夢現(6)
あー、弟欲しいー
切実に弟欲しいー
雪乃静視点
「おーい、坊主ー、狩に出掛けるぞー」
「今、行く……」
「坊主、雨漏れ酷いから屋根上見てくれないかい?」
「ん、分かっ、た。」
……俺は確か、姉さんが村で何をしているか調べるために雪山を下り、この村までやって来たのだが、どうしよう……凄く馴染んでいる。
俺が今住んでいる住処は……えと、趣深い素晴らしい所とでも言おう。察せない方は《歴史ある建造物》と言えば嫌でも察せるはずだ。それでも察せなかった場合は、その純粋さを生涯持ち続けて欲しい。
村では少し離れている場所に佇んでいて、その古民家の背景とでも言うかのように雪山が存在している。
この爺さん婆さんの家に居候してから早3週間、最初は早くここから出て行きたかった。だけど、なんというか、この人たちは凄くあったかいのだ。
心がぽかぽかして、まるで恋煩いに身体がおかされている気分だ。恋なんてした事ないけど
あったかい食事もあったかいお風呂も最初は受け付けなかった。雪山のあの古民家ではいつだって冷たいごはんを食べていた。お風呂だって水風呂だ。
…それも今では慣れてしまった。熱々のお味噌汁も雑炊も食べれる。熱々のお風呂を爺さんと一緒に入っている。
爺さん婆さんの家には子供のサイズの着物が複数あった。多分、爺さん婆さんの子供のものだろう。
その着物はぴったりで………嘘、袖と裾が地味に長かったです。
子供は今は何処にいるのだろうか?爺さん婆さんの歳を考えれば、もういい年だと思うんだけど、爺さんが言うにはまだお嫁さんを貰っていないらしい。婆さんが言うには何処かの女狐に夢中らしい。どんな狐なのだろう?と婆さんに聞いたら、凄く爆笑して転げ回ってギックリ腰になった。………ざまあ。
けど、それが悔しくて俺は知識を得る事に夢中になったんだ。
けど、この村には本も少なかったし、寺小屋も無かったから、近所の賢い御老人の方に色々教えて貰った。文字とか、女の人についてとか、女の人をおとすテクニックとか、どんな女の人がお嫁さんにぴったりとか
要は、昔は大層遊んでたお方って事だ。
「おー、また来たか!」
「また、来た…」
「今日はな、坊の為に道具を作ったんだ。」
そう言って御老人はこんにゃく(真ん中が切ってある)と、とても愉快な形をした棒を持って来た。俺は察しがとても良かったのでとりあえずその場でこんにゃくを棒でぐちゃぐちゃにした。
爺は凄く青褪めていた。
「坊、女はな。だいじーにだいじーにしなきゃ、すぐに壊れるんだぞ。」
「精、神的、に、脆、いの、は…男だ…けど、ね。」
「そうだなー。それには一理ある。だが、このご時世、男尊女卑がつえー、肩身がせめーのは間違いなく女だ。なら俺たちは何をしなきゃならねー?それはな、蝶よ花よとなー。」
「そ、れ、も、う何、回も聞、いた。」
「お、そうかー?まあ、最近わけー奴らはなんだ?夜鷹の女に夢中らしいからなー、ほどほどにしとけって感じだが……」
「夜…鷹……?」
その言葉の意味は理解している。《下等の売春婦》、けどそれは、江戸の城下町辺りにいるんじゃ無いのか?
「それがよー、その女が自分は夜鷹だって言ってるらしくてなー。けど、夜鷹にしてはえろー別嬪さんでなー。あ、坊が居候してる爺さん婆さんの息子共も貢いでるらしいなー。」
「……へえ。」
あの時は大して気にはしてなかった。興味も無かった。
あの光景を、見るまでは
「お姉、ちゃん……?」
次回はなんだろう、最近次回予告と本編が合わなくなってきたんで、ちょっと軌道修正入りまーす。
今のところは静君の幸せの終わり書こかなと思っておりまする。