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それは悲劇(2)前編

一言言わせてください。


続きが思い浮かばない。orz



そもそも何故、お狂が黒妖学園に入学する事になったのか、それは2週間前に遡る。



お狂は咲良山の屋敷でこの70年間、平和に暮らしていた。忌諱が山に登った人間を食ったり、忌諱が何処か遠い地の人間を拐って食ったり、豚、、、のような人間を食って吐いたり、客観的に見たら異常としか言えないが、お狂にとって日常的な動作を、行動を繰り返し続けていた。






ーーーこの山にあの男が登ってくるその時まで






ーーーーーー




月のない新月に、その男はやって来た。




その日、お狂は月が無いのに月見酒をすると言った傍若無人な忌諱の為に、台所で日本酒を用意していた。

昔、異国の地の《ワイン》や《カクテル》やら、色々試したのだが、顔を顰めて瓶ごと破壊したのが記憶に新しい。

その時捕まっていた人間が瓶に直撃して痛々しい姿で死んでしまったので、処理に困ったのも記憶に新しい。



「まぁ、結局のところ、お酒のつまみにしたのですが…」



「美味しい、のだろうか…?」と思わず疑ってしまう。

人の臓物や肉を食べたことないお狂にとって、人を料理するのは未知の領域なのだ。何より味見と称して人を食べるのは、妖でないお狂には何年経っても共食い以外の何者でもなかった為、如何しても食べれないし、食べるつもりもない。


それに人をどう調理すれば良いのかさえ分からずあたふたしていたあの頃に比べたら成長したはずだ。


「飯がマズい」と机ごと壊された頃と比べれば成長したはずだ。


「今でも、ご飯不味かったら如何しましょう…」





つい本音を出してしまい、思わず溜息を吐いた。





「いや、美味いぞ、この飯」


「え…?っ、ありがとうございます…!」


「うんうん、最近の妖は人肉離れが著しくてのぅ、人を調理する者が激減して久しく食べておらんかった。わしは生は好かん。」


「まぁ、平和な世の中になりましたからね。」


「妖の中でもべじたりあんとやらが流行っとってのぉ、時代の変化が身に染みるわ」


「へぇ、最近の若い方々はべじたりあんなのですか、…妖が、べじたりあん…」




…時代は流れる。時計の針が回り続けるように、日の本の争いが終わった後の平和。その平和が過ぎ去ったのは他でもない戦争のせいだった。しかし、その戦争も終わり、また訪れた平和。激動といって良い人生だったと染み染みお狂は思った。




日本酒の用意が終わり、お盆を持ち上げたお狂は、今まで不思議に思ったことがあった。




「ところで、」


「ん?なんじゃ?」


「どちら様でしょうか…?」


「問うのがおっそいのぅ!」




そう言ってゲラゲラ笑う全く知らない妖に、お狂は只々困惑するしかなかった。


それもそのはず、お狂が困惑した理由は山程あったが、まとめてると




1.今まで忌諱を訪ねた者などいない


2.それ以前に忌諱を訪ねる物好きはいない


3.それ以前に忌諱は友達どころか知り合いもいない(はず)


ようするに忌諱は究極のぼっち、ぼっちマスターなのである。




「…旦那様の、お客様…?ですか……?」


「んー、客と言ったら客じゃのうぅ」




「ならば客でないと言ったら客ではないのですか」と思ったお狂だが、もし本当に客ならば粗相のないようにしなければと思い、お茶を入れようとした。

だが台所には酒と肉しかなかった。忌諱は野菜が嫌い、というよりも植物を胃に入れるという行為が嫌らしく、故にお茶っ葉などあるはずも無く、途方に暮れていたお狂だが、一筋の光が見えた。




「あんなところにある……!」




お茶っ葉の箱が台所の棚の一番上に見えたのだ。そう言えば、江戸辺りで村人の子供に貰ったような気がする。けれど、もしかしたらお客様が来るかもしれないと思い、ずっと置いていたのだ。幕末辺りで忌諱の交友関係を察したお狂だが…




「もう少しで……!」




「届く……!」と思ったお狂だが、忌諱の高さに合わせた家具なのに、(忌諱から見れば)低身長のお狂が届くはずも無く、実際は猫が猫じゃらしを捕まえようとする図しか出来上がっていないのだ。






「なんじゃ、届かぬのか…、ほれ」






覆いかぶさるように取った男に、お狂は「乙女ゲーム…?」と場違いな事を考えていた。イケメンはすること全部イケメンなのかとも思った。ばくぜろ、違う、バ⚫︎ス




「あの「…何してやガる、ぬらりひょん」旦那様…」


「ほほ、久しいなぁ、鬼蜘蛛」




さっきまでの雰囲気が一変し、何処か殺伐とした空気になったにも関わらず、お狂はまたしても場違いな事を考えていた。



あれ、ぬらりひょんって、何処がで聞いたことあるぞ、と



ーーーーーー



お狂がぬらりひょんを思い出したのは、不機嫌そうな忌諱と何を思ってるか分からない笑みで忌諱を見ているぬらりひょんとの間の空気が悪すぎて台所へ避難していた時だった。




ぬらりひょん、確か乙女ゲームに出たキャラクターであり、主人公を拾った人物であり、黒妖学園の黒幕の男、つまり理事長だ。



主人公である華宮桜を入学させた理由は、『華女』という純血の妖を純血のまま生める特殊な体を持つ女だったからだ。妖と人の子供は半妖と呼ばれ、半端者として妖から嫌われる。妖とは本来半端を嫌う。けれども自分の子孫を残す為には手段は選べない。故に現代の妖は殆ど混血種であり、純血種が珍しくなっている。そんな中、華女と言う存在は、純血種の中でどれだけ都合のいいものかは、言わずとも分かり得る話だった。


つまり、ぬらりひょんにとって主人公は都合のいいねずみであり、道具だったのだ。


それを知った主人公ちゃんは悲しみに暮れて、自殺したら、ノーマルエンド。

「これ、バッドエンドじゃね?」と思った方々、侮るなかれ。バッドエンドはこれ以上にエグいしヤバい。


バッドエンドは主人公ちゃんがぬらりひょんに用済みだと吐き捨てられ、主人公ちゃんは四肢を切断され純血種の子供を産むためだけの道具に成り下がる。子供を産んだら用済み、次の純血種に回され、最終的に体を酷使しすぎて子宮が使えなくなり、子供を産むための道具から男を慰めるための道具になって、エンディングを迎える。


ファン達は「主人公、可哀想」や「ヤバいヤバい」と⚫︎ちゃんねるで発狂し、一部のファンは会社にクレームをかけ、ある意味話題となった。


因みにぬらりひょん自体の人気はそこそこ上位だ。

何故か?心の声を聞きなさい。イケメンは好きだろう?



ーーーーーー



「……で?お狂になんノようダぁ?」


お狂が部屋から出て行った後、忌諱は不機嫌そうに問うた。


「ほほ、久しぶりの同胞の顔を見に来たというのに」


「悲しや哀しや、よよよよよ」とありもしない袖で涙

を拭う姿に、忌諱の機嫌は急降下だ。



ぬらりひょんと忌諱の関係は一言で言うなら『共犯者』だ。忌諱がお狂と出会う前は、いつも一緒にいた。だがそれは仲が良いとかではなく、互いが互いに利があっただけで、性格の相性は最悪だ。そんな2人だが終わりは呆気なく、忌諱がお狂と出会って以来、ぬらりひょんとは縁を切ったのだ、が…



「テメェは考えてる事がイチイチきな臭ェんダヨ。」



この男を動物で例えるなら忌諱は迷わず『ハイエナ』と答えるだろう。自分の手は汚さないが、確実に自分の餌を手に入れる。

忌諱と行動していたのも、忌諱の食べこぼしを頂くためだった。その代わりぬらりひょんはその甘い顔を良いことに女を呼び寄せた。女が寄ったら男も来る。人集りが出来たら後は殺すだけ…



「ほほ、まぁ、其方ではなくあの女子に用があるのは確かじゃ。」



そう言ったぬらりひょんはうっそりと眼を細めた。



「其方は、わしが造った学園を知っとるか?」


そう言ったぬらりひょんは酒のつまみを下から掬うように食べる。



「アぁ、あの実験施設か。」


「実験施設とは酷いのぅ」



流行りや噂に疎い忌諱が黒妖学園の裏を知っている事に、ぬらりひょんは驚いたが、すぐに合点が着いた。



「あの女子か…」


「キヒヒヒ、サァなァ」



はぐらかした忌諱だが、実際は本当の事だった。お狂は情報収集に長けていた。「情報は損にはならないので」と言い、色々な場所に潜入していた。団子屋から陰陽師の屋敷まで。元々の能力ではなく、長い年月をかけて身に付けたものだ。




「…まぁ、その事は良いわ、忌諱よ。頼みがある。





あの女子を3年間貸してはくれぬか?」




唐突かつ突然の話に忌諱は思わず






「シネ」






と真顔で答えてしまった。




ーーーーーー




一方その頃、台所へと避難したお狂は考えていた。


ぬらりひょんは乙女ゲームのキャラクター、ならばこの世界は、乙女ゲームの世界。


(今世では誰でも顔が良いと思ったら、そう言う事ですか)


「ならば自分の立ち位置は、通行人Aにすらならないはず」とお狂は思った。黒妖学園に入学する事はないし、したいと言っても忌諱に反対されるのがオチだ。



お狂はホッと息を吐いた。誰でも面倒ごとには関わりたくはない。



…忌諱が了承しようとしていることなど知らずに



ーーーーーー




忌諱とぬらりひょんの空気は険悪を軽く超えてしまった。




「ほほ、其方の心の狭さは相変わらずよの。まぁ、落ち着いて話を聞け」




そう言って床をトントン叩くぬらりひょんとは裏腹に、忌諱の機嫌は氷点下を超えていた。今すぐ此奴を追い出したい。いっその事殺したろかとヤクザ顔負けのパンチの効いた顔でぬらりひょんを睨んだ。




「………三十五文字以内で答えロ」


「こくようがくえんがていいんわれした。めいよのためにしりあいをまわっている。」


「そう言えばコイツ、無駄に頭良かっタ」と忌諱は顔を益々顰め、般若が土足で逃げ出すような表情を見せた。今のはどう見ても自分で自分の首を絞めたのだが、そこは割愛する。





ーーーーーー

ぬらりひょん目線



「チッ、まぁイイ。3年間だけダ。」


そう言った忌諱は忌々しそうにぬらりひょんを見た。

「たかが3年、されど3年と言うところだろう。」とぬらりひょんは思ったが、ぬらりひょんはそんな事どうでも良かった。粘りに粘って漸く手に入れた3年間に、ぬらりひょんは歓喜した。




ぬらりひょんはお狂の事を女子と呼んだが、ぬらりひょんはお狂を知っていた。お狂が未だ幼き頃から、ぬらりひょんはお狂を見ていた。




ぬらりひょんは昔、お狂の肝を狙っていた。理由は純粋な子だったから、只それだけ。



一見平和な村だから子が死んだら噂になるだろう。だが、食べ頃の子は性処理で金を稼ぐ女の腹から出てきた哀れな子。生き永らえても母親と同じ末路を迎えるだけだ。それならいっその事死んでしまった方が子のためだ。そう自分に言い聞かせて会いに行ったのだ。



川で洗濯をしたお狂を見つけ、こう言った。



「おいで、おいで可愛い子」



閨で女を誘うように、甘く甘く微笑む。自分の顔が良いことは自負していたし、その頃は過信していた。例え幼くても、綺麗なものを見れば綺麗だと思える心があるのならば、此方へ来るだろう、と。



だが、振り向いた子は余りにも子とは言えぬほど、達観、いや、今なら客観的にと言うだろう。物事を、全てを、世界そのものを見ていた。





今なら分かる。今なら、そう…






少女は、世界に絶望していたのだと







次回はお狂ちゃんと、ぬらりひょんの馴れ初めが中心です。



忌諱とお狂ちゃんとの馴れ初めは書きません。

次次回らへんは忌諱とお狂ちゃんの殺伐愛書きたいと思っています。


今後とも宜しくお願いします!

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