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死神の初恋



長期休暇でもやらなければいけない事がある。だがそんな事後回しだ‼︎私は新しい小説を連載するぞ‼︎止まっていた小説も再開させる‼︎



……願望だがな‼︎






叉丸視点






切っ掛けはただの好奇心






東の厄病神として恐れ慄けられていた忌諱の側に少女が共にいると、風の噂で聞いたのだ。





風の噂、では語弊があるか……、正確には北の破壊神 亞蘭が風を日ノ本に巻き起こした時に見かけたそうだ。彼奴が出掛けるなんて珍しいと思ったが、大方、二千年も片想いを拗らせている南の守護神 天鏡の為に風を轟かせたのだろう。





だが、嘘か真かと疑いもせずに俺は亞蘭の見間違いだと確信していた。俺ですら彼奴の纏う気は薄気味悪く、関わりたくないとすら思うのだから。




だから、咲良山の奥深くを歩き、菜の花が咲き乱れるその場所で少女を見た時は、胡蝶之夢かと信じて疑わなかったものだ。




「……よしよし、大丈夫ですからね。足を怪我してしまったんですか。」




少女は足に怪我をした狸の背中をさすりながら優しく声をかける。




「待ってて下さいね。今、屋敷から包帯を……」




途中で声を遮り、背後を振り向いた少女は俺がいた事に気付き、目を大きく見開きながら、不可思議そうに俺を見る。




「えっと……、人、ではありませんよね…?…あ!カミサマの友達ですか!?」




少女は儚い外見とは裏腹に、天真爛漫に笑う。よく見れば肌も微かに小麦色に焼け、とても健康的だ。




「神様…?…あぁ、忌諱の事か。」




彼奴は神様という柄かと、内心笑ってしまったが無邪気に笑う少女を見たら、何というか…とても言いづらい。




「その狸は…、罠に引っかかったのか?」



「いえ……実は咬み後なんです。この足の傷…」



「咬み後……」



ふと、この狸から微かな妖力を感じ取り、察した。

この狸は、狸から産まれた化け狸。狸でありながら力を持ちこの世に生まれた哀れな獣。大方、母親に足を引き摺られ此処に捨てられたのだろう。母親にとってこの狸は腹から出てきた異物なのだから。




「取り敢えず私は、屋敷から包帯を取りに行くので、あの……」



「あぁ、分かってる、狸は俺が見とくから。」



その言葉を聞いて安心した様に笑った少女は、走って屋敷へと向かった。






ーーーそれが、少女と俺の出会いだった






ーーーーーー




あれから数ヶ月が経った。

俺は時たまに少女と狸を見に咲良山に登った。

忌諱にバレたら面倒な事になると分かってはいたが、彼奴は飯を探しに行ったら3日は帰らない。

その習性を知っていた俺はその3日、少女と狸と下らないじゃれ合いをした。





その時間は、とても穏やかで…死神と呼ばれている事を忘れていた。





「やっぱり、ぽん太は駄目です!」



「あー?どう見たってぽん太だろ。この腹回りといい音と言い…」



「けどこの子、女の子なんですよ!」



「ん?どれどれ…、あー、雌だな。」



「だから、もっと女の子の名前にしなくちゃいけませんよ!」




女の子と言われても、名前なんて考えた事がない俺は適当に女らしい名前をあげた。




「なら、たぬ子」



「適当過ぎです」



「たぬ美」



「たぬ好きですね」



「たぬ太郎」



「論外です」



「たぬさん」


「それ、結局たぬじゃないですか」



「たぬきち」



「それは色々と駄目です」


頭を捻らず適当に答えた名前は全て却下かれたが、もうこれ以上思いつかないのだ。





『……ぽん!』



「「……ぽん?!」」





予想外の狸の鳴き声に俺も少女も声を張り上げる。ぽんと鳴るのは腹だぞ狸や。




「そうだ!この子ぽんちゃんって名前にしましょう!!」



「それたぬさんと変わらねぇぞ」



「そんなことないですよ!ね、ぽんちゃん」



『ぽん!!』



「嘘だろ」




狸は少女の名前を気に入り、いや、少女が授けた名前だからこそ気に入り、嬉しそうに頭を擦り寄せる。




こうして狸は《ぽんちゃん》という名前となった。





その頃は、幸せな時間に満たされていた。





だからこそ俺は気づかなかった。だからこそ…俺は愚かだった。





死神である筈なのに、死神として生きてきた筈なのに





俺は、少女に近づく死の足音に耳を向けなかった








次回は叉丸がお狂ちゃんの秘密を知ってしまいます。

この話でもしかしたら勘のいい読者様はお狂ちゃんがどういう存在か大体察してくると思います。




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