07 火の竜
「大将、あれは・・・。」
部下が囁く。
「ああ、早速お出ましのようだな。」
ド=ジラルガンは軍をとめた。敵の姿が見える。コクド王国の将軍がド=ジラルガンの傍に来た。中年だが引き締まった体をしている。黒ずんだ銀の鎧の隙間から、明るい茶髪の巻き毛が覗いた。
「ジラルガン様、我等にお任せを。」
そう言うと、先端に赤い石の光る杖を構えた。
「ではシフ殿、お任せしますぞ。」
「ウル・ド・シン・フィファ!」
ぼん、と鈍い音がして、真っ赤な火の竜が現れた。ハルキアとヒソリの兵士達がざわめく。シフは少し自慢げに杖を振って竜を上空で旋回させて、一気に敵方へ攻めさせた。他のコクド王国の魔術師も彼に倣って火の玉や火の獣を放った。
「ふん、ハルキアめ。生意気にもコクドの力を借りたか。」
不敵に呟いたのは、トルキアの大将、キナリという男だ。白い肩にかかる程の髪に、緑の瞳。見かけは若々しいが、本当の年齢は分からない。砂漠にも関わらず黒い長マントを羽織っている。
「所詮コクドだ。」
そう言うと、かなり古い杖をマントから取り出した。うねりながら火の竜が迫って来る。少し目を細め、軌道を見極める。竜が大きな口を開けた瞬間、キナリは体の前で大きな円を描いた。
「ウル・ド・シン・フィファ!」
大きな火が現れ、火の竜を飲み込んだ。シフ達は何が起こったか理解出来ず、動けなかった。
「コクドごときの弱い魔法、私の魔法の餌食にも足らん。」
そして、大きな火の塊をまっすぐハルキア軍に返した。ハルキア軍は驚いて馬脚が乱れた。
「ジラルガン大将!」
「焦るな!水を・・・。」
ジラルガンの隣でヒソリ王国の一人が水の魔法を使った。
焼け石に水のはずだった。しかしキナリはわざと勢いを緩めた。
「三騎、来い!」
「コルト殿、待たれよ!」
だが銀髪をたなびかせ、ヒソリ王国の将軍は四騎で突っ込んで行った。
あの程度の水でキナリの魔法が揺らぐわけがない。分かってはいたが、ジラルガンは止められなかった。足の速いスナアシに乗った四騎はトルキア軍との距離を縮めていった。
「馬鹿めが・・・。」
キナリはニヤリと笑うと、再び杖を構えた。突っ込んでくるコルトに杖先を向け、一振りした。
さっきよりも大きな赤い炎が襲いかかった。逃げ場がない。コルトとハルキア軍は思わず目を閉じた。すぐそこに熱を感じる。
「ウル・ド・カリ・セイル!」
呪文と共にキナリの火に水の球がぶつかった。
キナリがはっとして目を凝らす。ハルキア軍の更に後方から放たれた。ハルキア軍も振り向いた。ジラルガンは眉間にシワを寄せた。




