死神の初恋(2)
皆さんは夏をどの様にお過ごしですか?
作者はインドア派の鏡のような生活を送っています。
最近新しい連載を書いてて思った事は、作者エロティック好きですね。ははっ、今頃です←
叉丸視点
少女とぽんちゃんと過ごして早2年が過ぎた。
俺にとって2年なんざ人の1秒よりも実感が無かったのだが、少女とぽんちゃんと過ごした日々は今でも鮮明に覚えている。
少女とぽんちゃんと花占いというものをした。
ぽんちゃんはその頃はもう知能は人同等となり、狸らしからぬ事をしでかしていたが、少し?抜けている少女はのほほんと眺めていた。
ぽんちゃんが花占いで、恐らく少女が自分の事を好きか嫌いか占ったのだろう。
好きだったら『ぽん!』嫌いだったら『ぽ〜ん…』と喜怒哀楽を鳴き声に現し、花占いをした。
最後の花びらが散った時、ぽんちゃんは『ぽ〜ん…』とそれはそれは悲しそうに鳴いたが、少女が花びらの茎を空に投げ、「ぽん!!」と悪戯っ子のように笑った。
菜の花が綺麗に咲くものだから、俺は菜の花の花言葉をつい口から零した。
「《小さな幸せ》」
「?小さな幸せ……」
「菜の花の花言葉だ、他にもごちゃごちゃあるが、俺はこれが1番だと思っている。」
「……小さな、幸せ」
この言葉を聞いて少女はジッと黙ったまま、固まったまま、何かを考えている。
「………私の幸せは、すごく、すごく大きいですよ!!」
そう言って満面の笑みを浮かべる少女は、ぽんちゃんを人形のようにぎゅーっとする。少し苦しそうに『ぽんぅ……』と鳴くぽんちゃんも実は満更では無さそうに頬を擦り寄せる。
今思えば、少女の幸せはカミサマが自分の願いを叶えてくれているからか、それとも俺とぽんちゃんと過ごした僅かな時間か……一体、どっちなのだろうか。
「こほっ……!」
「おい、大丈夫か…?」
「大丈夫、です…。歳、ですかね?」
「お前が歳だったら俺と忌諱はどうなんだよ。」
「長老です。」
「真顔で言うでない。…地味に嬉しいがな。」
俺たちのやり取りを見て何処かホッとしているぽんちゃん。
俺は信じて疑わなかった。俺の小さな幸せは、こんな早く終わってしまうとは、思っていなかったのだ。
都で流行り病が広がっていたのは聞いていた。もう少ししたら俺の出番だと考えてはいた。
死神は、言わば通り名だ。
本当の死神ではない。そもそも、本当の死〈神〉などいるのだろうか?
俺はただ魂を食った事から、俺が全てのモノの命の形が見える事から
俺は死神と呼ばれ続けた。
俺と忌諱は似た者同士だ。
奪う事しかできない。殺す事しかできない。
だからーーー
生き返らせる事など、出来るわけないのだ。
ーーーーーー
冬の寒い季節、菜の花は弱々しくも咲いていた。
少女はいなかった。
そこにいるのは、ぽんちゃんだけだった。
そして、少女の気配が、少女の息吹が、感じられない。
俺はぽんちゃんに此処にいろと言い、忌諱のいる屋敷へと向かった。
忌諱の屋敷は、忌諱の…厄病神の気が充満して純粋に気持ちが悪かった。それでも、此処に少女がいるはずなのだ。なんの根拠もないのに、俺は確信していた。
だが、心の何処かで…此処にいるなと心臓が騒ぎ立てる。お願いだから、此処にいないでくれと
此処に少女がいると言うことは
少女はもう………
「ナンで…テメェが此処にイる…?叉丸。」
「忌………諱。」
「俺は今忙シイんダヨ、此奴を……テメェには関係ェねえカ。…キヒヒヒヒ」
見たくないものを………見てしまった。忌諱を見たくなかった訳ではない。忌諱が大事そうに抱き抱えている……
少女、だったモノだ。
ーーーーーー
ぽーんと、不穏な空気を察したぽんちゃんは悲しそうに鳴く。此処に少女がいれば、ぽんちゃんを安心させるように頭を撫でてやるのだろう。だが、もう少女はいない。
「…ぽんちゃん、もういないんだ。」
『ぽーん?』
「ぽんちゃん……彼奴は、もういないんだよ…」
『ぽーん……?』
ぽんちゃんは心の何処かで分かっているのだ。…それでも、信じたくないから、信じられないから
俺を、見つめるんだ。
「彼奴は………死んじまったんだよ!!」
ああ、何が《小さな幸せ》だ。
俺にとっては余りにもーー過ぎたる幸せだったのだ。
「なあ、……」
少女の名を呼ぼうとして…俺は気付く。
少女の名が………分からない
いや、忌諱は少女の事を名で呼ばなかった。つまりーー少女には名がなかったのだ。
それは俺に追い打ちをかけるように
それは俺の心を蝕むように
俺は只々、ぽんちゃんを抱き締める事しかできなかった。
次回も死神さんターイム‼︎
これしかネタバレできなーい‼︎