09 追撃
「ちっ・・・。面倒な。撤退だ!」
キナリは軍に向かって叫んだ。トルキア軍は、わっと退がった。
「追え!」
テジンとジラルガンが同時に命令した。
「なぜ我等に構う!?せっかくトルキア本陣ががら空きになっているのに。ダルキアはダルキアで勝手にすればよかろう!」
テジンは少し考えた。
「それもそうだな。」
そう言ってスナアシの腹を蹴った。
「ならばダルキアは好きにさせてもらう!逃がすな!」
ジラルガンはもうわけが分からない、といった風だが、テジンに負けないよう、兵士達を激励した。
おかしい。ダルキアとハルキアは連合してはいたいはず。もしかして、この俺が情報操作されたというのか?・・・まさか。まあいい。もう少し行けば予備の戦線を張っている。せいぜい奴らにはついて来てもらわないと。
クナは白い薄手のハンカチを乱暴に掴んだ。素焼きの皿へ入れ、赤、緑、黄の粉を振りかけた。そして呪文を唱えながら蝋燭から火を移した。 火はあっという間にハンカチを包みこみ、灰を作った。クナは透き通った水の入った小瓶を手に取ると、皿の中の灰に二、三滴垂らした。灰はむくむくと膨らんだかと思うと、中から一羽のオウムが現れた。赤、緑、黄の鮮やかな 羽ーしている。オウムはブルッと体を揺らし、体についている灰をふるい落とした。
「テジン様に伝言をお願いするわ。」
クナはオウムの目を見てゆっくりと喋った。
「ハルキア国王ジランの命令により連合することはかないませんが、どうか今だけでも我が軍と力を合わせて下さい。私はハルキア本陣から皆さんのために結界を張りましょう。」
オウムはグエグエと鳴いていたが、クナのテントから大空に飛び立った。
「ジラルガン大将、あれは姫様の使いでは!?」
「何・・・。」
オウムはジラルガンの方ではなく、迷いなくテジンのもとへ降下した。そして、先程クナが言ったことをそっくりそのままの声で伝えてみせた。伝え終えるとオウムの体からは炎が上がり、オウムは消えた。
テジンは驚きを隠せなかったが、ジラルガンは何とも言えない表情だ。しかし、姫の言うことだ。
「仕方あるまい、ダルキアの王子よ。我が方から頼み申す。」
テジンはふっと笑った。
「クナ様のご希望とあらば仕方あるまい。味方は多くても困ることはないだろう。」




