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哀れな女は(4)



書くことが、ありませんな←








死神の叉丸が男の世界に侵入した時には、静は闇に堕ちていた。






しゃがみこみ、手で耳を塞ぎ、涙を流しながらブツブツ、ブツブツと呪詛のように呟いている。







「誰が悪い、誰が悪い、姉さん?爺さん?婆さん?あの男?お彼岸太夫?姉さんを不幸にしたのは誰、姉さんを不幸に陥れたのは誰?姉さんを殺したのは誰?姉さんが殺されるのは何故?姉さんはどうしてお彼岸太夫になったの?姉さんはどうしてお彼岸太夫の仮面を被ったの?姉さんはどうして雪山を降りたの?姉さんはどうして雪山に帰ってきたの?姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは姉さんは…」



「………遅、かったか。」



「ええ、遅かったです。」





叉丸を煽るように嗤う黒い男

この止まった世界にいるのはこの3人だけ





「いい感じに壊れてくれましたよ。上々な手駒の出来上がりです。」



「…てめぇが坊に執着する理由が分からねぇ。」





死神は黒い男の首筋に大鎌をあてる。

だが男は怯えない、むしろ滑稽だとでも言うように嗤い続ける。





「捨て駒は必要ないんです。必要なのはそれなりの駒、だからあの雪女は駄目です、壊れてますから。」



「……いつからだ。」



「はい?」



「あの雪女が壊れたのはいつからだって聞いてんだよ…!」






嗤い続ける男の首が次第に赤くなる、垂れ流される血は止まることなく地に落ちてゆく。






「簡単な質問ですね。そんなの


ーーー初めからですよ。」






黒い男は鎌の刃を掴む。真っ赤な血が世界の色を染める。





「この子と出会う前から、あの雪女は壊れていました。この子に出逢ってから少しはマシになった時もありましたが、それも泡沫のような儚さでしたよ。」





その言葉に我を忘れていた静がピクリと反応した。





「もし、も、俺、が姉さん、の側から、離れ、なけ、れば、姉、さ、んはこんな、事に、なら、な、かっ、た…?」





それは黒い男の発している言葉とは全く関係のない仮定詞だった。





叉丸はその光景を苦虫を潰したような顔で見ていた、もしもを唱えたいのはこっちの方だ。…もしも俺があの男の企みに早く気付いていたら、坊の心が奈落の底に沈む事は無かっただろうか。





「もしもを唱え続けるのは人の悪い癖だよねぇ。」





震える声で叉丸は呟く。





「もしもを唱え続けるのは人の美徳ですよ。」





煽るように黒い男は嗤う。





「それを言って、なんの意味があるのかねぇ。」





それは叉丸にとって、己への問い掛けだった。





「なんの意味の無い妄想で自己を補っているんです。………そうですよね?」





なんとも正論で暴論を投げかけながら、黒い男は静にトドメを刺す。





「見てください。貴方の姉は火炙りにされていますよ。」





そう言って黒い男は静に変わり果てた姉を見せる。十字架は罪の象徴だった。





「生まれる事自体が罪な者と、生き続ける事自体が罪な者……、何方の罪が重いと思います?」





黒い男は笑みをより深め、静に問いかける。





「んなの、何方も同じだ。」




叉丸は静が答えを出す前に己の答えを導き出した。









黒い男の肩がピクリと震えた。



「…同じ事を言った方を知っています。







ーーー化物をカミサマだとほざく、哀れな女を。」









その言葉に叉丸は目を見開いた。










次回はどうしましょう

黒乃くん視点にしましょうか



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