咎人
蒼蛇鱗の過去話はこのendでは出しません。
因みに生徒会長も書記の双子も咒君も出さない予定です。
見知らぬようで見知った天井を見たのはこれが初めてではない。サッカー部主将にボールをぶつけられたあの時以来のご対面だ。
あの後、私はどうしたのだろう。
………雪乃静に『お姉ちゃん』と呼ばれた。
それだけなら、そう………それだけなら、こんなに怖がる必要は無いのだ。
だけど、怖かったのだ。
あの目が、怖くて仕方がなかったのだ。
今思えば、初めて生徒会と対面した時、雪乃静は前髪で見えない筈の目をこちらに向け、私をじっと見ていた。
………虫酸が走るほど気持ち悪い視線、それは、私が前世で向けられた視線と同じものだった。
ーーー私を見ているようで、私を見ていない視線
それは
ーーー前世の母親の視線そのものだった。
母親にとって私は、男を縛る道具だった。
幼い頃から向けられる優しい眼差し、それは私では無く、いつだって男のものだった。その眼差しの奥にはいつだって男が潜んでいた。
そしてそれは、男と離婚するその時まで向けられていた。
幼いながらに分かってしまった。
…分からなければ良いものを、分からなければ幸せでいたものを
無邪気で馬鹿な子供でいれたら私は
………私は
「目が覚めましたか?」
ベッドのカーテンが開く音が聞こえると同時に、生徒会副会長 蒼蛇鱗は鱗の瞳を静かに煌めかせ、私を見る。
「……私は、どうして此処に?」
「貴方はよく倒れられる方ですね。」
話が全く噛み合わない。
「初めて会った時も倒れてましたね、御身体が脆弱なのしょうか?」
「そうかも、……しれませんね。」
とりあえず話を合わせる。
そもそも、どうして蒼蛇鱗が此処にいるのかも未だ分からない。
「因みに、貴方は静に首を絞められたんですよ。……覚えていませんか?」
「…………覚えて、いません。」
その言葉は嘘だと確信した、何故なら首を締めても私は倒れたりなどしないから。もう私の身体は物理的な攻撃が効かない。なら、私が倒れたのは、それ以外の力が加わったということだ。
「ショックで記憶が飛んでしまったのでしょう、少し休みなさい。」
そう言って蒼蛇鱗は私の額骨張った手を当て、熱を測る。
「おや、私の手より体温が低い方がいるとは……」
少し目を見開く蒼蛇鱗は、何を血迷ったか私の首筋に片手を添える。
いや、添えると言ったら聞こえはいいが、実際は
「あの、……何をして?」
「見てわかりませんか?脈を測っているんです。」
脈の測り方は三本の指を使うし、何より親指を使わない。少なくとも、こんな片手で首を絞めるような事はしない。
「…貴方は本当に悪女ですね。」
考えて欲しい、片手で脈を測られた……まあ、測られた後に悪女と呼ばれた女の気持ちを
地味に悲しい。
そんな私の考えなど知らず、蒼蛇鱗はより片手に力を加え、此方を見る。
凍えるような冷たい瞳は私を映さない、見えるのは瞳の奥の鱗だけだ。
「あのサッカー部主将の次は静ですか?随分と阿婆擦れな方です。」
その言葉に私は目を見開く。
まさか蒼蛇鱗がこんな風に私を見ていたとは思ってもみなかったのだ。
少しの沈黙、静寂を破ったのは、彼方だった。
「貴方は
ーーーお彼岸太夫を知っていますか?」
「お、彼岸……太夫?」
次回も蒼蛇鱗君のターン‼︎
最近、作者自身が設定を忘れてて怖い←