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砂漠の月  作者: 沖津 奏
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06 祈る人

「私はここで祈ることしか出来ませんが・・・どうか、ご武運を。」

 クナ姫はいつもと同じ鈍い桃色のスカートに、エメラルドの飾りのついた白い長いベールを被っている。ただ、いつでもスナアシで動けるよう、スカートの下には足首で縛られてふっくらとしているズボンを履いていた。

 視線の先にはド=ジラルガン大将やセ=ジラルガン中将率いる魔術師や兵士がいた。ジラルガン兄弟はまだ若いが、強靭な身体と素晴らしい決断力を持ち、将軍としては頼もしい。他にもハルキアにはヒソリ王国、火の国コクドが参戦した。

「姫様。我等、最後の一兵まで国のために戦う所存。どうか我等をお導き下さい。」

 ド=ジラルガンが低い声できびきびと言った。クナはそれを聞いて微笑む。

「頼もしいことです。でも、どんな窮地に立たされても自害はしないで下さい。これは、私との約束です。敗走することを恥としないで。必ず皆、ここへ帰って来て。共に国に帰りましょう。」


 本当はダルキアと組みたかった。テジンといれば、どんなにか心強いだろう。女一人で一国の軍を支える自信などない。防御魔法を使って先にダルキアを攻めさせるという案は父王に取下げさせた。が、父王の頑とした命令により、ダルキアと組むことは許されない。テジンに、ハルキアは嫌な頑固者だと思われないだろうか。


 クナは軍を二つに分け、東と南からトルキアを挟撃しようとした。東はド=ジラルガン大将に、南はセ=ジラルガン中将が選ばれた。

「・・・気をつけて!」

 クナが本陣の前で、小さくなってゆく兵士達の背中に叫んだ。急いでテントに戻り、魔法の支度をした。蝋燭に火をともし、明るくする。テントの奥には、大きな円い鏡がある。クナがその前に座ると、そのクナよりも鏡の背が高い。鏡を濡らし短く呪文を唱えると、鏡には砂漠を進軍するハルキア軍が映った。

 素焼きの白い皿に何やらいろいろと枝や粉を入れ、蝋燭から火を移した。オレンジの淡い光は、皿の上で青に変わった。鏡の前に持って来て、その周りにはいろいろな枯れ枝や色とりどりの粉を置いた。これらを使って遠くにいるハルキア軍に結界をはる。かなり高度で体力を使う魔法だ。トルキアと接戦になり、よほど危険な状況でなければ力を全開にすることは出来ない。そうならないようには祈ることしか出来ないが。

 クナは呪文をぶつぶつと唱え、緑の木の実を加えた。火がぱっと揺らぎ、一瞬緑色になった。簡易な結界だが、ジゴクサナギ程度なら、そんな大物でなければ防げる。何日も持続して結界をはるには、このレベルが限界だった。


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