蜘蛛の糸 歯車の破片
最近、人外愛が止まらない(白目)
なんでこんなに好きなんだろう(白目)
もう白目するしかないね(白目)
今回でた新キャラはこの物語のキーになるキャラの、筈です‼︎(多分)
バッドエンドが見えてくる……、ハッピーエンドが見えてこない(チーン)
華宮桜視線
学園から遠くない距離にポツリと存在する日本屋敷、そこには黒妖学園の理事長である濡螺…私のお義父さんが最近建て、そして現在住んでいる屋敷だ。勿論、そこには義娘である私も住んでいる。私やお義父さん以外にも使用人や料理人は存在するが、私が一番関わっているのは、そのまとめ役である執事、黒乃だ。
私の黒乃への印象は暗いの一言だった。長めの前髪に低すぎる声、前髪から覗く赤黒い目、何よりも滅多に開かない口が開くときは嫌味ったらしい言葉の数々、黒乃の印象を暗いと思わせるのには十分だった。
そんな黒乃だが、滅多な事では怒らない。自分がドジをして物を壊しても、部屋を汚しても、文句も言わず(嫌味は言うが)片付けてくれる。
だが、そんな黒乃が唯一、怒ったことがある。怒鳴り散らす感じではなく、静かに、静かに怒っている。なんというか、怒らせてはいけない人を怒らせた感じ。
それはーー私がこの屋敷に来てまだ間もない頃、探検と称して離れに行こうとした時だ。
本当は、離れに行ってはいけないと、お義父さんから言われていた。けど、好奇心は止められない止まらない。
離れは薄暗く、夜に行ったら肝試し出来そうだなと思うくらい気味が悪い場所だった。私が歩くたび、ギシギシと廊下が軋む。最近建てた割に、そこだけ時代錯誤なような………、そんな場所で唯一、妙に明るい部屋があった。離れの一番奥の、離れの離れと言っていい場所。
ーーー私の好奇心を擽るのには十分だった。その部屋の襖を開けようとしたその時
その細腕からは考えられないような力を出して腕を掴む、黒乃が私の背後にいた。
「……何してるんですか、お嬢様。」
「え、えと……た、探検?」
「それは随分とまぁ、威勢の良い、いえ、元気な糞ガキのようで」
「く、糞ガキ!?……ご、ごほん。黒乃は何してたの?」
「そっくりそのまま、お嬢様にお返ししますよ。この離れには行ってはいけないと、濡螺様、ではなく糞爺に言われたはずですよ。」
「う、それは……」
「…此処の中、見てないですよね?」
「…見てない、よ。だからこの腕解いて。」
そう言ったら渋々腕を離してくれた。あの時の黒乃は本当に怖くて、ちょっと泣きそうになったけど、それ以上に私の中での疑問が段々膨れ上がっていった。黒乃は何故此処にいたのだろう。どうしてこの離れに、ううん、この部屋に入ってはいけないのだろう。
私の心を読み取ったように、黒乃は口を開いた。
「此処は、囲い部屋です。」
「囲い部屋……?」
「俺は、そう呼んでいます。名前から察せられないとは、なんとも阿呆、いえ、馬鹿さ加減が伺えますね」
「なっ……!」
何度も何度も嫌味ったらしい言葉を受ければ流石の私でも腹が立つ。これが塵も積もれば山となるか、と1人で納得していたら、その囲い部屋を見ているはずなのにーーー遠くを見ているように目を細めた黒乃が、ポツリ、と呟いた。
「此処は、とある女を監禁するための部屋なんですよ。」
「え……?」
「中は、見ない方がいいです。見たら反吐が出ますよ。首輪に手錠に性玩具、奇妙な薬に、後は着物や帯、簪が大量に飾ってあります。まるでーーー」
最後は聞き辛かった。と言うよりも頭が混乱していて聞き取れなかったのだ。
お義父さんが、……雨の日に、お母さんが亡くなって、お葬式の時、身寄りが私の押し付け合いをして、どうすればいいか分からなくて、其処から離れたくて、走って走って走って転けて、それでも走って、苦しくて、足が震えて、目がぼやけて、段々走れなくなって、泣き崩れて、人混みですら私を素通りしたのに、傘を差し出して、何も言ってないのに「屋敷においで。」と言ってくれた優しい人、後から人じゃないって分かっても、大好きだった。けど…
「な、んで……」
優しいお義父さんが、監禁?女の人を?もうこの部屋には女の人がいるの?
「安心してください。まだこの中に女はいません。まだ、ね…」
私の心を読み取ったように黒乃は答える。その答えに安心した反面、まだ、その言葉が酷く怖かった。
「……もし良ければ、この史書を読んでみて下さい。」
「え……?」
「この本に、あの糞爺が執着している女の事が書かれています。…読むも読まないも、お嬢様次第ですが、己の身を案じるなら、真実を知りなさい。」
「し、んじつ……」
「人であろうが、妖だろうが、皮を着けて生きるものです。貴方が、全ての真実を暴きなさい。そして、あの糞爺の、ぬらりひょんの化けの皮を剥ぎなさい。そして、どうかーーー」
ーーーーーー
『お彼岸太夫:年齢不詳だが、外見年齢は少女か女か、意見が分かれている。だが平安の世から存在が発覚されているため、千年以上は歳を取っていると推測される。外見は死人のような白い肌と、それに相反する真っ赤な唇が特徴であり、その美しさは麻薬だと言われている。様々な場所で目撃されているが、その場所では不吉な事、不幸な事が起きるため、その女に会う事は、お彼岸の入口に入ってしまったということ。という意味で「お彼岸太夫」と呼ばれるようになった。尚、お彼岸太夫は四大古妖、東の厄病神と深い関わりがあると推測されており、愛人、下女、妻など、様々な噂が流れていたが、最近になりお彼岸太夫は東の厄病神と契約関係があることが分かり、そのためお彼岸太夫は東の厄病神に従っていると判明。だが現在何処で何をしているかは分からない。未だに謎が多い存在である。』
副会長である鱗先輩と黒乃から貰った本は同じだった。タイトルは「お彼岸太夫」…正直に言えばとても薄い本で、内容も多いとは言えないが、値段が相反して高いという事は、この本はとても人気が高いのだろう、と勝手に解釈する。
けれども、お義父さんとお彼岸太夫との関係は分からなかった。それに、前に書記の静君が言ってた「弱点」の意味も分からない。
それに、どうして皆がこの本を進めるか分からない。この「お彼岸太夫」が全ての糸口なのだろうか?
分からない、分からない、分からない
私は、どうすればいいの?
『人であろうが、妖だろうが、皮を着けて生きるものです。貴方が、全ての真実を暴きなさい。そして、あの糞爺の、ぬらりひょんの化けの皮を剥ぎなさい。そして、どうかーーー』
「貴方が一番罪深き存在だと思った者を、
ーーー殺しなさい。」
…私は、どうすればいいの?
黒乃から渡された聖銃を見ながら、涙を流した。
次回は、黒乃視点でいきます。黒乃の過去話にいきます。後、皆様分かりきっていると思いますが、お彼岸太夫=お狂ちゃんです。分かってますよね、すいません。