残された少女は動く
久しぶりに忌諱登場します。
おかしいですね、人外と少女の物語なのに周りの方々の登場比率が多いですね←
「一言で言うなら高飛びだ。」
その言葉を聞いた瞬間、私は驚きを隠せなかった。
この世界が乙女ゲームとして成り立つことが出来なくなったことも、私の存在によって全てが狂いだした事も自覚済みだ。
けれど、物語の章が飛ぶなんてことがあるのだろうか?
本来、この台詞は物語の折り返し地点だ。要は後半へと続く!という文体が出てくる感じのあれだ。そして、この折り返し地点の後に真実解明編が始まる。
因みに何処に高飛びするかと言うと廃村だ。
え?高飛びの意味合いが何か違う?
気のせいでしょうね。
本来は廃村で華宮桜と攻略対象が愛を深め合うのだが、今、華宮桜はパーティーに行っている。帰って来てはない。
…まるで、物語の台本をビリビリに破いたら風に吹き飛ばされて、それでも何とか残った紙片で元の台本にしたいみたいだ。
それにしても、彼等は馬鹿なんでしょうか?
高飛び宣言して直ぐに、誰もいなくなった。
そう、誰もいなくなった。
私(容疑者)を置いて、誰もいなくなった。
「馬鹿なんでしょうか?」
思わず口にしてしまったが、後悔はしていない。監視期間は夏休みも含めるとか言ってませんでしたか?
けれど、風紀委員長、風紀副委員長、生徒会全てが学園内からいなくなったんだ。
ーーーこれほど、動きやすいものはない
保健室のベッドを降り、ドアを開けた。
恐らく風紀委員長から派遣された風紀委員を見て、微笑む。
さて、どうしましょうか。
ーーーーーー
緑溢れる咲良山頂上の屋敷に、突如暴風が襲った。
だか、屋敷には傷一つなく、緑に生い茂った木々だけが無残な姿となって倒れていた。
「………ナンで、此処ニいやガル。」
身長を見れば七歳前後ではあるが、可愛らしい顔立ちではなく、むしろ凛々しい。
年齢詐欺にも程があると、忌諱は嗤った。
「好きで来たと思うか?豚野郎。」
整った顔が忌諱を見た途端、忌々しそうに歪む。
「てめぇがいるから日本にはあんま来たくねえのによ、ゴミ野郎。」
「天鏡の為であって……」それ以降はブツブツ呟いて何を言っているのか分からない。
「天鏡だァ?」
四大古妖の中でも、あまり関わりのない奴の名前が出てきて少し驚く。いや、そもそも誰とも関わっていないが。
「『嵐がおこる。』だそうだ。、キモ野郎。」
…そんな短い言葉を聞かせるために態々日本に来たのか?
「伝えたからな、カス野郎。」
そう言って暴風と共に消えた亞蘭を睨みつけ、天鏡の言葉を噛み砕く。
……疫病神は、わらった。
次回は風紀委員長視点です。