第1話 僕の人生はある日をきっかけに全て変わった
「拓斗! いつまで寝てるの? 早くしてよ!!」
いつもの様に僕は妹の友里亜におこされて、ベットに座り込む。まだ、眠い………………。
「お……おはよう」
僕は、重いまぶたを擦りながら友里亜に声をかける。
中学の制服を着ていることから、あと十分位したら家を出るのだろう。
「おはようじゃないの!
どうして私が声かけないと起きないの?」
「ごめん…………」
「とにかく、朝ごはんは出来てるから早く食べてよ」
そう言って、友里亜はさっさと部屋を出ていった。 僕も身支度を済ませてから部屋を出る。
「全く、拓斗は高校生なんだからしっかりとしてよ」
一階に降りると、台所で友里亜が僕のご飯をよそってくれていた。
僕は友里亜の言うことに苦笑いを浮かべる。…………反論できない。
確かに、高校に入学したと言うのに妹に起こされるのはあまりにも惨め(みじめ)かもしれない。改善しょうとはしないけど……。あ、そんなことよりご飯。
僕はゆっくりと食卓に着席し手を合わせながら
「いただきます」
と口にして、真っ先に白ご飯が入った茶碗を手に取り食べ始める。
「拓斗はいつもそうだよね。ご飯は何がなんでも食べる」
「まぁ、育ち盛りだから」
背は低くないけど、出来るだけ背は伸ばしておきたい。ならび順は後ろから七番目だし。
「だったら、もう少し自分のことをしょうよ。」
「(もぐもぐ)」
「掃除に洗濯、食器洗い……」
「(ヒョイ、パクっ、もぐもぐ)」
「何から何まで、私がしてるじゃない」
「(もぐもぐ、ゴックン)うん、美味しい」
「ちゃんと聞いてるの?」
「聞いてる聞いてる!」
ふう、完全にご飯に夢中になってた。危ない危ない。
「これから、しっかりするから」
「はぁ、それ聞くの何回目だろう」
なんか友里亜がため息をついてるけど、気にしなくていいかな?いつものことだし。
「ごちそうさま」
「あ、食器はおいてていいよ」
「いや、いいよ。自分でやる」
「拓斗、熱ないよね」
「僕が食器を洗うことがそんなに意外なことでしょうか?」
「うん」
「うんって…………まぁ、否定できないよね。今日だけだと思うよ……こんなことをするのは」
「え!? どういう────
「ほら、早く行かないと遅刻するよ」
僕は時計を指差した。すでに友里亜が学校を出ていないといけない時間だ。
「もう、こんな時間!?大変!!!!」
そういいながら、慌てて鞄を持って家を飛びたしていった。
その様子を見送った僕はポツリと呟いた。
「今までありがとう。友里亜、必ず帰ってくるね」と
これは 僕にとって避けられない運命なのだ。
そう、僕と言う超能力者には……………………。
「さて、僕も出掛けるかな」
僕は荷物を持たずに家を出た。
制服を着ているが、別に学校に行くわけではない。待ち合わせ場所に向かうためだ。
誰と?って思っただろう。説明をしたいが今は勘弁。
僕は走り続けた、とにかく目的地までひたすら。
そして、家から約20分位のところにある小さい公園に彼ら5人はいた。
「遅いぞ、拓斗」「悪い」
「もう、今日ぐらい早く来なさいよね」
「まぁ、いいじゃない皆揃ったんだし」
「そうですよ、先輩の寝坊は今に始まったことではないですから」
「あはは、そうだね」
皆、僕を待ってくれていた。
とても嬉しいがそんな感情はここまで。
「行こう。ナムスへ」
僕の一言で全員が顔を引き締め頷き返す。
そう、彼らも僕らと同じ運命を背負っているのだ。
ことの始まりは、ちょうど半年前のことだった。
新高校二年生になった僕は、クラスメイト仲良くすることなくただ一人席に座りボーッとしていた昼休み。
そんなとき…………。
「よ、神永!」
僕の机の前に1人の男子生徒が近づいてきた。長身で筋肉質、おまけに女子にもてそうなイケメン。
最初は驚いた。スラッとした体型のことではなく、友達がいない僕に話しかけてきたことに。
「え!? ぼ、僕のこと」
「当たり前だろ、神永はお前しか居ないからな」
それもそうだ。こんな名字はクラス内で僕だけだし。
「えっと……何?」
人と話すことに慣れてないから、若干裏声になってしまった。
「落ち着けよ。 なんもしねぇから」
「う…………うん」
「俺は中西勝利。お前の友達になりたい」
「え!?」
いま、彼はなんと言ったのだろう?
トモダチニナリタイ
確かにそういった。
「な……何で?」
「何でって言われてもな」
中西君はものすごく困っている。でも、僕にとっては重要なことだ。こんなにイケメンな人が何で地味な僕と友達になりたいんだろう。他にもいるのに…………。
中西君は頭をかきながら答えた。
「いや、なんだかお前の目が気に入った」
「目?」
「とても、純粋な目をしてる」
「………………」
正直ビックリした。僕自信あまり目を気にしないし、それ以上にこの人がよく人のことを見ていることに。
「そんなので、理由にはならねぇかも知んないけど」
「ううん、とても嬉しい。でも、無理なんだ」
「な…………何でだよ」
「ごめんなさい。僕は誰かを友達になると駄目なんだ」
「おいおい、一体どういう────
「本当にごめんなさい」
中西君の言葉を聞く前に僕は教室をあとにした。
この時とても苦しかった。辛かった、心が折れそうだった。
僕だって友達が欲しい。でも、それは願っても叶わない夢だ。
何故なら──────。
「あ、危ない!!」
「え!?」
やみくもに走っていたからいつの間にか、校舎裏に来ていた。
そこでは、2人の生徒が野球ボールを使ってキャッチボールをしており取り損ねたボールが僕めがけて飛んできている。
2人は「危ない!避けて」と叫んでいるがもう遅い。
確実に顔面直撃コースです。
「絶対世界」
とっさに僕はこのように叫び、右手を前に出していた。
詠唱すると同時に右手の前に自分にしか見えない四角いブロック上のゲートが現れる。
野球ボールがそのなかに入ったとたんに動きが止まった。
それを見た2人は唖然としていた。
「あ…………ご、ごめんなさい!」
僕はゲートを消して、ボールをその場に落としその場を走り去った。
これが僕が友達を拒む理由。
僕は超能力者だから。いや、超能力を使えてしまうからが正しいかな。
本当のことを言うと間違いなくバカにされる。
だから僕は友達を作らない。
「なんなんだろう。この力」
屋上についた僕は、校庭を挑みながら呟いた。
「お前の本当の力だ」
独り言のはずなのに後ろから声が────
「!?」
僕は慌てて後ろを振り向く。
そこにはさっき、キャッチボールをしていた男子がいた。
「あ……あの、さっきはその──────
「灼熱煉獄」
謝る僕の言葉に重なるように男子が叫ぶ。そして、だんだん彼の体に炎がまとう。
「え!?」
僕の思考回路が回る前に彼は右手に火炎を集中させて、野球ボール程の大きさになるとこっちにめがけて放った。
「うわぁぁぁ!?」
慌てて避ける。流れ弾はフェンスに直撃し少し赤くなっている。というか溶けてるよ…………。
「よく避けたな。しかし次はそうはいかない」
「ちょっと待って。それは危ないよ──────
「問答無用」
「人の話は最後まで聞こうよぉっ!?」
話してる最中にも、次々に火炎弾が発射されていく。
──僕、なんかしちゃったかな?
避けながら考えていたせいか、足が絡み転んでしまった。
「し……しまった」
顔を上げると火炎が複数で僕に襲いかかる。
仕方ない、あまり使いたくないけど────
「絶対世界!!」
さっきより大きめの四角ゲートを展開して、火炎弾を消滅させる。
「やはり、超能力者か」
「???」
彼が何かボソッと口を開いたけどよく聞こえなかった……。
首を傾げていると、あちらから近づいてきた。まだ何かするのじゃないかとすぐに身構える。
「安心しろ。もうなにもしない」
「…………」
「単刀直入に聞く。君は超能力を使うのが嫌なのか」
「!?」
「その反応は当たりだな」
「…………何でそう思う」
「まぁ、今ので考えられる。一発目は仕方ないとしても残りはお前の能力でガード出来るしな」
「………………」
確かにその通りだ。僕は能力を使うことを拒んでいることが多い。
絶対世界は僕が詠唱すれば四角いブロックを出現させることができる。また、そのゲート内では全ての物は僕の思いのままになる。
さっきのボールもゲートに入った瞬間、僕が「止」と念じたから止まったということだ。
こんな力を人の前でやると、ゲート内に入った人を怪我させてしまうかもしれない。だから、極力人前で力を使わないようにしている。
「まぁ、理由はともあれお前は選ばれたものだ」
「はい?」
「お前はナムスに選ばれたのだ」
「な…………ナムス?」
「説明は後だ。とりあえずこい!」
「え!? でもこれから授業が──────
「瞬間移動!」
また、僕の話を聞かずに右手をかざして違う呪文を詠唱した。
そのとたん、僕たちの足元にワープゲートみたいなものが現れた。
………………というかぽっかり穴。
「人の話は最後まで────うわぁぁぁぁぁぁぁ」
僕が台詞を言い切る前に穴の中へと落ちてしまい、悲鳴をあげてしまった。
☆
「ん? ここは?」
僕は、ゆっくりと上体を起こした。どうやら個室の部屋でベットに寝かされたらしい。
というか、僕はどうしたんだっけ。変な人に会って穴に落ちたとこまで覚えてるけど……。一体────
「あ、目が覚めたんだね」
──どうしたんだっけ? って………………
気がつくと、僕の視界に女の子の顔があった。キスができそうな距離に…………
「!!?」
「何で、急に後ずさりするのよ?」
「い…………いや、その」
目が覚めたら女子の顔があるのだから、ビックリするよ。といいかけ、慌てて飲み込む。彼女の目の下に隈が出ていたからだ。僕に付き添ってくれていたのだろう。
「おい、山中。飯の準備が…………」
「あ、あなたは!」
部屋の扉が開いたと思えば、僕はその人物の顔を見て声を上げる。
「やっと、目が覚めたか。やれやれ、丸一日寝てたから話が進まなかったんだからな」
服装が変わっていたが、間違いなく僕に話しかけてきて、火の玉を投げてきた男の人だ。
なんか分からないけど、ご立腹なんですけど……
「仕方ないわよ。瞬間移動をしたのよ、白石はともかく初めての人には人たまりもないのよ」
「だが、その影響でお前は」
「いいの。私が見守っておきたいと言ったんだもん」
山中さんという女の子は僕を庇うように反論してくれた。
とても、申し訳ない。僕がもう少し体が強ければ気絶することも彼女に隈を作らせることも────。
「あなたは責任を感じなくていいの! 私の意思なんだから!!」
「あ……うん。ありがとう」
気にするなって言ってるから気にしないことにしょう。
すると、白石といった男の人は
「起きたんだったら早く出てこい! こっちはナムスの準備で忙しんだ」
と言い捨てて部屋を出ていった。…………物凄く不機嫌でしたよ。
「ごめんなさい。白石はいつもああなの」
「い、いや気にしてないよ」
ホントは少し怖いけど。
「全くナムスナムスって五月蝿いんだから」
「さっきから聞くけどナムスってなんなの?」
「白石から聞いてないのね」
僕は縦に首を振る。
山中さんは「全く後でお仕置きをしないと」と言っていた。この人も怖いかも…………。
「なら、軽くだけど説明しとくね。ナムスは基本的に現代に似た世界なの」
つまり、見た目はこの世界と変わらない別の場所ってことだ。
「ナムスと私たちの世界の大きな違いは一つだけ」
「…………その一つって?」
「支配者の違いよ」
支配者? ってことは王様がいるとかなのか? それならまだ現実味があるけど──────
「悪魔が人間界を支配してるの」
もう、現実じゃない! どうして、いきなり悪魔なの? どう考えてもおかしい! とかそういうツッコミは置いといて……。
「そんなところに僕は選ばれたって言うのは?」
「ナムスでは一部の人なんだけど悪魔に対抗することを決めたの」
「それと僕の関係なんて────
「まぁ、最後まで聞いて。悪魔は人間と違って魔法を使うの。だから、人々もそのような能力を使う人を探していたの。それが私たち超能力者ってこと」
まぁ、白石から聞いたんだけどねと照れながら付け加えたがそのようなことは今はどうでもよかった。
少なくとも、説明だけはしておかないといけない内容ではないだろうか。自分達の命にも関わるし、それに僕はたまたまあの人の前で超能力を使ってしまったから撰ばれたことから決め方もおおざっぱだ。
そのようなことを考えているとこちらの気持ちを察したのか山中さんはこのようなことを切り出した。
「私も最初は怖いかもしれないと思ってた」
「今は違うの?」
「うん。今は楽しみなの」「たのしみ?」
「そう私と白石の他に3人女の子がいるの。友達がいなかった私には初めての仲間ができたの」
「……………………」
少し間が空く。この人も僕と同じ道を歩んでいたんだ。山中さんは最後に自信をもってこう口にした。
「そんな人たちと別の世界を救うなんていいかなって、だから楽しみなの」
このときの山中さんの笑顔は大人じみていた。
つらいことがあったにも関わらずそれを乗り越えて全身していく強さを感じ取れた気がする。
「────も」
「ん? 何?」
「僕も山中さんみたいになれるかな」
山中さんと違って僕はまだ立ち止まっている。出来るなら変わりたいと思う。
「…………うん。きっとなれるよ」
「ありがとう山中さん」
「…………それ」
「え!?」
「私の名前……山中心って言うの。だから…………」
「?????」
「心って呼んでほしい」
なるほど、みんなからもそう呼ばれてるのか。なら僕もそうした方がいいかな。
「分かった。僕は神永拓斗です。呼び方は何でもいいよ。よろしくね。心さん」
そう口にして手を差し出す。
「うん…………こちらこそ……よろしくね……拓斗くん」
心さんも僕の手を握り返してくれた。その時顔が紅かったのは気のせいだろう。
「じ…………じゃあ、皆のところに行こうよ」
心さんは手を離して、部屋の扉を開けた。
「そうだね。行こう」
僕は心さんと一緒に白石君がいるところに向かった。
このときに僕は頑張ろうと意気込んでいた。
☆
それからいくつかの試練(?)を受けて今日の7月7日僕たちはナムスへ向けて出発することになった。「ナムスではどんなことがあるか分からない。問題ないよな」
白石くんが出発する前にこのようなことを切り出した。
「突然なによ。あんたらしくない」
「そうだよ。ボクたちは問題ないよ」
「そうですよ。酷いです」
白石くんにこのように口にしたのは、ちょっとけんかっぱやい野崎美穂さんとボーイッシュな水木眞子さん、そして僕達の後輩でか弱い宮本里見ちゃんだ。
3人の口々な意見に白石くんは慌ててフォローを加える。
「悪いな、ただ俺は心配になってるだけだ」
無理やり決めておいてそれはないと思う。
ちなみに僕は白石くんを少しライバル視している。勝手に呼び出しといて、訓練はさせられるし、「やる気あるのか」って言われるし。
最初から無いよとツッコミたかったけど、毎回心さんに勇気をもらっていたから頑張ってたけど。
「んじゃあ、出発するか」
白石くんはそう言いながら魔法陣を出現させた。
それを見た野崎さんたちは次々と魔法陣に飛び乗り姿を消していく。簡単に言えばテレポートだ。
「行こう。心さん」
「う……うん」
僕は心さんの手を握って魔法陣に飛び乗った。
でも、その瞬間僕と心さんは気を失ってしまったのだ。




