咎人(7)
夏ですね、私は今日も元気にゴロゴロしてます
修道院昭道視点
「バレないと踏んでいましたのに…………」
「バレてしまいましたね。」と蒼蛇鱗らしからぬ笑顔を此方へむける、気持ち悪い、非常に気持ち悪い。
「…最初からバレることを踏んでただろう。」
「そのような事はございません。」
あまりにも嘘すぎる笑顔に等々寒気とサブイボがコラボし始めた。気持ち悪い、只々気持ち悪い。
「ま、この姿だと心の中で暴言を言われ続けるでしょうし、元に戻りますよ。」
そして俺が瞬きをした瞬間、蒼蛇鱗が黒い男に変わっていた。
「……………お前は!」
「お久しぶりです。」
その男には見覚えがあった。
いや、あるに決まっている、其奴は理事長代理として俺の家を訪れ、俺に兄さんの居場所を教えた……黒乃だった。
前から疑問ではあったが
ーーー此奴、何者だ?
此奴が理事長代理という事以外、何も知らない。
だが、此奴が異質という事は嫌でも分かった。
此奴は人なのか、守り人なのか、妖か
……何よりも
此奴は、何がしたいんだ?
此奴はあの時、お彼岸太夫を知りたいからと言って、俺の記憶の一部を奪っていった。
あの時は兄に会えるかもしれないと言う興奮で半ば我を忘れていたが、今思えばそれも可笑しい事だ。
『ふむ、では出血大サービスで、貴方の記憶の一部だけを貰いましょう。お彼岸太夫の顔と、兄と過ごした時間…この2つです。』
俺の記憶の一部に、兄と過ごした時間が含まれていた。
ーーー何故?
此奴は、お彼岸太夫について知りたいんだろう?
兄との時間に何の意味がある。
それなら、お彼岸太夫と過ごした時間を奪えばいい。
いや、そもそも
記憶を奪う妖など、いただろうか。
ならば、此奴は
「私への疑問が続々と浮き出ておりますが、今はどうでもいい。」
その言葉に微かな苛立ちを垣間見た。前髪で見えない目は、冷たさを帯びている様に見えた。
「私はね、これでも良い駒を選出したつもりなんですよ。」
「………?」
「それなのに、まさか1人がこんなにも早く、しかも自爆するなんて……腹立たしい事この上ないのですよ。」
「お前………何言って。」
「残り後2人…正直、あの娘は最後の切り札なんですよ。だから、貴方には頑張ってもらわないと。」
そう言ってニッコリと笑った黒乃に、得体の知れないナニカを覚えた。
それは、単純な感情のようで複雑な感情
「そして私は、貴方達を応援しましょう。」
それは疑心
「今、とある会議でこんな事が話し合われています。」
それは畏怖
「何故、誰も死なないのか…と。」
それは恐慌
「当たり前ですよね。マウスが何匹か死ぬ前提で実験していたのに
ーーー死なないなんて。」
それは憤怒
「死亡数0という7月上旬グラフに、不信感を抱いているのです。」
それは鬼胎
「……頭の良い風紀委員長さんなら、意味……分かりますよね?」
それを総称して、なんと呼ぶのだろう。
ーーーーーー
保健室には
ベッドで寝ている咲良田杏と、壁にもたれかかっている蒼蛇麟がいた。
「……さっき、お前のドッペルゲンガーから全て聞いた。」
「は?」
蒼蛇麟は蔑んだ目を此方に向ける。
だがドッペルゲンガーに会ったのは本当だからな。
「正直、聞きたいことは山程ある。…だが、今はそれどころではない。」
「………どういうことですか?」
「説明は後でする、とりあえず今は生徒会の奴ら全員集めろ、俺は咒を連れて行く。」
「説明は大事ですよ。」
「一言で言うなら高飛びだ。」
「はあ?」
『ああ、あともう一つ。』
『もうすぐ
ーーー理事長が帰って来ますよ?』
次回から新しい章‼︎
そろそろ生徒組の反撃ターンでしょうか