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それは悲劇

この話を書いた後、思ったことがあります。

主人公ちゃん、中ボスキャラになったなと

けど、後悔はしていない‼︎

主人公ちゃんのハッピーエンドを目指して書いていきます。

けどメリーバッドエンドも書きたいなと思ったりもしています。

バッドエンドは書きたくないけど、書いてしまうかもしれません。

こんな作者ですが、どうぞよろしくお願いします。


黒妖学園、なんとも単純明快な名前だろう。

放課後の教室の窓側3番目の机から見る景色は、野球部とサッカー部のグラウンド争いしか見えてこない。

別にサッカー部、もしくは野球部に想い人がいるのかと聞かれれば鼻で笑う自信しか無いが、確かに私はサッカー部の主将を見ていた。

前主将への劣等感、嫉妬、才能の差、黒い感情がとぐろを巻いて彼を苦しませている。じわじわじわじわ、彼の足元で呻きを轟かせている。



…野球部がグラウンドの権利を取った。どうやらジャンケンで決めたらしい。彼はサッカー部の部員に謝っている。部員たちはそんな主将を励まし、主将を奮い立たせようとする。



ーーー平気っすよ、気にしないでください!

(ダメだな、こいつ…)


ーーーほら、中庭行こうぜ、

(役に立たねぇな…!)


ーーーいつものことだって!

(ほんと、いつもの事だよな)




目線で伝わる侮蔑の眼差しに、彼はいつまで耐えれるだろうか。けど…




「そろそろ食べ頃か…」




ーーーーーー




この世界には三種類の者がいる。

妖、人外といえるモノ

人、この世界の中心となるモノ

守り人、人を守る為の力をもつモノ


その三種類の者が共存出来るかと言えば、答えは否だ。


妖は人と違う力を持つ。それ故に人を見下し、人を蔑み、人を利用する。

人は自分たちがこの世の頂点だと信じて疑わない。人外など信じていない。それ故に人以外のナニカを排除しようとする

守り人は自分たちが唯一無二だと言う。人を守り、妖を滅せるのは守り人だけだからだ。



黒妖学園とは、妖、人、守り人が共存する為に創立した学園である。…表では優秀且つ権力のある家の生徒が集う学園、まぁ、裏では人の生存率、妖の理性、守り人が妖を滅する基準…、それをデータ化し、お偉い方々が理論する。要するに実験施設と言っても過言ではない。


そうとも知らず今日も1日を暮らす学園内の者たち、明日、自分が死んでしまうかもしれないなど、知らずに笑い合う。今日、自分の存在が無かったことになるかもしれないなど、知らずに笑い合う。

学年の人数は、徐々に減ってきている。入学式に3人、わずか2週間で10人…




少女、咲良田杏サクラダ キョウは他人事のようにそれを見る。




ーーーーーー




杏が何故黒妖学園の裏側を知っているのか、それは彼女が転生者だから、としか言いようがない。

前世の記憶に、とある乙女ゲームの存在が残っていたのだ。


乙女ゲーム《〜大切な貴方へ〜》

主人公の華宮桜は黒妖学園に入学した。母子家庭である華宮桜の母が死に、行くあてがなかった桜を拾ってくれたのが他でもないこの学園の理事長である濡螺ヌラだったからである。そこでの出会いが、華宮桜の運命を変えるなど、思いも知らずに………


そのゲームはキャラクターの多さとhappy endの多さが売りのゲームだった。だがファンから「bad endがエグい」や「あれは無い」や「運命変えすぎだろ」などのbad endの酷評が殺到したゲームでもある。それを含めなければとても良いゲームだったと思う。



杏の前世はいたって平凡な人生だった。

幸福だと言えば幸福な人生だったし、不幸だと言えば不幸の人生だった。

杏がこのゲームに惹かれたのは、自分自身も母子家庭と言う環境下だったからかも知れない。

だが杏は杏なりに幸福だった。例え家族でテーマパークに行けなくても、お金が無く部活を辞めなくてはいけなかった時も、修学旅行に1人だけ行けなくても、高校に行ける、勉強ができる、それだけで、杏は幸福だった。



ーーー杏の母親が、多額の借金を残して、男と逃げる時までは…、






高校を辞め、バイトを増やした。



それでも多額の借金は減ることはない。



売春をした。セーラー服で相手した。



売春で貰える金などたかが知れてる。



マニアックな店で働いた。体をボロボロにされた。



客の病気が感染した。子宮を取り出した。






多額の借金が返済できたのは、杏が少女と言う年では無くなった頃だった。





「これで、やっと……」





杏は自然と笑みが溢れた。







…そして杏は、微笑みながら一歩を踏み出したのである。



ーーー寂れた高層ビルの屋上で







そして杏は今世で、自分だけのカミサマに出会ったのだ。







ーーーーーー




「杏ちゃん‼︎遅れてごめんね‼︎」



「私がドジしちゃったばっかりに……」と泣きそうな顔をした少女が杏に近づく。



栗色の髪に茶色い大きな眼、小柄でぽっちゃりとまではいかないが、スマートかと言えばそうでもない。綺麗か可愛いかと言えば可愛いと言えるような少女。杏のルームメイトであり友達と言える仲の在原奈菜子アリハラ ナナコである。長所は穏やかな人柄、短所はかなりのお転婆。今日、先生に呼ばれたのは廊下を走っていたら何もないのにつまずいてコケて数学の教師のカツラを取ったせいである。その時、杏は無言でカメラ撮影していた。


「いいですよ。私も本を読んでいました。」


差し出した本のタイトルは『神の存在と宗教』奈菜子が杏に貸した本だ。


「あっ、もう読んでくれたの?」


「…面白そうなタイトルだったから」




嘘、本当は杏は半分も読んでいない。





ーーー神、とはいるいない以前に、人間にとって必要不可欠な存在です。


ーーー例え無神論者だとしても、危機に陥った時、助けて欲しいと叫ぶのは神です。


ーーー宗教同士で対立が起きるのは、神を侮辱した云々の前に、自分たちの生き様を真っ向から否定するのが、異宗教だからです。


ーーー現実主義者ほど、生きにくい者はいないだろう。


ーーー現実を直視すればするほど、絶望してしまうのだから。




「けど、あんまり好みではなかったかな」


「そ、そっか……、なんで、かな?」




「だって私、」








「カミサマを信じているから」






ーーーーーー


咲良村ほど、のどかな村は無いだろう。と言われるほど、平和な村がある。時代が変わるにつれ変化する筈の景色が、咲良村は時代錯誤なほど、何も変わっていなかった。

そんな咲良村には、とある噂がある。

咲良山には物の怪が住みついている。人の血肉をしゃぶり尽くす悍ましい物の怪が。



咲良山の頂上には咲良村の人間すら知らない屋敷がある。咲良村の人間は噂を信じている故に、咲良山に行こうとすらしない。


その屋敷から気味の悪い音が聞こえてくる。男の泣き叫ぶ悲鳴と、まるで骨をそのまま噛み砕くような、頭蓋骨が割れたような、そんな音が不協和音となって聞こえる。




「んんんんん!!!!!!んぐうぅうぅぅ!!!!」


「ウルせぇ…!」




咲良山はオカルトマニアに有名な山でもある。

この2人のカップルも、面白半分で咲良山に来た人間の1組だった。

この山が、行方不明者が急増している危険地帯という事など知らずに。



「女の方がウメェから食ってみたもノノ、最近の女は姦通してる奴が多いナァ」




そう言って女の腸をしゃぶっている化物に、男は恐怖のあまり失禁し、逃げようと何度も試みたが、あり得ない方向に曲がった足は思うように動くはずがない。


「テメェの情事が満足できてナかったかも知れネェなァ」


そう言ってクツクツゲラゲラカラカラカラと嘲笑う化物。




男は考えた。何を間違ったのだろうか。




彼女の怖がる姿を見たいと思った時から?


危険という看板が沢山あるのに進んだから?


屋敷に入ろうと言った時から?


あの、化物を見た時震えることしかできなかったから?




そんな男の考えはお見通しだというように化物は嘲笑いながら答えた。




「ンなの決まってんだロ?テメェの女が食われてる時に逃げれバよかったんダヨ」




最後に見たのは、責めるように男を見る、女の目玉だけだった。




ーーーーーー


咲良山の化物と呼ばれる妖、忌諱は悪逆非道で有名な妖だった。人の血肉を啜り、女を犯し、村を壊滅し、陰陽師の一族を滅ぼし…、数え切れないほどの罪を犯した忌諱の事を妖や守り人はこう呼んだ。鬼蜘蛛と、それはオニグモと呼ばれる蜘蛛と似ているからと言う由来で、とある陰陽師が名付けたのだ。それと同時に、生まれ持ってはいけない最悪サイアクという理由で、厄病神とも言われた。



忌諱は男女を一通り食べた後、血も落とさずに自分の姿を一通り見えるくらいの鏡を見た。この鏡を通して可愛い可愛い己のモノに会うためである。



「お狂、聞こえてるカ、お狂」


「聞こえてますよ、旦那様」



鏡に映っていた醜い忌諱の姿が徐々に歪んで行く。

鏡の向こうには少女の姿が見えた。

その少女の姿は蠱惑的な容姿をしていた。黒い艶髪に切れ長な垂れ目、病人のように白い肌、それに相反する真っ赤な唇。肉付きがないのが唯一の欠点だと忌諱は思った。


「キヒヒヒ、どーダ?学園の生活ハ??」


「…それなりに楽しいですよ。何かを学ぶ事は好きですし…、あぁ、食べ頃の少年はいますよ。…食べるかどうかは旦那様次第ですが…」


「食べ頃、食べ頃ネェ………」


食べる事が好きな忌諱にしては顔は酷く不服そうなことに、お狂と呼ばれた少女はとても驚いた。


そんな少女の思いも知らずに暫く考えていた忌諱は「つまんねェなァ」と吐き捨てた。

最近の人間はとても美味いとは言えない。肥え太った豚は美味いとは言うが、人間は太っているよりも筋肉がしっかりついて、何よりも純潔を守っている方が断然美味い。何よりも代え難いのは人の負の感情。生の豚肉を焼いて食うよりも調味料をかけて焼いた方が断然美味いのと同じ感覚だ。




だが、




「つまんねェヨ、お狂。俺ァ酷く暇だ。娯楽が欲シい。」


忌諱にとって、この70年は酷くつまらないものだった。お狂に黒妖学園に入学しろと言ったのは己だが、それもつまらないと思った要因だ。


カラクリが増えた代わりに日本は争いが消えた。個人のいざこざなどザラにあったが、忌諱は派手な事が好きだ。そんなこじんまりしたもので渇きが癒えるはずがない。要するに、忌諱の娯楽とは…


「戦争を起こそうじゃネェか、その閉鎖さレた空間で」


そう言った忌諱は残酷に笑う、黒妖学園が血と肉塊に溢れた未来を思い描きながら


「…徳川家康が天下を取った時も、そんな事言ってませんでしたか?」


「あの時は確か、妖怪大戦争を起こしたっけ…?」とお狂は苦笑した。まさか、あの地獄絵図を再び見るとわ微塵も思っていなかった。


「あの時は妖ダケが争っタからナァ。今回は妖、人、守り人ガ争うとどうなるカ試してミテェ。」



「俺ァ傍観に徹すルが、お狂、テメェがやらなキャいけネェ事は、分かるよナァ…?」そう言った忌諱は鏡を通り越してお狂を触った。死人のように冷たい肌、シャワーを浴びてるはずなのに、それでも温もりが感じられない。唇に触れると、お狂は擽ったいと表情と目線で伝える。



「テメェは学園内を恐怖ト混乱に落とせばイイ。そしたラ後は勝手に落ちテくだけだ。」



その言葉にお狂は哀しそうに笑う。またあの時のようになってしまうのかと、沢山の妖が死んでいった、あの地獄絵図が眼に浮かぶ。それでも





「すべては我がカミサマの命ずるままに」





拒めないのは、お狂にとって忌諱はカミサマだから



唯一自分を救ってくれた、カミサマだから



ーーーーーー



「杏ちゃん、大丈夫?のぼせた…?」


風呂場の外から奈菜子の声が聞こえた。

あまりにも長いシャワーに不安を感じたのだろう。

タオルを巻き、安心させるようにドアを開ける。


「杏ちゃん、大丈夫?」


それでも心配そうな顔をする奈菜子に杏は笑って「大丈夫、」と言う。




まさか、鏡を通じてカミサマに会っていた、なんて、言っても信じてくれないだろう。






ーーーーーー





…もう気付いているかもしれないが





咲良田杏の正体は、悪逆非道の化物、忌諱に仕える少女、お狂である。








次回のカミサマのままに(勝手に略しました)は何故主人公ちゃんが黒妖学園に来たのか、そして黒妖学園の理事長とご対面‼︎けど理事長は主人公ちゃんの事を知っているようで…⁇

をお送りします‼︎


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