貴女を知る旅(2)
最近眠気に襲われるんですが、これは何の病気でしょうか?
A.寝不足
修道院昭道視点
気付けば山の中だった。
馬鹿だと思うかもしれないが信じて欲しい。
蒼蛇鱗に続いて聞こえた、何処か懐かしい声に導かれるように
気付けば山の中にいた。
しかも唯の山ではない。
辺りには不気味な木々が生い茂り、いや、何か違うな。こう、歳を食っているだろうなと思える木々達が密集しているような感じだ。
「てか此処、妖草の生えている山っスよね。という事は周りの木は全部妖樹……?」
「見て見てー」
「危険信号色ー!」
「「おひとついかがー?おにーさん!!」」
「コラコラ、拾っちゃいかん。」
「あんたら本当に自由っスね。」
この光景何処かで見たことあるなと思ったら、あれだ。小学校の動物園見学で見た猿山だ。
「で、此処は何処だよクズ。」
黙れボス猿。咒の話を聞いていなかったのか?
「此処は……どう言ったらいいだろうか。」
「えーと、咲良山の近くにある山っスよ。ほら、疫病神の……」
疫病神という単語に蒼蛇鱗が顔を顰める。…此奴は疫病神の事を知らなきゃ恥ずかしい常識としか思っていなかった筈だが。
「この危険信号色の草食べてみてー」
「なんか力がみなぎるのー」
「「元気100%ー!」」
「妖草っスからねぇ。」
咒はもうツッコむ気力が無くなったらしい。
木枯らしが風を誘うように揺れている。
側から見たら不気味な木々だが、よくよく見れば趣があるようにも見えるなと目の前の枯れた樹に手を添えると
『綺麗な霊力だ。』
なんか喋った。
ーーーーーー
「ぎゃーーー!お化けーーーー!!」
見えない相手に悲鳴を上げた咒はコアラのように俺に抱きつき面倒くさく重たいので切実に振り落としたい。
「お化け探す?」
「お化け捕まえる?」
「「どーするどーする!?」」
「落ち着きなさい、とりあえず霊的なものはとっても頼りになる陰陽師の方に頼みましょう。」
「おいちょっと待て。」
「さっさとどうにかしろや。」
「陰陽師は霊媒師じゃないんだが。」
そもそもこの声は恐らくこの樹が発している…筈だ。
口がないから何とも言えないが。
……脳内に直接入ってくるような声が気持ち悪い。
『綺麗な霊力だ、男児にしては珍しい。』
木々の枝が俺に纏わりつく、どうやらこの声の主の言う綺麗な霊力とは俺の事らしい。
「え、それ、どーゆう意味っスか?」
『まるで、純潔を神に捧げた巫女のような霊力だ。』
「え、つまりイインチョはどう「咒、お口チャック。」
そう言って俺は咒の口に拾った枝を入れ込む、咒は倒れた。
『何故此処に、何故此処へ?』
「知らん、俺たちが説明して欲しいくらいだ。」
クソはそう言って忌々しそうに樹を睨む、器が小さい男だ。
「だが……懐かしい声を聞いた。」
何処か懐かしい声だ。ずっと昔の………誰の、声だろう。思い出せない。あともう少しで、思い出せそうなのに。
ーーー何かが記憶の、邪魔をする
「俺………に、も、聞こ、え、た。」
意外にも、俺に共感したのは雪乃静だった。前髪に見え隠れする瞳は、悲しげに揺れる。
「ーーーの、声…だっ、た。」
そう言って俯く姿はまるで、迷子の子供のようだ。
『そうか、主ら2人は……』
全てを察したかのような声に、蒼蛇鱗は不審そうに樹を睨む。
「此処へ連れて来たモノを、ご存知のようで?」
そうニッコリと冷たく微笑む。だが樹は木枯らしを揺らしながら問い掛ける。
『何が知りたい?』
樹は突如大木となり、枯れ果てた木々は新しい命を芽吹く。
「これは……!?」
『樹は長寿だ、その意味は無だ。だが
ーーー我らは語り継ごう。』
違う、これは幻だ、樹が見せている幻想だ。
この山は今、命を育んでいるのではない。
俺たちに過去を……見せようとしているのだ。
『我らは語り継ごう、我らが観てきた全てを。』
『我らは生きてきた、だが、我らは動くことは出来ぬ
。』
『川のように、風のように、息吹を捧げることは出来ぬ。』
『我らの命に意味はあるのか、唯の樹のように命の循環すら出来ぬ我らに、生きる価値はあるのか。』
『語り継ごう、いや、語る口もないのか。』
『ならば見せよう、いや、見る目もないのか。』
過去に戻れば戻る程、自然は豊かになり、緑が溢れ、生命を肌で感じられた。
『死神に導かれた子達よ、哀れな少女を救って欲しい。』
『死神に導かれた子達よ、哀れな少女を救って欲しい。』
『死神に導かれた子達よ
ーーー哀れな化物を、救って欲しい。』
次回はまたまたお狂ちゃんターンです