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其れは必然だった



最近人生について考えてる(嘘)







修道院 道成視点






霧の雨が降っている。

霧雨が降っている。






教室の窓から見える雨は透明で、グラウンドの水溜りが無ければ見えないような、そんな霧雨だった。





俺はそんな事関係なしに窓を開け、煙草に火を付ける。





「先生、資料作り終えましたよ。」





放課後の教室にいる少女は、何処か不機嫌そうな顔をして作業を進める。だが、そんな事関係なしに一つ一つの仕草に惹かれるような、大層な美人だ。きっと、あの男の付き人に立候補しなければ今頃、玉の輿真っしぐらだった筈だ。





まあ、俺が溜まりに溜まった俺の仕事を押し付けたせいで、その男の世話が出来ないから苛ついている訳だが。





「涼風、もう終わったのか。」



「はい、ウチは一刻も早くあるじ様の御夕食を作りたいんです。…そもそも、ウチやなくて先生のハーレムのうちの誰かを使えばよろしいのではないでしょか?」



「んな事言うなよ。俺は涼風に会えて嬉しいぞ。」



「寝言は寝ても覚めても言わんといて下さい。寒気がする。」



「ひでぇな、おい。」





雨は降り続ける。曇天の空は太陽を隠す。まるで太陽を独り占めするかのように、自分のものだけにするように。





「そう言えばなんで、かごめ唄を唄わなかったんですか?」



「ん?」



「しらばっくれないで下さい、女の子達、がっかりしておりましたよ。」



「ああ…」






涼風が言ったそれは、放課後の出来事だった。白妖学園の女子生徒の間で《かごめ唄の呪い》が流行っているのは知っていた。




その内容を知っていた俺は、俺自身がしたら危険だと察知し、できるだけその話題から避けていたのだが、捕まってしまったと言うわけだ。






「別にええやないですか。減るもんじゃないし。」



「あー、別に占いとかだったらしてたんだが、何分、かごめ唄の呪い……だからなぁ。」



「…もしかして、呪いはノロイという文字に変換出来るから危険やと?」



「半分正解だな。残り半分は…俺が霊力を持っているから、かね。」






その言葉に何処か「ああ、そゆこと。」と顔に書いた涼風に俺はニヤリと笑う。






「人魚の唄は人々の感情を揺さぶる。恋の唄なら相手を惑わせ、哀しい唄なら相手の涙を誘い……死の唄なら相手を死に追いやる。…それは人魚の妖力が原因だ。例え陰陽師が唄を唄ったとしても、何も無いだろうな。」



「けど、先生の霊力はあまりにも莫大だった。」



「ああ、だから唄……俺の口から吐き出された言葉は言霊となり、周りに影響を与える。まあ、唄は感情を入れ込みやすいから特にな。」



「へえ、なら…もし先生がウチに[オカサレロ]って言えば、ウチはそれに従うんでしょか?」



「お前なぁ…」





その言葉に眉をしかめれば、涼風は女子高校生とは思えない笑みを浮かべながら目を細める。





「あらあら、やっと化けの皮が剥がれた。待ちくたびれましたわ。」





そう言って面白そうにくすくす笑う涼風を見て、侮れないと改めて思う。





「あんたとウチは共犯者、お互いの願いを叶える為に薬指絡めた中でありんしょ?」





小指を絡めないあたりが、此奴らしいと思う。まあ、当たり前か。此奴にとって結婚を誓う薬指よりも約束の指の方が、何よりも大切なのだ。





「…そうだな、俺はお前ほどの女見たことねぇよ。」





皮肉を込めてそう言い放っても、涼風は笑って受け流す。





「褒め言葉として受け取りましょ。別に、あちきはあんたの過去を掻き出すつもりなんてないりゃんす。」





そう言っているが、涼風はなんとなく察しがついているのだろう。書類に目を通し欠伸をかく。





「俺だって自分語りなんて洒落たことするつもりねぇよ。人も妖も多かれ少なかれ背負ってんだ。それを語るのは同情をひくためか、自分を知ってもらいたいかの何方かだ。」



「己を知って欲しいと思わないりゃんす?」



「思わねぇよ。思ってても…」








『兄さん……なんですか?』



『俺、記憶がないんです。』



『兄さんは、落ちこぼれだから要らない子だと…母から言われて』



『けど、落ちこぼれとか、そんなの関係なくて…』



『俺はっ……兄さんに会いたくて…!』









「思ってても、絶対に言わねぇ




舌を噛み千切っても言わねぇ













それが、唯一無二アイツを守るためだ」















次回⁇そんなの分かってるはずさ

お兄ちゃんの話はまだ終わらない(キリッ




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