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貴女を知る旅(10)



机の上には、レポートの山

あ、持病の頭痛が←








蒼蛇鱗視点





先程から静の視線が痛い。






一体どうしたというのか、そんなにも僕がへし折った樹に熱い視線を注いで……良いように言ったが実際は只々鬱陶しい。






静は偶に視線で何かを訴えてくるが、そもそも目が隠れているので何を伝えたいかはさっぱりだ。






「どうしましたか?」



「……何で、も、な…い。」





と、言いながらやはり視線が痛い。





静が僕に苦手意識を抱いていることは知っていた。

大方、図書室の事件が原因だろう。

あの事件を反省して、妖についての本を徹夜で読んだのは良い思い出だ。

昔の記憶に懐かしさを感じつつ、やはり静の視線は痛かった。






「………。」



「…………。」






燃え盛る炎の中、山が赤く染まる中



樹を肩に担ぐ男と前髪男






先程から山から逃げようとして死んでいく馬鹿な人間たちがちらほらいるが、こんなに目立つ僕たちを凝視する方はいない。






と、すると僕たちの姿は見えていないのか。





静の熱い眼差しを総無視し、考えを張り巡らせる。





そもそも、ここは本当に過去なのだろうか。





他の、それこそ風紀委員の2人も生徒会のメンバーも皆、過去に巻き戻されたと思っているが…そんなこと、ありえるのだろうか。





此の世には犯してはならない罪がある。





命を奪うこと以上に犯してはならない禁忌がある。





ーーー時を操ることは、その禁忌の中で最も重い代物だ





そして、時を操ったモノの末路は極端に2つしかない。





……それは






「………あ。」





むさ苦しい…じゃない、暑苦しい静の視線が外れたと思ったのは束の間、僕は…いや、僕たちは気持ち悪いほどの異質な空間に迷い込んだようだった。





異質な空間……山を下った先は、地獄そのものだった。




いや、地獄の方がまだマシかもしれない。





燃え盛る炎、井戸に群がるように死んだ亡骸

肥溜めに隠れるように死んだモノたち

事切れた百姓の無残な亡骸

まるで食い千切られたような亡骸に、苦々しい虫を咀嚼したような顔をしてしまう。





その亡骸が、食い千切られたようなではなく、食い千切られた亡骸だと気付くのに時間はかからなかった。





何故なら、僕たちの目の前には





嘔気するような化物と、咲良田杏に酷く似た少女がいたからだ。





「ね、えさ…ん。」





静はボソリと、けれども僕に聞こえる程度の声で吐き出した言葉。





まさかあの大きい方が姉さんとかじゃないですよね。なんて冗談は言えなかった。





だが、静が咲良田杏に酷く似た少女……いや、違うか、あれは咲良田杏だ。





あの時の…保健室での無茶苦茶な思考回路がまさか大当たりだったとは思いもよらないだろう。





咲良田杏だと確信を持ったのは、さっきの……静の一言だった。





静がお彼岸太夫を憎んでいた。いや、今でも憎んでいる。お彼岸太夫への強い憎しみが、静の生きる原動力だった。





だが、いくら静が黒妖学園で2番に年上だからと言って妖樹が青々と茂っていたこの時代に生まれている筈がない。





けれど、静の姉がこの燃え盛る炎の中にいるのだろうか。





答えは否だ。





賢い雪女なら、そんな馬鹿なことはしない。





それなら、あの化物と対面している少女はーーー






「キヒヒヒヒ。」






思考回路は突如、化物の腹から出てきた薄気味悪いわらい声で遮断された。






「なァ、モノの命はみナ、等シく不平等ナんだよ。」





「…………」



「幸福なモノは一生幸福ノまま、不幸なモノは一生不幸のマま。」



「…………」



「なあ、選ベ。」




















「俺と共に来るカ、それともココで死ぬカ、フタツにヒトツだ」









次回はレポートの山が終わらなくても書きます←




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