体育祭準備(4)
回想編終了‼︎
けど、まだ続くよ‼︎
次は彼女ととある男の会話を書くよ‼︎
彼女視点だよ‼︎
遊郭の火が尽きた時には、朝日はもう昇っていた。
人はもう、いなかった。火消しも手に負えない程燃えてしまった遊郭は、吉原の遊郭すべてを燃やしてしまったのだ。辺りは焼け野原のような惨状、残骸だけが色を支配している。
幸い、傷を負った者は複数いたが、吉原だった場所に死人も死体もいなかった。
……彼女を、除いては
私は下駄を脱ぎ捨て遊郭の残骸を乗り越え、手に火傷を負いながら必死に残骸の山を作る。
奥に、奥に手を伸ばし、腕に傷を負い、それでも手を伸ばし、残骸をかき分け、彼女を探した。
手の皮はもう剥け、爪は剥がれ落ちた。
足は血塗れで、爪が見当たらなかった。
けれども探さなければ、彼女を探さなければ、
私は何度も手を伸ばす。静かな朝に、私の吐息とガラクタが壊れ落ちる音が響く。
数刻後、遊郭の残骸の山を幾つも連ならせ、彼女をようやく見つけた。
彼女の美しい容姿は無残にも焼け焦げ、彼女の美しい髪は焼け落ち、人の原型を取り止めているのが精一杯の状態だった。
私が、殺したのだ。
私が、殺してしまったのだ。
今思えば
これは私自身が犯した、はじめての罪だった。
私が呆然と彼女を見続けていると、彼女の死骸に、無数の黒い羽の蝶が……極楽蝶が飛び回り、羽を休め、あるはずもない蜜を啜ろうとする。
私は、彼女と二人きり
私は彼女と、………二人ぼっち
「……………ーー?」
彼女を見つけてからまた、暫くの時が経った頃
私の後ろに、彼女が愛した醜い男が呆然と立っていた。この状態の彼女を見つけたことに只々驚いたが…私は咄嗟に彼女を隠してしまった。……あの時の会話が、脳裏を過ぎったからだ。
例えどんなに彼女を求めても、それは彼女の体であって、……彼女の心じゃない。
この醜い男も、そうなのだろうか。
この醜い男に、今の彼女を見せるのが只々恐ろしかった。彼女を否定しないで欲しかった。
彼女の生き様を、彼女の死に方を、否定しないで欲しかった。
彼女を殺した私が言うのは、なんとも滑稽な事だと、嗤われるだろうが……
「ーー?…ーーなノか?」
私の事など気にもせず、醜い男は彼女の名前を呼び続け、こちらに向かってくる。
「……ソうか、ーー、なのカ…」
そう呟くように言った後、男は
ーーー笑った
まるで安心したかのように、安堵したかのように
嬉し、そうに
「そうか、テメェは……誰のモノにもならなカッタのかァ」
そう言って醜い男は、包帯の下から笑ったのだ。
醜い男はかろうじて原型を留めている彼女の体を片手で抱きしめ、優しく抱き寄せ、引き摺るように歩いて行く。
何処に向かい、歩いていくのかは分からない。だが、私にはまるで、今から駆け落ちする恋仲の男女のように見えてしまった。
「なにしてんダァ?お狂」
「旦那、様……」
日が昇るのも関わらず、旦那様は闇を連れてやって来た。
「これは、テメェがやったノか?」
「……旦那様、私は……幸せにしたかったんです。」
「アァ……?」
「彼女を、…幸せにしたかったんです。彼女に幸せな未来を、掴んで欲しかったんです。けど……無理でした。出来ません、でした。」
「……」
「当たり前です、よね。だって……私は誰かを幸せにした事なんて、幸せに出来た事なんて…、1度も、無かったんですから。」
「そりゃアそうダロ。オメェはお狂なんだカラなぁ」
「…分かって、るんです。分かってた、つもりだったんです。
それでも、私は、……幸せにしたかった……!!」
気付けば私は、旦那様に抱き付いていた。旦那様に、抱きしめられていた。
「……テメェは馬鹿だなァ、お狂。幸せナンざ、『其々』じゃネェか。テメェのモノサシで、他人の幸せハカろうとしてんじゃネェヨ。」
「旦那様…」
「テメェのした事は、テメェが結果的に自分もシアワセになろうとした利己だロォ。つまりテメェは自分勝手にコロしたんだヨ。」
「あ、ああ……」
本当は、分かっていたのだ。
彼女を幸せにしたいのは、私が幸せになりたかったからだ。
私が、幸せに浸りたかったのだ。
私を慰めるように旦那様は、硬い鱗のような手で私の頭を撫でる。
その優しさが痛くてしょうがない。
「けどナァ、テメェのした事でシアワセになれたかもしれネェヨ?」
「アイツらは…………」
やべえ、前書きで全て書いてしまった←