少女は少女をオモう
これでやっと終わります。
名前やっと出せた…!!
けどね、聞いてよ奥さん←
体育祭ネタ思いつかねぇ
???視点
あの後ウチは、お業と別れあるじ様を迎える。
お業が何故遊郭に火を放ったのかは分からない。けれども、あの子なりに考えてした事なのだろう。
けれど、もしあの時、ウチ以外に死人がいたら、ウチはお業を許せなかっただろう。
だが、ウチ1人の命が散っただけなのだ。なんて安い。
「涼風、何か良いことでもあったのか?」
久留里涼風、それがウチの今世での名だった。
自分の容姿の良さは自覚している。そのせいでウチはどうも血縁者に縁が無いようだ。父と別れ自暴自棄になり育児放棄した今世の母と自分の男を取られない為にウチを売った前世の母を思い浮かべながら、溜息を吐く。
「涼風?色々と忙しないな…。笑ったり溜息を吐いたり…。」
「…何でもありまへんよ。今日は、…心友に会ったんです。」
「心友…?お前が話してた少女か?」
何故あるじ様がその事を知っているのだろう?と疑問が湧いたが、あの広いグラウンドにポツリと二人きりで働いている女が2人もいれば目立つのも当然かと勝手に解決させる。
「そうなんです。暫くの間会えへんかったから、つい話し込んでしまいました。」
「あまり、明るくなさそうだったがな。」
「……聞き耳立てとったんですか。いややわ、恥ずかしい。」
あるじ様は紅海優、黒妖学園の生徒会長であり吸血鬼、紅海神羅の実の兄だ。だが、あるじ様は生まれた時から火傷のような傷跡とそれを隠す為の包帯の不気味さと、吸血鬼にあってはならない歩けない足、紅海一族があるじ様をお荷物扱いするのは当然だった。故にあるじ様の地位は決して高いものではない。だが、吸血鬼の能力は一級品で、五感も鋭く、足が悪くなければ戦闘も可能であっただろうと、車椅子を押しながら考える。
「…そこまで聞こえはしなかった。」
そう言ってウチの返事を無言で待つあるじ様やけど、さすがに前世の話なんて出来へんし、何より出来る筈がない。
何処まで話そうかと悩んでいると、あるじ様は痺れを切らしたように話を紡いだ。
「…カミサマを、欲したのか。あの少女は」
その言葉に、あるじ様は遊郭が燃えた後の話から聞いたのだと分かった。
正直に言えば、あるじ様に隠し事はしようとも、嘘は吐きたくないから、あの子に心の中で謝った後、あの子の話をする。
「…合ってるけど、違うんですよ。」
「合ってるのに、違う…?」
「あの子は確かにカミサマを望み、手に入れた。」
「手に、入れた……?」
信じられないというように目を見開くあるじ様。それも当然かと思いながら話を続ける。
「そう、手に入れた。あの子にとってカミサマは、願いを叶えるモノ、つまりあの子は、自分の願いを叶えてくれるモノを手に入れたんですよ。」
「……自分の願いを、叶える……。なら俺のカミサマは…」
そう呟いだあとまるで失言したとでもいうように赤面したあるじ様を不思議に思ったが、あまり気にしないまま口を動かす。
「…あの子の行動は、ちぐはぐなように見えて、意外と辻褄が合ってるんですよ。」
そう言って、遊郭に火を放ったあの時を思い浮かべる。
あの行動は、自分で犯した行動だとあの子は言った。その点はウチも確信していた。けれど、あの子が遊郭の髪結いになったのは、紛れもなくあの子のカミサマの命令だ。あの子のカミサマが何故そんな事を命じたのかは分からないが…
あの子はきっと、カミサマの命令なら何でもするだろう。カミサマの命令だったら
どんなに仲睦まじくても
どんなに可愛いがっても
どんなに恋しがっても
カミサマが『コロせ』と命じたら、それに従うだろう。例えどんなに泣いて泣いて涙が枯れてもなお心で泣いてもあの子は、あのか細い腕で首を絞めるのだ。
全てはカミサマの為
自分のカミサマで居続けてもらう為
自分の願いを、永遠に叶えさせる為
けれど
「あの子のカミサマが欲しいという願いは貪欲やけど、あの子の本当の願いは余りにも無欲なんよ。」
「…確かに、ちぐはぐだな。」
「けれど、辻褄が合うな。」と言って此方に顔を向けるあるじ様は、悲しそうに笑った。
その表情は、あの子の笑みと同じで、心が締め付けられる。
ウチはあの子を救う事はできない。あの子を救えるのはあの子のカミサマだけ。
「あの子と、初めて会った時の印象をよう覚えております。あの子を見たら、まるで………」
ーーー昔のウチを、思い出してしまう。
「……なんて、な。」
「涼風?」
ウチは、あの子を救う事はできない
前世で報われなかった想いは溢れず静かに静かに零れ落ちるだけ
けれども、前世で叶わなかった願いを今世で漸く果たせる事ができた
「ウチに、出来る事は何もありません。只々、あの子をオモい続ける事しか……」
だって今世では、今世こそは
ーーー貴方様の為だけに生きていきたいから
車椅子を押しながら、愛しい愛しい貴方を見続ける
「あちきの身は、主さん一人のものでありんす。」
そう言ってウチは、不思議そうに此方をみる前世の想い人に笑みを浮かべる。
次回は体育祭を書きたい‼︎