荒野の道は波乱が一杯!!〜4〜
お待たせしました
「実は、お前が俺を助けたときに言葉を覚えたんだ」
「あのときに?」
「あぁ。心さんはもう知っているはずだけど…………」
言われてみれば、僕が荷物の件で頭をかかえていたときに心さん、誰かと話してたっけ?
あの時は独り言だと思っていたけど…………。
「まぁ、お前のお陰で俺はここにいるんだけどね…………ほら」
クウガがそう述べながらペットボトルを放り投げた。
僕は危うく落としかけたがギリギリキャッチする。
「お前との旅がいまから楽しみだな」
「ふん。それより、その水はどうするんだ? 明らかにお風呂にするには足りないだろ?」
それはそうだ。いくら、人が入る大きさの穴を開けてもペットボトルの水を使っても満タンになるはずがない。
「まぁ、見てて」
僕はペットボトルのキャップが穴に向くように置くと呪文を唱えた。
「絶対世界!!」『巨大化』
その瞬間、ペットボトルはみるみる大きくなりお風呂に使うのに十分な量となった。
これにはクウガも目を丸くしていた。
「なるほどな。その手があったな」
「まぁ、飲み水にしょうとしてたやつだけどねっと」
キャップを開けて、穴のなかに水を流し始める。
「あとは、これに僕の能力の炎で暖めればいいかな?」
「抜かりないな」
「これ以上怒られたくないからね」
「だよな」
僕らはクスクスと笑った。
☆
「じゃあ、おやすみなさい」
「「あぁ、おやすみ(さない)」」
夕食を食べ終わり、テントに心さんが入る。(ちなみにお風呂は大絶賛だった)
辺りは暗くなり、焚き火の光が美しく見える。
しかし、僕とクウガはそれどころではなかった。
テントの方から規則正しい呼吸が聞こえてきたとき僕はゆっくりと立ち上がり「絶対世界」『遮光&消音&守護』
呪文を唱える。
僕の行動にクウガは
「(やっぱり、気付いていたのか)」
ひそひそと耳打ちをする。
「(ということはクウガもか)」
「(あぁ、明らかに囲まれている)」
「(モンスターか、恐らくは山賊かな?)」
「(分からねぇ。ただ、どちらにせよ…………)」
クウガは途中でセリフを切った。
考えは互いに一緒だから。
「「叩き潰せばいいからね(話だからな)!!!」」
その瞬間、でかい爆発音が近くで起こった。
相当な音だが僕とクウガは動じずに、岩場を出て相手を探す。
しかし――――――。
「流石に暗くて見えない…………」
目が暗闇に慣れておらず、敵は愚か周囲の状況(景色)すら曖昧に
しか見えない。
「ヤバい! こっちだ!」
「え!?」
クウガに手を引っ張られたと思うと、僕がさっきまで立っていたところに砲弾が着弾し爆発していた。
「ありがとう。でもどうして分かった?」
「俺の場合は夜行性だから目がいいんだ…………」
ん? 夜行性? なるほど。その手があった。
「クウガ!」
「うわっ。突然大声を出すなよ」
クウガは驚いている様子だが構っていられない。
「今から、砲弾とか来たらどっちから来たか教えてくれ」
「は? なんだよいきなり」
「説明はあとだ!」
「……分かった。って右から来るぞ!」
右…………。考えながら避けることも忘れない。
「次は左だ!」
左…………。
「今度は右前、そのあとに左前!」
右前と左前…………。
「また、右だ!」
右………………、よし。
「灼熱煉獄!!」
「な、なんで急に?」
クウガが何かを言っていたけど、気にしていられない。
「はぁぁぁぁぁあ!」
僕はクウガが口にした方向に火球を発射した。
すると………………。
ドーン。ボカーン。
所々から爆発音が聞こえてきた。
その中に微かだが悲鳴っぽいものも聞こえてくる。
どうやら、命中かな?
「なるほどな。方向を確認して破壊か。やるな」
クウガに絶賛された。
まぁ、それよりも…………
「クウガ!」
「おう! なんだ!」
「お前は心さんのところに戻れ!」
「了解…………え?」
「恐らく、今ので遠距離式の武器を壊した! だとすると単独行動をするに違いない!」
半分は僕の方を狙い、残りは心さんの方だろう……。
流石に自分のところで精一杯だ。絶対世界で守られているけど何が起こるか分からない。
だから、クウガに行かせて、守ってほしいというのが主な理由。
「なるほど、分かった」
クウガはすぐさま、心さんのところに向かう。
だいぶ、目が暗闇に慣れて情景が浮かび上がってきた。
人影もちらほらと見える。
「面白いことをしますね。こうまでされたらこちらも本気を出さないわけにはいかないよね。覚悟してください!!」
僕は無数の人影に向かってそう吐き捨てて、駆け出した。
次回は月曜日に出す予定です。
拓斗くんの活躍を見逃すな!!