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体育祭準備(3)



新キャラの名前は出せないのです。

申し訳無い(汗

体育祭準備はしてないけど気にしない(テテーン





「救いのない、話やろ?」



私の心を見え透いたように発した言葉

簪を何時までも持ち続ける彼女は、話を続ける。




「……なぁ、お業。ウチは思うんよ。…どんなに努力しようと、所詮ウチの体は汚れとる。……けど、ウチを買う男が求めるのはウチの体。…皮肉やね。けど、な…」



さっきまで高ぶっていた思いを落ち着かせるように、彼女は私の心の臓に手を当てる。




「…だったら、誰にも汚せない心を、いつまでも綺麗でいさせたい。…この心だけは、誰にも汚させない。」





「これは、ウチの誓い。ウチの、願いなんよ。」





そう言った後、彼女に客が来た。

皮膚は濁り、顔は爛れ、片腕が潰れている、あまりにも醜い男。偶々通った遊女が汚い物を見るような目でその男を見る。




けれど…




「ーー?」




彼女は、その男を見た途端、まるで愛おしい恋しいと眼で語る。




彼女は男の手を引き、奥へ奥へと進む。

男の歩調に合わせて、ゆっくりゆっくり、夜に紛れ込む。




「それにしても、あの気持ち悪い男。どうにかならんか?」



「無理に決まってるりゃんす。あの男は、花魁のお気に入りでありんすから。」



「お気に入り?いい人やないんでありんす?」



「まさか、あんな気持ち悪い男が花魁のいい人?…虫が痛い話りゃんす。」



さっき通りかかった遊女たちが、ひそひそと男を見ながら噂する。





確かに、その男は醜かった。けれど……





「優しそう、…ですけどね。」





私の呟きは、誰にも聞こえず、遊女の喘ぎ声と吐息にかき消された。




ーーーーーー





「……え?売られる……?」





「そうや。商人の五右衛門っちゅう小太りの坊々の元へな。」





季節は巡り、歳月は巡り、彼女は益々美しくなった。

私は、未だ誤魔化せるだろうが、いつ違和感を抱かれてもおかしくない程、何も変わらなかった。





私と彼女はあの話を共有して以来、距離を縮め、心友と呼べる仲になった。

花魁である彼女と、ただの少女である彼女はあまりにも変わりすぎて正直驚いたが、彼女の微笑みが私は好きだった。





けれど、今日の彼女はどこが元気が無かった。目を伏せ、瓶に挿してある萎れかけのなずなを見て哀しそうに笑っている。

だから声を掛けたのだ。そして返された答えは、……彼女が花魁どうぐだと知らしめるものだった。





「…しかたあらへん。華は咲いてる時期に売ってしまう方が高値やろ?…前の花魁みたいな悲劇を繰り返したくないんやわ…」





彼女はそう言って笑ったが、彼女は爪が少し甘い。どんなに表情は嘘をついても、声色はどうしても嘘をつけない。彼女の悪い癖…





「これで、ええんよ。……これで、ええんよ。」





彼女は自分の嘘を真実にするために何度も何度も同じ言葉を繰り返す。




けれど、私は知っている。

あの醜い男を、彼女が好いていることも



彼女は想いも伝えないまま、売られてしまうのか?

彼女の想いは、叶わないままなのか?




…どうして、彼女は幸せにならないのか。




彼女が幸せになるためには如何すればいい?


彼女が不幸にならないためには如何すればいい?




彼女が幸せになるためには、花魁でなくなること


彼女が不幸にならないためには、遊郭を抜けること




あぁ、駄目だ。




私の村の風習を、忘れたの?





駄目だ。駄目だ。駄目だ。





如何すればいい?


如何すればいい?


如何すればいい?





どうすれば………







あぁ、簡単じゃないか。






「……お業?」




私の考えなど知らない彼女は、不思議そうにこちらを見る。




「いえ、何でもありません。」




そう言って私は彼女の身支度を整える。

後3日で彼女は売られる。3日後の夜に、彼女は売られる。花魁行列と共に、彼女は吉原カゴを出て行き、……新しいカゴの中に入る。




大勢の人間が、彼女を見送るだろう。

遊郭の人間も、総出で送り出すだろう。




ジャキ、ジャキと髪を切る。

彼女の長い艶のある髪は、売られた時から伸ばし続けているそうだ。




「…髪、切り揃えました。後は、髪を結うだけですよ。」



「おおきに」




簡単な話だ





3日後の夜、遊郭に火を放とう





油を撒いて、誰もいない遊郭に火を放とう





その混乱に乗じて彼女が逃げる



私の村のように、逃げ道が1本しかない訳ではない



何処にでも飛び立てる



そしたら、貴女は…





幸せに、なれますよね?





ーーーーーー




静かな静かな夜でした。

鳥の鳴く声すら聞こえぬほど、静かな夜でした。



「…遊郭が…!っ誰か!火消しを…!火消しを呼べ!!!」



「待って!中にはまだ遊女見習が…!!」



「そんな悠長な事言ってる場合じゃねぇ!子供一人二人っ、、所詮落とし子だろう…!」



「いやああああ!お花、お花ぁ!!」



「紅、諦めろ!あの子はもう…!」



静かな夜でした。目の前の業火が、ただただ燃え広がった夜でした。

すべてを、焼き尽くす業火が…



「…花魁?何をしてんの!あんたも早く逃げんだ!!」



「あんたは近々、商人の五右衞門に売られるんだ!…死んでもらっちゃあ困んだよ!!」





「…渡る世間は鬼ばかりとは、まさにこの事」





「…」



「花魁…?……っ!何をしてる花魁!………あ、んた、まさか…!」



「よせ!っ、あんたあの子らの面さえ見たことねぇだろう!そこまでして助ける義理ねぇはずだ!」




「……あぁ、本当むしがいたい。」




「…例え身体が汚れても、あちきは…魂だけは、汚したくないりゃんす。」





2つ誤算があった。



いや、誤算は1つだけだった。



1つは、遊郭に子供達が残っていたこと



その子供達は、あまり顔がよくない為遊郭に残されていたこと





そしてもう1つは…





彼女が、その子供達を放っておく訳なかったこと





彼女は燃え広がる遊郭に向かっていった



水も被らず、ただ着物を脱ぎ、子供達を助けに行った





その数十分後、子供達が遊郭から出て来た。





「花魁さまに助けて貰った。」と泣きながら話す。




遊郭を仕切るあまり顔が良いと言えない女が、鬼の様な形相で花魁の行方を聞く。




子供達は泣くだけ




女は子供達に唾を吐きながら罵倒する



紅という遊女は自分の娘を泣きながら抱き締め続ける。



辺りが混沌とした空気の中、私は燃え盛る炎をただ見つめ続けるしかなかった。






次回は多分回想編終了です。

多分です‼︎

本当に多分です‼︎

多分ったらt(強制終了




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