目が笑っていない。
「安心せよ、わしから言えるのはそれだけじゃ。」
「…この状況を目の当たりにしても?」
風紀委員は不審そうにぬらりひょんを見る。その楯突いた言動が気に食わなかったのだろうか。
「………ああ、主には良い事を教えよう。少し話さんか?」
「………?申し訳ありませんが、監視対象から目を離すわけには…」
「………のぅ。
ーーーわしの言う事が聞けんか?」
その言葉を聞いた瞬間、まるで操り人形のように風紀委員はコクリとゆっくり頷く。
そして、ぬらりひょんは私達に手を振りながら少し暗い廊下を歩いていく。
「な、なんか…様子が………。」
そう言いながら私の様子も窺う奈菜子に私は笑い掛ける。
「大丈夫ですよ、理事長は良い人ですから。」
思ってもいない言葉に鳥肌が立ちそうになりながら、私は今後どう動くか考える。ぬらりひょんの言動はまるで
ーーー私が何をしようとしているか、知っているような
後日、とある風紀委員が姿を消した。
次回はイインチョ視点ですね
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