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其れは偶然だったのか(3)



みなさん、嫌いな人はいますか?

作者は基本的に興味あるか無いかで生活しているので嫌いな奴はいません。多分←

前回の後書きで昭道の兄ちゃんとお狂ちゃんは同族嫌悪していると書いていますが、どちらかと言えばお兄ちゃんがお狂ちゃんの事を一方的に嫌っています。

こんなヤンデレ小説でもお狂ちゃんを好きにならないキャラが1人でもいればいいと思うんです(震声)






修道院 道成視点




「…お前の言う通りだよ。」




女を真っ直ぐ見つめ、俺は認める。






昭道が俺の唯一無二カミサマだと言うことを






「俺は、守りたいだけなんだよ…。。けど、誰も俺の願いを聞いてくれねぇ。」



「……貴方の親も?」



「ああ、そうだ。だから俺は……」







「父親を刺した?」







「………え?」



「憎しみのあまり、父親を刺した?それとも、計画的に?」



「な、んで……その事…!」



「……どうであれ、貴方には感謝しているんです。」







ーーー弱った陰陽師を殺めるのは、簡単な事ですから







その言葉を聞いた瞬間、ゴトッと、何か重い物が落ちた音が聞こえた。俺はその音ではじめて、女の足元のソレに気付いた。

女はまるで手毬を弄ぶように、コロコロ、コロコロと足の爪先でソレを弄ぶ。






泥に塗れた父親の首は、余りにも汚く醜く見えた。






「お、前……、まさか最初からそれが目的で…!」





女は目を細め、人間臭く、可笑しそうに笑う。





「………まさか、あの子の心に限界がきたのも偶然、あの子がこの山まで来たのも偶然、あの子が私に懐いたのも偶然、あの子が山の奥深くで彷徨ったのも偶然、あの子が……貴方に救われたのは……」





沈黙が続いた後、女は首をコテッと傾け、小指を唇に当てる。






「偶然?」






その言葉に俺は身の毛もよだつ恐怖に見舞われた。この女の言葉は毒だ。何が正しくて何が間違ってるのか、何が偶然で何が必然か、何が正義で何が悪か、何もかもを狂わせる。何も考えさせなくする。






俺が昭道を探したのは紛れもなく必然だ、だって俺は家を出てから何日間、昭道を探し彷徨った。足に感覚が無くなるほど、何もない胃から吐き気を催すほど、俺は当てもなく馬鹿なガキらしく歩き続けた。







けれど、昭道を救えたのは……?







ああ駄目だ。これ以上考えるな、これ以上考えたらあの女の思うツボだ。頭がクラクラする。きもちわるい。






「私は、旦那様の命ではなく、私の意思でその子を救いました。」




ーーーですが、それもここまでのようです。






「ごめんなさい。私は……旦那様の命に背く事は出来ない。」









「私の唯一無二カミサマは、旦那様なんです。」









その言葉を聞く前に俺は走った。昭道を咄嗟におぶり、死ぬ気で山道を下りる。





痛みなんて構ってられなかった。皮肉な事に俺はあの女の背後に続く道から何かが追ってくることに気が付いた。





あの女とは違う気配、あの女以上に気味が悪く気色悪い存在。あの女には感じられなかった血の臭い。その気配から臭ってきた生臭いナニか。





あの女は隠そうとしたのだが、自分で言うのもなんだが俺には才能がある。






親父の霊力の残りカスがどちらにあるのかなんて、嫌でも分かってしまったのだ。





数少ない情報で、嫌という程……理解できた。





あの女のカミサマが、俺たちを殺そうとしている。






そしてそれを、あの女が警告したのだ。






自分のカミサマに嘘を吐けないからせめて


カミサマから遠ざけるように仕向けたのだ。


昭道はあの女に絶対的な信頼を寄せているから


警戒している俺を煽って


俺たちを助けようとしたのだ。






「くそっ………!!」






《コロセ、コロセ》



《ソイツラヲ、コロセ》



《ソイツラ、アノオトコト、オナジニオイ》



《コロセ、コロセ》





だが、皮肉な事に俺達を殺そうとするのはあの女のカミサマだけじゃ無かった。さっきまで昭道を襲っていた蜘蛛は呪詛のような奇声を発し、俺たちを殺すためだけに追ってくる。





…本当は、怖くて怖くて仕方ない。蜘蛛の奇声は徐々に大きく、より鮮明に脳を犯す。






《アノオトコ、トジコメタ》



《アノオトコ、テゴメニシヨウト》



《アノオトコ、ダレニコロサレタ》



《オレ、シッテル》






《クロノ、クロノ》






蜘蛛が何を言ってるか分からない。ただ、俺は『アノオトコ』と同じ匂いをしているらしい。…とんだとばっちりだ。






ーーーいっそのこと俺が囮になって、蜘蛛に喰われたら






そしたら、昭道は助かるのではないか?




だけど、昭道は気を失っている…





息が苦しい、息が出来ない、肺が潰れそうだ。





自然と、涙が止まらない。





「……ん。」





身体が揺さぶられた所為か、昭道が重い瞼を開けるように目を覚ます。






「お、まえは……」



「お前…じゃ、ねぇ……!!ケホッ…お兄さまだ。」



「…おにいた……にーさん。」



「別にっ…!お兄たまでも良いぞっ…!ゴホッ」



「…にーちゃん?此処は……」



「大丈夫、大丈夫だから…」



「にーちゃん…?」



「昭道は、俺が守るから…!」



「あ、き…みち?」






昭道はコテンとした表情で俺を見る。ああ、そうだ。昭道は自分の名前を知らないのだ。





「にーちゃん、昭道って…俺の、名前?」



「……そうだ。」



「……そっか。…良かった。」



「良い、名前で…」





昭道は幸せそうに笑う。俺は其れを見て不覚にも泣いてしまいそうだった。其れは、昭道が俺に見せた初めての笑顔だった。





「…にーちゃん、とおりゃんせ歌って。」



「え?とおりゃんせ…?」



「ん、もし、何かあったら、とおりゃんせを歌ってって……」






「お狂が…」






お狂、それは多分あの女の名前だろう

昭道はやっぱりあの女を信頼している

あの女が俺たちを助けようとしたのは事実だ

けれど、…あの女の言ったことを信じて良いのだろうか?





……いや、悩んでいる暇など無いのだ。



信じて良い、ではなく






信じるしか、出来ないのだ。







とーりゃんせ



とーりゃんせ



こーこはどーこの



ほそみちじゃ







《テンジン、サマノ》



《ホソミチジャ》







「…っ?!」




俺が唄っている途中に、蜘蛛の様子が変わる。


追ってきた蜘蛛は散り散りに唄う。







…ちょーっととおしてくだしゃんせ







《ゴヨウノナイモノ》



《トオシャセヌ》






このこのななつのおいわいに



おふだをおさめにまいります






その言葉を聞いた瞬間、蜘蛛は姿を消す。

だが、この唄にはまだ続きがあった筈だ。





確か、歌詞は……






「にーちゃん…?」






ああ、駄目だ。蜘蛛が姿を消した今のうちに、昭道と早く山から下りなくちゃ…







徐々に痛みを取り戻りた足を引きずる様に、俺は昭道と一緒に山を下りた。









次回は過去編ではなく、成長したお兄ちゃんが出ます。それとあの女の子も出ます。




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