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哀れな女は(3)



静君の闇落ち成功‼︎←






雪乃静視点




昔、……100年ほど前だっただろうか?

姉さんに十字架を見せてもらった事がある。

家にたまたまあったものらしい。とても古い代物だった。




十字架に磔られた男が酷く印象的で、姉さんに「ど、う、して…この人、磔、られ、て、る…?」と聞いてみたら、「ごめんね、そこまでは分からないの。けれど………」





ーーー罪を犯したから、罰せられているのかな?






……それなら






「ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!」







…それ、なら







「燃えろ!燃えちまえ!物の怪がぁ…!!!」



「夫を返してよおぉぉぉぉ!!」



「息子を返せえええええぇぇぇぇ!!」







姉さんは、罰を受けているの?







まるで十字架のように組み合わせた木材に手足を縛られ、下から直に炙られ、姉さんの美しい容姿も無残に爛れ






「ア”ア”ア”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!!」






姉さんは俺に気付かない、只々、熱で枯れた声で叫ぶだけだ。






怖い



怖い






その場に男は1人もいなかった。いるのは女だけ、それが返って恐怖を煽り立てる。






その中に、婆さんもいた。

婆さんは血走った目で姉さんを睨みつけながら、松明を燃やし、姉さんを炙る。姉さんはまるで蝋が溶けていくように、ドロドロに溶けていった。





その光景に脚が強張る、息が出来ない、心臓は震えているようだった。





辺りが雪女に、姉さんに殺意を一心に向ける中、突然





世界が、灰色に止まった。





「この惨劇を生み出したのは誰でしょうね?」





俺の背後から、聞き覚えのある声がした。

それは爺さん婆さんの家に突如現れた、全身真っ黒の異質な男だった。長い前髪、唯一見える口元はにっこりと微笑む。





「どこから、お話しましょうか。」





そう言って口元に人差し指を当てながら、首を傾げる。





「まず、雪化粧について、お話しましょうか?」





男は自分の歩幅で話を進める、その前に、この灰色の世界を、時が止まった世界を説明して欲しい。





「ああ、この世界?気にしないでください。時は止まっていませんよ。この術の説明は面倒なので省きに省きますが。」





どうやら、男は説明をする気が皆無らしい。





「貴方の姉は、雪化粧という能力を使用していました。ああ……別にこの能力、雪女は全員使ってますよ。」



「雪、化…粧……。」





その単語は聞き覚えがあった。確か、母さんの陰口の中に含まれていたものだ。





「はい、一言で言うなら《雪の仮面》です。雪女は己の顔を隠すために雪化粧を生み出しました。」



「な、んで……。」



「醜いからですよ、雪女の本来の姿は。だから隠すのです。」



「う、そ……。」



「幸い、貴方は彼方の血が強かったらしいですね。顔も大変整ってますし。……似てないのは唯一の救いか、それとも…。」





最後の言葉の意味は分からなかったが、ようするに俺は父親の血が強かったという事なんだろう。けれど、そんな事ありえるのだろうか。





「貴方に姉の記憶と、とある男の記憶を見せて差し上げましょう。」



「その記憶を見たらわかりますよ、この惨劇を生み出したモノが。」







男はそう言って、俺の口にナニカを入れた。






ーーーーーー





見たのは姉さんの悲しい記憶




見てしまったのは卑怯な男の最低な記憶




その記憶の中に登場するのは





姉さん



卑怯な最低の男



姉さんの今の仮面を作るきっかけになった男



そして、姉さんの仮面そっくりな女




…その女こそ






ーーーお彼岸太夫






「この惨劇を生み出したのは、誰でしたか?」





男はいつの間にか俺の目の前にいた。





「そ、んな、の……。」





あの、あの卑怯で最低な男にきまっている。





…けれど





「あの、男は………爺さん?」





特別似ていた訳ではなかった、だけど雰囲気が、纏う何かが、似ていた。





「そうですよ?貴方に温もりを教えて下さったお爺様です。」


「………」


「そして、貴方の姉を炙っているのは貴方に温もりを教えて下さったお婆様です。」





男は残酷に、無情に告げる。





「貴方は憎めますか?」





男は俺の肩を掴み更に笑みを深める。





「貴方は憎めますか?」



「…………」



「貴方は憎めますか?」



「貴方は憎めますか?」



「貴方は、貴方に温もりを与えたお爺様とお婆様を」






ーーー憎めますか?















「ねえ、よく考えて下さい。」



「お彼岸太夫さえ居なければ、この惨劇は起こらなかったのではないでしょうか?」


「お彼岸太夫が姉の堕胎の真実を告げなければ。」


「あの2人は、幸せな物語を紡げたのではないでしょうか?」






ーーーそう、思いませんか?









次回はさらなる真実

これで全ての物語は繋がる……筈‼︎←



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