其れは必然だった(3)
黒乃君登場します!
(視点だとは言っていない)
修道院 昭道視点
6つの頃から天才だと言われてきた
俺の霊力は平凡だったが、俺の頭は天才だったらしい
俺は霊力が平凡の代わりに、人の何十倍も努力してきた
そんな俺を天才と呼ぶのは間違いではないかと偶に思うが
一々訂正するつもりはない
そして、俺には兄がいる
……らしい
そして兄は、幼い頃に破門されたらしい。
修道院の一族にとって兄の話は禁句、いや、地雷だった。
俺が小さい頃、兄は父を殺したらしい。
…それは無残な方法で
腹に鉛筆をさし弱らせたところで式神に体を食わせた……と言われている。
だが、その瞬間を目撃した見習いは、腹に鉛筆をさした所しか見ていないらしい。だから、真相は闇の中だ。
一番不可解なのは
父の首が、今でも見つからない事だ。
それも兄がやった。兄は父を憎んでいたから、弟と比較され続けた兄が父を恨んで怨んで殺したのだ。
そう、母さんが語る。
母さんは優しい。母さんは俺を褒めてくれる。
…けど、違和感を感じてしまうのだ。
俺には、小さい頃の…6つ以前の記憶が無い。
医者が言うには、父を失ったショックだろうと
………
何か、違う気がする。
母さんは優しい。母さんは俺を褒めてくれる。
だけど、何か違う。何かが、違うのだ。
たまに夢に出るあの女は、哀しそうに口元を笑む女は誰だ?
いや、それだけじゃない。
それだけじゃない筈だ。
お前は誰なんだ?
『ーーに手を出すんじゃねぇ!!ーーは俺の大切な……!!』
お前は、誰なんだ?
ーーーーーー
「失礼致します。」
「…ああ。」
「黒妖学園理事長代理の方が、お見えになってます。」
「黒妖学園……?」
あの妖と人と守り人の共存を掲げる馬鹿げた学園か、と思いながら読みかけてた本を閉じ、その代理がいるであろう客室に行こうと腰を上げる。
「あ、昭道様、実はその……」
「客室に私はおりませんから、行っても無駄かと」
「お前……」
召使の後ろにヒョコリと立っていた男は、薄気味悪い口をニヤリとさせる。
「お前が、黒妖学園の代理か?」
「はい。私は黒妖学園理事長の糞じじい……ではなく濡螺様の代理
ーーー黒乃でございます。」
ドクッ
…なんだ?
ドクッ…ドクッ…
『…から、…の子にーーと言う…を…た…です。』
『…にも……れない、…方は……そのものだ。という………めて…』
…誰だ?俺はこの言葉を誰に言われた?
「………クスッ」
「……?」
ワザとらしい笑みを浮かべながら、代理の男は長ったらしい前髪の隙間から俺を見る。
「貴方はとても酷いお方だ。」
初対面の筈なのにいきなり「酷い奴。」と言われて怒らない人間はいるだろうか?
「そのようなお顔をなさらないで下さい。綺麗なお顔が台無しですよ?」
「ほぼお前のせいだがな。」
「けど、貴方が酷いお方…と言うのは本当の事ですよ?」
「…俺とお前は初対面の筈だが?」
俺の言葉を無視し、男は話を進める。
「だって、酷いと思いませんか?
ーーー貴方を守った兄を思いだせず、貴方を利用した女を思い出そうとしてる。」
「とっても、酷いと思いません?」とくすくすくすと笑う男
だが、その言葉の意味を俺は理解出来なかった。
《俺を利用した女》の方ではなく
《俺を守った兄》という言葉だ。
「兄が…俺を、守っ、た…?」
「ええ、その通りです。貴方の兄は、貴方を唯一守ったお方です。」
「なら、なんで…お前がそれを知っているんだ?」
男はノーコメントとでも言うようにわざとらしく首を横にふる。
「そんな事より、私は貴方を利用した女…お彼岸太夫について知りたいのです。」
「お彼岸、太夫…?」
その名前を俺は何処かで聞いた事がある。…確か、四大古妖に関わっている謎の女だった筈だ。
「私は、貴方の封印された記憶を頂戴したい。」
「…俺にメリットが無い。」
「メリット…になるかは分かりませんが、そうですね。私に記憶を渡してもらえれば
ーーー貴方の兄の居場所を教えます。」
「っ!」
俺はその言葉に目を見開く。…兄の居場所なんて、誰も教えてくれない。いや、もしかしたら誰も知らないのかもしれない。…正直に言うと、生きているかさえ分からないのだ。
例え、俺の記憶が戻ったとしても、俺が兄の居場所を見つける確率は極めて低い。
けれど、此処で、この男の言う通り、記憶を渡せば…俺は、昔の記憶を2度と思い出せなくなる。
「ふむ、では出血大サービスで、貴方の記憶の一部だけを貰いましょう。お彼岸太夫の顔と、兄と過ごした時間…この2つです。」
「さて、貴方はどうしますか?」
今回は黒乃君の性格の悪さが出ていました。作者的に←
次回は黒乃くん視点かな?