其れは偶然だったのか
やべえ、昭道の過去に力入れ過ぎてる(震声)
このままじゃお狂ちゃんの過去トンデモ長くなるのでは…‼︎⁇
て、てへぺろ☆
???視点
昭道が地面に倒れた後、蜘蛛はさっきまでの悍ましい巨大化が嘘のように散らばり、山へ帰って行く。
だが、1匹の蜘蛛は他の蜘蛛と正反対の方向に向かった。俺は昭道を守るように背中に隠し、その方向を見やる。
蜘蛛は、いつからいたか分からない女の肩に登り、可愛らしいガラガラ声で『キュウ…』と切なげに鳴く。
見上げると、その女はワラった。
その女の姿は綺麗だった。
だが、それ以上にーーー俺はその女に畏怖した。
その女を見れば見る程、俺は心の奥の汚く醜いモノに
、触れられる気分に陥られる。
そんな俺の表情を見て、女はまた笑う。女は、…また微笑った。女は…嗤、った…?
「この子の名前、《昭道》って言うんですね。」
そう言って女は笑う。それは嬉しそうに、まるで我が子に名前を授けた母親のように
俺はその一つ一つの動作に動悸が上がる。それが良い意味のモノだったら、どんなに良かったのだろう。
「貴方の登場で動転し、気付いていませんでしたが…」
「あ、んた…ナニ⁇」
「何?私は……何、でしょうね?」
「あんた……」
言葉が出てこない。怖くて怖くて仕方がない。けど、昭道だけは守らなくちゃ、昭道だけは…
「貴方は…私と同種ですね。」
「……は?」
「だって…貴方にとって、その子は《カミサマ》なんでしょう?」
「何…言ってんだよ、彼奴は、俺の大切な弟だ。」
「知ってますよ。けど《カミサマ》でしょう?」
「あんた、…何言ってんの?」
「…貴方は、あの子に依存して、あの子に縋って、あの子の為に生きたくて、あの子を幸せにしたくて、…そんな目をしてますよ。」
「………」
「けどね、それって…自分1人では生きていけない。自分の為に生きれない。自分を愛せない。自分なんてどうでもいい。…自分の唯一無二さえいれば、それで良い。」
「……」
否定出来なかった……俺にはもう、昭道しかいなかった。
俺は修道院という一族に生まれた。
修道院はそこまで古い一族ではない。もとは明治の混沌とした時期、居場所をなくし職を失った武士の為に作られた駆け込み寺だった。
そんな一族が、ここまで大きなものとなったのは、初代が使っていたとされる謎に包まれた無数の巻物と、先代たちの知恵と才能、人を扱う能力、そして…利己的な考え方のおかげだろう。
そんな一族に、俺は《鬼才》として生まれた。
一族は俺を可愛がってくれた。
特に、俺に術を教えてくれる親父と俺に期待してくれるお袋、俺は2人が大好きだった。
そんなある日、俺に弟が出来た。
名前は昭道、俺が名付けたのだ。俺と同じ“道”という言葉を名前につけたかったのだ。
お袋は「良い名前ですね。」と褒めてくれた。
弟は生まれて直ぐに、霊力検査を受けた。
…今思えばそれが、俺たち兄弟の悪夢の始まりだった。
ーーーーーー
「なあ、お袋……昭道は?」
「………」
「俺な!!昭道を抱っこしてみたい!なあ…駄目か?」
「………」
「勉強は嫌いだけど、俺、兄ちゃんになるんだから、学校の勉強も、術の勉強も、昭道に教えられるように頑張ん「ねぇ、道成?」…どうした?お袋…」
「昭道って……だあれ?」
「………え?」
お袋は、昭道の存在を無かったものにした。
「親父!!!」
「…どうした?」
「昭道っ…!!昭道は何処だよ!?」
「あぁ……アレか、アレなら離れにやった。」
「離れって…なんでそんなとこに…!」
「なんでって、ああ、お前は知らなかったのか。アレの霊力は平凡、突出した才能も無かった。…もう必要ない。」
「…………何、言って。」
「幸い、お前がいるからな。何、殺す訳じゃあない。義務教育が終わるまでは育てるさ。」
「…………」
親父は、あまりにも利己的だった。
昭道は、決して才能が無い訳では無かった。ただ、霊力の量が平凡だった…だけだった。だが、一族の後継ぎに凡才はいらなかった。
俺は何度も昭道に会おうとした。何度も離れに忍び込んだ。何度も何度も何度も何度も
けれど、親父もお袋も一族の奴らも、俺と昭道を会わせようとしなかった。
分からなかった、解らなかった、なんで、俺と昭道を会わせようとしないのか、親父は「時間の無駄だ。」と突っぱねた。お袋は何も言わなかった。
俺の行動に痺れを切らした親父は、俺を母屋の一室に閉じ込めた。母屋は全て和室だから、施錠なんて出来ないと、俺は過信していた。
親父は、障子に術を掛けていた。俺を出さない為に、俺を昭道に会わせない為に、俺を閉じ込めた。
食事も与えられた。寝床だってある。便所だって、風呂だってある。周りには沢山の巻物が、俺を見下ろしている。
学校では、俺は病気で療養しているとホラを吹いているらしい。
なんでだろう。どうして俺は昭道に会えないのだろう。昭道に会いたい、会いたい会いたい。俺の思いは届かない。声は術で遮られた。
…なんで会わせてくれない?
俺の疑問は咆哮となり…いつしか、一族への怒りに変わっていった。
次回は言わなくても分かるはずだ←