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体育祭準備(2)



やばいやばいどうしよう


体育祭準備してねぇ‼︎


だって作者体育祭準備なんてしたことないもん‼︎


小中の時椅子運んだくらいだもん‼︎


☆テヘペロ☆



ゴメンなさい






彼女はそう言った後、体育祭準備を手伝ってくれた。

あの重苦しい空気の中、突如「ウチ、今暇なんよ。」と言い、少し重たい段ボール箱を持って笑う姿を見たら、何だか昔の、あの頃に戻った気がした。あの頃の彼女も、空気など関係無く突拍子の無い事を仕出かしたなと、懐かしさが込み上げてくるのだ。




「……それで、どうして此処にいるんですか?」



「んー?」



「惚けないで下さい。さっきは爆弾発言というものを仕出かしましたが、私が聞きたいのは貴女が此処にいる理由です。」




そう言って少し拗ねた感じを出す様に、頬を膨らませる。そして中途半端に膨らませた風船のような私の頬を、彼女は笑いながら「ぱちーん!」と言って優しく破るのだ。




「ウチは、付き人として黒妖学園に来たんよ。ウチのあるじ様が、交流会の体育祭の挨拶しに来なあかんくてな」



「付き、人……?」



「付き人や。」



「…仕事、ですか?」



「自分から志願したんやけどな。」




その言葉に暫く固まったが、聞きたい事はまだあるのだ。今は置いておこう。




「その服は、制服ですよね?」



「制服以外に見える?」



「年は…?」



「15」



「学園生、ですよね?」



「一応な」



「どういう、事ですか?」



本当に、その一言である。学園生だけど志願で仕事をしている?バイトだったら分かるが、付き人は、どう見ても仕事の一つだ。今世でも彼女の家庭環境は最悪なのだろうか?それとも、玉の輿のため……?確か、白妖学園の概要の中に、白妖学園の男子生徒は大半が妖で、女子生徒の大半が華女なのは、男子生徒、つまり妖が花嫁を探すためで、女子生徒もそれを知っている。




辻褄が合うが…納得がいかない。だって彼女は、彼女は最後まであの人の事を……




「どういう事って、そんな複雑なことや無いよ。だから気にせんとき」




私の考えを遮るように話した言葉は、遠回しの拒絶だった。これ以上は詮索したらいけないのだと、超えてはいけない境目なのだと




「……なぁ、お業。ウチはずっと気になっている事があるんよ」




段ボールを運び終え、此方を振り向く彼女




「はい。なんでしょう…?」




そう答えれば、彼女は目を細め、私を見る。睨んでいる風には見えないのに、何処か恐怖心を感じる目だ。




「あの遊郭に火をつけたのは、アンタやろ」




ひゅっ、と小さく息を飲む。落ち着いたはずの心の臓が、また警告音を鳴らし始める。これ以上聞くな。耳を塞げ。そうやって脳内をオカして、逃道を作るのだ。

けれど、誤魔化しては駄目だ。逃げちゃ駄目だ。




ーーーだって、彼女が言っている事は、真実だから



ーーー変えることの出来ない、真実だから



「そう、ですよ…」



「私が、あの遊郭に、火を……つけました。」




何時の間にか、其々の役割を果たした体育祭実行委員の方々はいなくなり、この広いグラウンドに二人きり、二人…ぼっち。







私はまた、貴女と二人ぼっち







ーーーーーー




そもそも、出会いは偶然でも必然でもなかった。





時は幕末、新撰組が内部分裂した頃の話





だが、そんな事は吉原には全くと言って良いほど関係なく、この美しく汚い世界は、薄暗く煌めいていた。




お狂はお業と言う偽名を使い、遊女……ではなく、遊女の髪を結う、言わゆる遊郭の専属的な髪結いをしていた。




最初は慣れずに失敗して怒られて、落ち込んだりしたが、徐々にその腕を買われ、私はとある花魁の専属髪結いになったのだ。





……それが、彼女だった。





「あちきの髪結いはんは、あんた?」



「はい、お業と申します。」



「そう…。あちきはーー、どうぞよろしゅう」





そう言って彼女は、微笑んだ。





彼女はその遊郭では最高峰の花魁だった。客を選べる程に…だが、彼女は客を選ぶ事は無かった。金のある商人や大層な美丈夫、二枚目の色男…、いろんな客が彼女と一夜床に入ったが、その客たちは、彼女のいい人になる事は無かった。



選り好みが出来る環境に彼女はいる。けれど彼女は誰も選ばない。一体何故?



「そんなん、決まっとるよ。あの人さん等は最後、あちきを選ばないからりゃんす。」



「…?選んでいるのに…?」



「何を選んどるんやろ。若さ?雰囲気?自賛して顔?……なんとも、物悲しい事でありんす。」



「つまり、…貴女の心を、選ぶ方などいないと?」



「昔、……あちきがまだ、遊女見習いだった時、仲のいい花魁がおったわ。四つ葉のように儚げな人でな、…あちきはその人の世話をしてた。」



そう言いながら、簪を選んでいる彼女は、何処か悲しそうな顔をして簪を手に見せる。表情は落ち着いているが…彼女は、廓詞を話せないほど感情が高ぶっていた。



「その人にはいい人がおってな。大層な色男やったんやけど、仲が良くて…今にも駆け落ちしそうやった。…そやけど、人は年をとる。いつかは老ける。」



「………」




その言葉は…私には当てはまらない。私は、旦那様がいる限り、年をとることは出来ないから。




「その人も、いい人も、年をとった。花魁は顔にしみができ、皺が増え、儚さなど消えていっとった。色男は、少し老けただけで、まだ色男やったのを、……よう覚えとる。」




嫌な、予感がした。いや、予感では無かった。私はこの話の結末を……薄々感付いていた。




「その頃から、ウチは遊女になった。男に媚びる気持ち悪さに慣れてきた頃だった。……もう、結末なんて分かっとるやろ。お業…、その花魁は、捨てられた。」




…あぁ、そうか。やっぱりそうなったか。けれど、話はそれで終わらなかった。




「…そして、その色男が次に目を付けたのが、……ウチやった。」




声は気丈なままだが、廓詞がとうとう言えなくなった。話はどんどん、奈落へと堕ちてゆく。




「「なんて美しい。」「こんなに美しい人には初めてあった。」そう、閨で花魁に言った甘い言葉を、ウチに言うん。ウチが隣の部屋で聞いとったんなんて、知らへん阿呆な男は、客を呼ぶウチに吐く。……滑稽やと思わんか?」




彼女の話は途切れない。これ以上話しても、話は幸せに向かう筈ないのに




もう日が暮れそうな空に、雨音。鳥籠のような格子窓から見える雨は、何処か違う世界から降ってきたモノのようだ。




「あの時も…、あんな雨やった。」




そう言って触れる事など出来ない雨に、手を伸ばす彼女は、今にも消えてしまいそうだ。




「夕暮れ時に、小雨が降ってきて、…あの色男はウチを蛇の目傘に無理矢理入れてきてな。……そこに、髪も着物も、何もかもが汚く乱れた女がズルズル着物を引き摺りながら此方に来てな、そんで…ウチと色男を離して………」





「あの色男を、研ぎ澄ました簪で……殺めたんよ。」





そう言いながら簪の先端を首に突き刺す動作をする彼女は、まだ話を終わらせない。この話に、救いは無い事など、分かってしまったのに。




「…けど、な。違ったんよ。花魁が本当に殺めようとしたのは……ウチ、やったんよ。」





あぁ、……ほら。救いなんてどこにも無い。







次回、彼女の正体は分かる人は分かると思うけれども、名前が出てないので出す‼︎


目標ですが何か(震声)


あと彼女のいい人も出す………筈



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