08 合流
少し離れた所に、テジン率いるダルキア軍がいた。目の前のトルキアに気をとられすぎて気づけなかった。ジラルガンは自分に対する腹立たしさで頬が紅潮していた。
「何の用だ!」
怒鳴るように叫ぶと、テジンは臆する様子もなくスナアシに乗ったまま近づいてきた。
「たまたまだ、ジラルガン殿。トルキア本陣に行こうとしたら、こんな所で戦っていたからつい、手を出してしまった。」
「余計なことを。ハルキアはダルキアとは組まない!今こそ勝手に動けばトルキアは崩しやすい。好都合だろう。」
テジンは少し考えるようなそぶりを見せた。
「たしかに。では、行くぞ。」
ジラルガンが呆気にとられている中、テジンは部下に合図を出した。
「舐めた真似をしてくれる・・・。私は貴様らとは違うのだ。」
キナリが怒って杖を振った。ぼん、と爆発音がして、シフの出したものよりも大きな火の竜が出てきた。
「王子、私めらにお任せを。」
ガリシクとカシューシクの将軍が杖を構えた。
「ウル・ド・カリ・セイル!」
「ウル・ド・キア・シルフィ!」
勢いよく飛び出したのは、水の竜だった。火の竜に向かって突き進む。
水が瞬時に蒸発する音がして、辺りが霧に包まれたようになった。着ている服や肌が一気に湿る。砂漠の風が吹いて、静けさの中、霧が晴れた。
驚きと焦りの混じった表情でキナリが立ち尽くしていた。
「ちっ、面倒な・・・。撤退だ!」
数の差を知り、トルキア軍は一斉に退却を始めた。
「追え!」
テジンとジラルガンは同時に命令を出した。ジラルガンは怒りを隠せなかった。
「ダルキアには関係の無いこと!なぜ我等に構う?」
テジンはあくまで丁寧に答えた。
「先程貴方はダルキアは勝手にしろとおっしゃった。だから、こっちのしたいようにさせてもらう。その代わり、貴方がどう動こうと、それは私の知ったことではない。」
ジラルガンはまだ何か言いたげだったが、諦めて駆けて行った。
「テジン様・・・。」
テントの奥で鏡を見つめ、クナが呟いた。声が聞こえないのがもどかしい。しかし、きっとあの様子ではジラルガンは共に戦おうとは思っていないようだ。テジンとジラルガンは別行動をとり始めた。
だが、クナには分かっていた。あの進路でまさかハルキアを攻めに来たのではあるまいし、何より今、テジンはトルキア本陣を目指している。だが、こちらを回るなど遠回りしすぎだ。
助けに来てくれた。同盟を組んでもいない相手を。助けても、ハルキアはきっとダルキアの利益になることなどほんの僅かしか出来ない。それでも、来てくれた。
ニコッと笑うと、クナは結界をダルキア軍までに広げた。全軍気付いたのだろう。テジンが兵士に向かって何か叫んでいる。ジラルガンは嫌そうだったが、クナの仕業と分かっているので、ぶすっとしたままスナアシを加速させた。
楽しいこと、幸せなことを考えるようにしようと思い、目を閉じていろいろと頭を巡らした。何かを守りたい、その本当の気持ちこそが防御魔法―特に結界に役に立つ。真っ先に定まった先はテジンだった。
今兵士達は戦場にいるのに、なんて不謹慎な。クナは自分を恥じたが抑え切れなかった。実際テジンは今戦場にいる。ただ守りたい、と強く願い、強力な結界をはる準備をした。




