モノクロの空
夏の夜、モノクロの空
くっきりと黒と白に色づいた空は
街並みの寂れた雰囲気を助長している
まるで黒い空は夏の重い空気を
白い雲は近すぎる程低い空の圧迫感を現していた。
それはまるで時でも停めてしまったような静けさを強く、強く、感じさせる。
私はいつの間にか、あのモノクロの空を見上げていた。
何時からそうしていたのだろう?
白と黒に二分されたこの場所、
帰り道の途中であるはずのこの場所を私は確かに知っている、
見知っている筈のこの場所を私は全く知らない場所だと感じているのだ。
おかしい事だが私の感覚はこの場所を知らない場所であり、何か危機感を感じさせるような疎外感をかんじさえする、まるでこの世界が私自身を拒絶しているようだ。
「……早く、帰らなきゃ………」
そう、自分に言い聞かせて歩き出そうとするが本当にこのまま進み続けていいのだろうか?
この道を行けばもう、後戻りができなくなるのではないか?
そう、思い、後ろを振り返る。
恐る、恐る、後ろに目をやる私の目に留まった、異様な、一瞬置物かと思ったほどに、あり得ない光景であった。
そこには、道の真ん中にこの白と黒の空よりも暗く、黒い、人骨が立っていたのだ。その骨は夜だとゆうのに浮彫のようにくっきりと黒を纏い
人骨を見た事のない私はこんなにも人の骨というものは美しいものなのだろうかと、言いしれない恐怖とともに息を呑んだ。
目を奪うような艶やかな光沢とも呼べる滑らかさと見事なまでの左右対称のバランスのとれた骨格が見て取れるが、この骨は果たして男性のものだろうか?女性のものだろうか?
とても骨格だけでは分からないが、あれは……
(………女の人だ、きっと…あれは………)
核心にも似た確信でそう、私は直感する。
その場から動けずにいた私とは裏腹にその、黒い人骨はゆっくりと動き出す。
ゼンマイ仕掛けの機械のように一歩、『カランッ』
一歩、『カランッ』
また、一歩と近づいてくる。『カランッ』乾いた音、まるで漆塗りの下駄で歩いているのではないかと思うような音を響かせながら、関節が擦れる『キィッ――』と、高い音が耳障りに響く
気がつけば人骨は後3歩という所まで来ていた。私は人骨から目を離すことができず、ただただ黒い人骨が放つ恐怖に全身を震わせ、背筋をつたう悪寒に気が変になりそうだった。
大声をあげて、この場から逃げ出してしまいたい、そんな衝動にかられる、でもダメだ。
それはダメだと、私の本能が否定する。それをしてしまったら本当に死んで終うと私の本能が警報を鳴らすのだ、それが当たっているのかどうかは分からないが、私は自分の本能に従うことにする。
人骨はもう、すぐ、そこにいる、手を伸ばせば触れられるそんな距離…
私は息をするのも忘れ、人骨を見ていた。
そして、一歩、人骨は私の真横に立っている、身動きも取れず横目で人骨を見つめる。
人骨は私に気づいていないのかただ前を見ているようだった。
当たり前なのだが頭蓋骨の目玉が収まっていたであろう暗闇は何の意思も感じられない、計り知れない闇だけを備えていた。
そして、一歩………一歩、………また一歩…………
すれ違った人骨の足音が聞こえなくなるまで、私は息を潜め立ち続けていた。
「……――っ、―っ、っ、……ひゅぅ、ッ、ッ、ハ―ッ、ッ」
全身が震え上がり、上手く呼吸ができず空いたままの口は歯がぶつかり合い小さな音をたてその隙間から不規則な呼吸音がこぼれ
私は立っていることがままならず、自分の肩を抱き小刻みに音をたてる口に手お当て自分自身を落ち着かせる。
「……クゥゥ…ゥゥ…フッ……」
訳の分からない恐怖に私は喉を震わせ泣き出しそうぬる自分を押し留める。
「…スゥ……ハァァ…」
なんとか落ち着きを取り戻した私は、自分の家に向かう。
早くこの場所から離れたくて、一心不乱に走り出した。
家の前までたどり着いた。息を荒げ、汗だくになりながら家の扉を勢いよく開ける。
「お帰り、どうしたの?そんなに慌てて」
いつも通りの母の声に私は心底ホットした。
(…帰って、来れた、わたし……)
これは、私が、体験した夏の日の不可思議な出来事だ。
狐に抓まれたみたいな、あの帰り道を私は今でも夏になると思い出す。
正体の分からない恐怖……暗い闇を




