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それはまるで(5)



なんだろう、ぬらちゃんごめん








ぬらりひょん視点





ーーー蠱毒






それは古代において用いられた虫を使った呪術のこと。蠱道こどう蠱術こじゅつ巫蠱ふこなどともいう






犬を使用した呪術である犬神、猫を使用した呪術である猫鬼などと並ぶ、動物を使った呪術の一種である。代表的な術式として「ヘビ、ムカデ、ゲジ、カエルなどの百虫を同じ容器で飼育し、互いに共食いさせ、勝ち残ったものが神霊となるためこれを祀る。この毒を採取して飲食物に混ぜ、人に害を加えたり、思い通りに福を得たり、富貴を図ったりする。人がこの毒に当たると、症状はさまざまであるが、「一定期間のうちにその人は大抵死ぬ。」と記載されている






古来より、呪術とは残酷で冷酷な、人の闇そのものを体現しているようなものばかりだ






蠱毒は言わば弱肉強食、強いものが生き残り弱いものが殺される、だが、外に出られた虫も結局は絶対的な強者ヒトに殺されるのだ。なんて非情、なんて無情










……だからこそ










この、妖だけの戦は、蠱毒の変と呼ばれるのだろう







子も親も関係なく




妻も夫も関係なく





容器も箱もない、だが、大きな箱庭エドの中で






食い合い、殺し合い、貪り合い







裏で手を回している鬼蜘蛛など露知らず





操り人形と成り果てている事など露知れず








…………








日が沈むその瞬間に






今日も妖どもは殺し合う








ーーーーーー






その女に出会ったのは、単なる偶然だったと言えよう





河川敷の下、顔を埋め泣いている女を見て





興味が湧いた





そして近付くにつれ、その興味は疑惑へと姿を変える






その女が、妖だと気付いたからだ






「そこのお嬢さん、泣いているのかの?」



「………っ!」





その言葉に反応した女は、顔をゆっくりとあげる






正直、見なければ良かったと思った






なんだろう、この気持ち






ああ、思い出した



遊郭で選んだ女の化粧落としの瞬間を見た気持ちだ






…なんで俺は、あの時あの場所でぬらりくらりしていたのだろう






……話がそれたか






とりあえず、あまりよろしくない顔をマジマジ見るのは可哀想だと思い、目を細めながらにっこりと笑う






「何か、悲しい事があったのかのぅ?」



「………か、れが…」





彼、とはもしかして恋仲の奴の事か?この顔で?






……物好きもいるもんだ




いや、意外と床上手なのかもしれん






「彼が、女、と…一緒に、い、て……」






浮気か、なんとも下手な






「とても、綺、麗な女、の子で……私、なんかじゃ、勝ち目の、ないような、………夜鷹、なのに…綺麗な、女の子で……!!」



「……?」






綺麗?夜鷹が?…わしは皺くちゃの婆さんしか見た事ないぞ?





「どう、したら良いの…?私、私、どう、したら…?」






そう言った女の足元から、ピキピキと不気味な音が聞こえた






それは見覚えのない能力…ではなかった







昔、いや、最近か?




俺は雪女と床に入ったことがある





その女は雪女であるのに子を成せず、ただ焦っていた






ーーーなんとしても子が欲しい



ーーーこんな惨めな思いもう嫌だ



ーーーお願い………ちょうだい、ちょうだい?






哀れな雪女、子種を一身に浴びながら




子を成せない哀れな雪女




子種も凍り、流るる涙すら凍り




本当に哀れで滑稽だった







…何故かって?




子を成す理由よ





子を成す理由が虚栄心からなど





仮に成したとしても、子が可哀想だ





………話がそれたか






「なら、綺麗になれば良かろう?」



「……え?」






それは、この雪女にとって一番酷な話だと分かっていた




だが、あえて言った




「主には、その力があるではないか。







………男を馬鹿にしているようような力が。」





その言葉に、雪女は目を見開く





「…なあに、わしが綺麗な顔を教えてやろう。」







そう言いながら、雪女の顎を上にし、嘲笑いながら







『私は…、蝶も蛾も、綺麗だと思う。

だって、必死に生きている姿は、何だって綺麗だと思うから。

だって、何かを渇望として生きている姿は、とても綺麗だと思うから。

だって、踏まれて汚され続けた、たんぽぽは、それでも綺麗だと思えるように、蝶と蛾だって、綺麗、でしょ…?』




『貴方はとても、残酷な方ね。』












思い出したのは、あの子の顔だった














次回は元の視点に戻る…筈!!


蠱毒の説明はWikipediaです




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